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お買い求めは、山志田仏壇で 【中】
「ノーマル5個」
「はいノーマル5個」
「ストロング10個」
「はいストロング10個」
「ノーマルと5個ずつ」
「はいノーマル5個……ストロング5個でよかったですか……?」
「おう」
昼食を済まして午後。果たして、昼からは妙な圧のある連中が大挙して訪れ、人数から言えば少ないが一人あたりの接客時間がかなり増えた。レジで手販売に切り替えたのは良いが、品名はきちんと伝えてほしい。
「今日はどうですか、ダンジョンの方」
「少し多めかな? ポイント稼げて丁度いいくらいだよ」
隣で手早く商品をさばきつつ、瀬戸さんは雑談をこなす。なんかこっちと違って雰囲気が和やかじゃない? ていうか全体的に皆さん清潔じゃない? 瀬戸さん目当てなの? JDはこっちでも条例対象外か?
「ライトはどこかしら」
「あ、おいくつですか」
そんなよく分からない羨みを抱きつつレジを進めると、俺の目の前にはボンレスハムじみたマダムが長財布を手にしていた。
「42」
「……ちょっとまってください……!?」
キリよく4箱じゃダメなんですか!?
そんな言葉を飲み込みつつ、そのマダムのため、俺は線香コーナーの棚下収納へ走る。ライトはそんなにレジに置いていないのだ。
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「おいニイちゃん、数珠どこ?」
「えうあ!? あ、あの棚です」
そしてそのマダムのために段ボール箱を運び終わり店内へ戻ると、今度は線香の塊のような激臭のおっさん冒険者に声をかけられた。なお、上から下まで身体中御札だらけなので、おっさんというのは声から推定だ。ビビりつつ戦闘用数珠の棚の方向を指す。
あんがとよ。と声だけは気軽にそっちへ歩む彼は、身体同様御札だらけの大きな函と、一転真っ更な金剛杖を背負っていた。
「エダマキさんだ……」
「なんでこんなとこに……」
「いやまあ山志田香目当てだろ」
「なるほどな」
店のそこかしこで密やかな声を交わし合う。
「ええと……どなた?」
レジに戻りつつ誰ともなしに尋ねてみた。
「おいおいモグリかよ。あれが【超鬼】殺しのエダマキさんだよ」
いやだから誰だよ。
「店長! エダマキさん。エダマキさんお越しです」
「何!? あの!?」
果ては瀬戸さんがバックヤードへ声をかけ、遅めの昼食中の店長を呼び出す。
「今お数珠のとこです」
「何だろう……そんな”大物”こっちに出たのかな……」
俵型おにぎりを手にした店長は、訝しげな顔をして表に出てくる。食が細いのは相変わらずで良かった。いや、良いも悪いもないが。
そしてそのざわつきを歯牙にもかけず、エダマキさんとやらは数珠を陳列フック一個分丸ごと掴みレジへと近付いてくる。某聖人の如く列が割れ、お、いいのかい。とは口ばかり、遠慮することなく彼はカウンターにそれを置いた。
「ストロング、13個」
「あ、はい」
俺はかがみ込み、ダンボール箱ごとカウンターに置いた。
いや、置こうとした。1箱と1つを。
「それとこれ……お、おっと?」
エダマキさんがそう言いながらクルリと背を向け下ろそうとした木(?)函と、俺の出したダンボール箱がぶつかり、その大きさに反して恐ろしく軽い函が、地面へと落下した。
落下、してしまった。
《shshshshshshshshhshshshshshshshshshhshshshshshshsh》
Nannka、Kuroino、Deta。
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