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ケムリクサ平和時空「姉」
りつが微睡みから覚めると、台所にヒトの気配があった。
(りんたちは学校、りょうちゃんは山に行ったし……?)
りんは身を起こし、こほ、と一つ咳をする。風邪……ではない。結核とかでもない。喉が弱いだけなのだ。ネコチャンと広葉樹の柄のかわいらしいパジャマに、小豆色の半纏を羽織り布団から抜け出す。
季節は春のはずだが、昼でもまだ部屋はひんやりとしていた。
今朝は寝不足でぼぉっとして、口の中を噛んだら吐血したと思い込まれてりんたちに布団に押し込まれたのだ。
(誤解を……誤解を解かないといけないにゃ……)
謎の焦燥感がりつを襲う。夜は内職(と、趣味の盆栽の調べ物)に没頭して、ただ眠いだけなのだが、優しい妹たちはとても大切にしてくれる。
「おう、りつ。起きたか。風邪? 体調不良? なんだって?りんからきいたぜぇ」
ううん、と、りつは心の中で言葉を訂正する。
「ねえちゃんがおかゆつくってやったぜ。一緒に食べようぜ」
そこにいたのは、りつの大切な大切な”姉”。わざわざ職場を抜け出してくれたのだろうか。
「……にゃー」
アチアチチと難儀しながら丼にお粥をよそってくれるりくを、りつは目を細めて眺めているのだった。
【おわり】
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