白天抜刀サキュバシィ #1 「奪」
「ヒャッハー! 男だ! 精《リキッド》を寄越せ!」
人通りも絶えた薄汚い路地! 荒々しい美女たち3人が暗がりから飛び出し、インラインスケートで高速疾走し頭頂部の薄い中年男性に襲いかかっていた。彼女らは下半身はホットパンツ、上半身はダクトテープでおっぱいの先端を隠しただけの格好である。
「リタ、マリア、洗浄!」
中年男性は逃げようと走るも、あえなく蹴り転がされて公給作業服をパンツごと引き下げられた。そこに向けられるのは、アワアワの出る銃の如きもの、水を高圧シャワーする銃の如きもの、そして先端に微振動する粘着軟体筒を付けた銃の如きもの!
「ガッテンですわ!」「了解」
ブルネットとブロンドの両名が中年男性の股間を遠隔強制洗浄すると、ブルンブルンとおっぱいを揺らして頭目らしき美女、ノルンが中年男性に近づき、目前で屈み込む。エロ蹲踞である。
無骨なスケートブーツからは艶かしく脚が伸び、その根本のホットパンツの奥には何も穿いていないようで、その観音開きの間には乙女のアンダロメダが見え隠れする。そしておっぱいは両腕で圧迫されぎゅうっと変形していた。
これらを勿体ぶる仕草一つなく一気に叩きつけられた中年男性は、条件反射的にたちまち"分身"に血流を流し込まれてしまった。そこに、ノルンは慎重ながらも事務的な様子で先の銃のごときもの……【さくせいくん17号】を当てがう。
「あ、あああああーーー! 三日分の貯蓄があーーー!」
低く力強いモーター音が数秒響き、即時に男性は発射! AIアルゴリズム最適振動とバキューム運動の前に致し方なし!
「愛量数値……53か」
「悪くない数値ですわね」
「じゃ、またここ通ったら、ヌかせてくださいね」
しかし疲労の中年男性は聞いていなさそうだ。
それぞれのアイテムを背中に背負い、ジズムサッカー強盗団『ノルンの姉妹』は現れた時と同様、路地裏へと姿を消した。
♂♀
中年男性は公衆搾精局69分所に這々の体でたどり着き、総合搾精作業用多目的強化装甲服《エレクト・スーツ》を着込んだB級搾精官に顛末を話していた。
「従いましては、今日の提出義務の免除をお願いしたく……」
【不可。市民、精《リキッド》の提出は義務である】
しかし、マスク越しの合成音声じみた声で返されたのはそんな無慈悲な言葉。
「なっ、そんな。出ないものは出ないですよ! わかってくださいよ。そもそも、ああいう手合いを野放しにしてるのはあなた方でしょう!?」
【否定! 当局も問題視している!】
その言葉が癇に障ったのか、対応デスクに合成カーボン樹脂の拳を叩きつけ、搾精官は市民を威圧する。
奥へ! という言葉と同時に椅子から飛び出した拘束帯に固定され、中年男性は強制増産作業に従事させられることとなった。
♂♀
遥か未来。愛の力は証明された。証明されたので、エネルギーとして活用されることとなった。
とりわけ簡易効率的な方法として男性の精《リキッド》からエネルギーを抽出することが考案され、その愛量《ジズム・エネルギー》は地球から暗闇を消し去った。
しかし、エネルギー問題の解決で世の安寧など安易な夢。
持つもの、持たざるものの対立。徹底的なエネルギー搾取体制を整え勃興した新国家群。それに反目し独立するいくつもの都市。
混迷は、より細かく、より多く、深まるばかりであった。