おねショタ108式の63『未来でまってる』
近未来、あるいは近過去の夏休み。
とある日本の街でのはなし。
主人公である少年とその友達らが遊んでいると、降って湧いたように一人の女性が路上に倒れていた。
彼らが助け起こすものの、自分の名前の他はわからないという彼女は、とにかく人に親切であることを信条とする少年の家族に半ば無理やり招かれる。
全く手がかりのないまま日々を過ごし、少年らの保護者として共に遊ぶ女性は、ふと不思議な目をすることがあった。
懐かしむような、羨むような。
その様子に気づいた少年は指摘するが、女性はそんな自分の様子を意識していないという。
そんなことをしているうちに、一週間ほどが過ぎた。
少年と共に遊んで帰ってきた女性は、もうこのままこの家の子になっちゃおうかなと笑い、家人もそりゃいいと笑う。
あるいは少年のお嫁さんとかな。
少年の祖父がそんなことを思いつきで言うと、二人は顔を真っ赤にして否定した。
その夜、ふと少年が目が覚ますと、女性がベランダから夜空を眺めていた。
眠れないの? 爺ちゃんがあんなコト言うから。
そう寝ぼけ眼で少年は笑うが、突然彼女は無言でキスをする。
帰らなきゃいけない。
唇を離した彼女は言う。
どこへ? 何か思い出したの?
少年は隠し切れない動揺を隠そうとして訊く。
帰らないと。未来へ。
女性は答えた。
未来から、この時代に彼女は旅をしに来たと言う。
そして記憶の一時的な封印がやりすぎたこと、かえってそのせいで封印が早く解けたこと。
この時代は、少年らが思っているよりもとても良い時代だ。
でも、彼女の時代もそう悪くはないよ。
明日がまってる。未来がまってる。
――そして、私は未来で待っているよ。
……そう告げて、女性は少年の腕の中から砂のように消え去っていた。
ありえない発明をした男の、そんなひと夏の思い出。
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