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不死者の伏谷さんは死なないけど死にたくない
「アンタ、不死者かい」
お気に入りのカフェでパスタランチ中、テーブル横に男が来たかと思うと、彼はぼくに向けてそんなことを言い出した。
「あ? はあ。伏谷、ですが」
「やっぱりそうか。死ねよ、不死者」
は? と言う暇もなく、十字架と数珠と大幣を装備したそいつはぼくの頭をむんずと掴むとまだ7割ほど残っているボンゴレビアンコに叩きつけ、上記三品をグイグイ押し付けてくる。
パスタ、爆散。皿、破砕。テーブル、陥没。
そして周りのお客さんたちが悲鳴と共に逃げ出した。
「何をするんだ! いきなり!」
ぼくの額から血が吹き出す。ボンゴレビアンコがボンゴレロッソだ。ぼくは腹立ち紛れに手先を鋭利に尖らせ彼の首を切断しようとする。殺しに来たなら殺していいでしょ?
だが驚くことに、1000年間躱された覚えの無い手刀の一撃はあっさりと空を切った。
「本性を出したなこの化け物」
「なんだよ。最近は人を襲ってないぞ」
「化け物は人の間に紛れちゃいけないだろ」
「ぼくも人だって」
「なら人で化け物だ」
「ふむ」
一理ある。
そうしているとどこから取り出したのやら白木の杭を両手に持ち、そのままストレートパンチの要領でぼくに突き込んでくる。手の甲で進路をずらす感じで一本を逸らし、もう一本は弾き飛ばす。するとそのまま杭を手放し、ぼくの手首を掴み上げた。
凄まじい力で、ぼくの手首がバキバキときしむ。いや違う。これはこの男の手も破壊されてる音だ。力に身体が付いて行っていないのだ。
「痛いったら、もう!」
空いてる手を再度骨刃化させ、そのまま掴んでる手に突き刺し千切り切り飛ばした。
「がっ、がああああああ!」
そしてぼくは逃げる。不死者狩りなんて何十年ぶりだろう。百年超えたかもしれない。災難だ。走って肺が痛い。
そんなことを考えながら地面を見つめあえいでいると、ふと、大きな影がさした。
【続く】
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