おねショタ108式の69『一緒になろうよ』
人類が宇宙に拡散し、地球種であるという自意識の消失したはるか未来、あるいは……はるか過去の時代。
大陸の南北と、東方諸島の三つの国に分断された惑星でのはなし。
大陸南側の国家、辺境に住む主人公の少年は、町の外れにある遺跡に好奇心から忍び込む。
荒野にぽつんと佇む瓦礫直前のそれは、ひと通り探検したところで何も発見はなかった。
それもそのはずで、少年の町の主産業はこの遺跡の様な場所に眠るジャンクの発掘業。
親か祖父母の時代に発掘を終えたその遺跡は、既に町の管理を離れた廃墟なのだ。
なにか手遊びのタネでも持ち帰ろうと執拗に探していた少年の足下が突然崩れる。
一瞬の浮遊の後、強かに全身を打った。
見上げると、上には四角の落ちてきた穴。
とても這い上がれそうにはない。
周りを見回し、微かに風の流れのある方へと少年は歩いていった。
地下空間は広大だった。
そんなに落下したはずはないが、先ほどまで探索していた上層と比べると何倍もの広さがあり、そして、少しも傷んだ様子がない。
闇に慣れた僅かな視界で探索していると、ひとつの部屋の扉が開いていることに気付く。
部屋の中にあったコンソールをデタラメ操作する。
すると突如として部屋が動き出し、シリンダーが現れ、その中には一人の女性が浮かんでいた。
初めて見る女性の裸体にドキドキしながら、またコンソールを操作して少年はシリンダーから女性を出すことに成功する。
目を覚ました彼女は寝起きでボケボケだったが、なんとか言葉は通じて話しは出来た。
しかしその頃、地上の遺跡には大陸北側の国から派遣された軍隊が近づいていた。
戦闘機械獣《アームドビースト》を引き連れて。
おねえさんと助け合ってようやく地上に出たとき、遺跡は先の軍隊に包囲されていた。
何も知らず出ていくと、何の前触れ無く少年は銃撃される。
すんでのところで彼女が少年の身体を引っ張り助ける。
彼らの目的は彼女の獲得であり、目撃者である少年は殺される運命らしい。
地下へと戻った少年らに向かって、軍隊は砲撃を始める。
おねえさんを手に入れなければならないのに、何故。
少年は戸惑っていたが、おねえさんは意を決した様子で少年に言う。
「キミの命を貸して。一緒に、なろう?」
砲撃で瓦礫と化した遺跡が真球上に消滅し、そこから極めて優美なシルエットの機械獣が姿を現す。
軍隊の機械獣とはあまりに違う見た目の”それ”は、謂わばお姉さんの第二の肉体であり、少年はそれに『搭乗』ではなく『融合』していた。
超古代の『第一次植民者グループ』と呼ばれる人々が遺した超戦闘兵器にして現行の機械獣のオリジンである彼女と少年は、展開していた部隊を蹴散らす。
そしておねえさんは元に戻り、少年と町に向かう。
おねえさんは町に歓迎され暮らし始めるが……彼らが倒した部隊は、新たなる南北戦争の先触であったのだ。
二人、町と、国家は、戦争へと駆り立てられる。
副題『wild flowerZ』