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暗洞に声よ響いて #3
「帯域使用料……って何……?」
『ご説明しますか?』
「あ、いや、大丈夫……不要です……」
分かってるけど分かりたくないときのアレだから、大丈夫だ。デジタルアシスタントが映るPCディスプレイの前で、私は頭を抱えていた。
告知動画投稿から一夜。あるいは、自宅用Pvサーバーが来てから一夜。
……やってしまった。テンション上がった勢いで告知動画を投稿したが、大事なところで説明書を読んでいなかった。
プライベートバース……VR上の個人向け共有空間を設立する準備をしたは良いが、そこへ人を招くための帯域使用料……回線を使うための費用とやらを、もののみごとに見落としていた。
そもそも、本当はいろいろ練ってから今日告知を出す予定だったのに……なにが私のステージだ。だ。恥ずかしい! は、恥ずかしい!
◎
「現金払いじゃ、だめなんだよね?」
『厳密に言えば可能ですが、おすすめしません。現在、個人が現金で”ポイント”をご購入される場合、手数料が過分にかかりますので……』
まともな国であれば、正体不明の存在に自国の通貨を預けたがる国はいないだろう。現金から暗号通貨への手数料は、高騰を続ける一方だった。
『あるいは他の仮想通貨を迂回する方法もありますが』
「口座開設できる頃には予定日過ぎちゃうよ……」
手続の最終的な末端で、未だ郵便を使ってハガキを受け取る必要がある。デジタルの時代じゃないのか。デジタルの時代とは……。
(なんかこわいので)貢ぎは受けないと表明するあまり、その手の口座やら何やらの開設を怠っていた、というのも大きな原因であるのだが。
「……っていうかもうお小遣いないし」
これ以上は生活費に手を付けなきゃいけなくなる。そしてその動きは親にバレる。ちょっと背伸びして一人暮らしをしてる以上、それは避けたい。
……あるいは、収録予定の延期。
それが現実的解決方法だ。
だが……
「それはやだな……」
ふと口を出たのはそんな言葉。
一夜のうちに早くも、そして少なからず寄せられた期待のコメント。これを裏切るのはひどくためらわれた。
◎
『では最後の手段ですが』
「ええ……直接稼ぐしか無いね」
最後に残された選択肢、それは一番シンプルな解決方法。
ポイントの一次生産……ダンジョンを踏破し、アイテムを得、それを精算すること。
私は、バイザー型のHMDを装着し、その画面越しに見えるダイヴスタートのアイコンを虚空で押下した。
【ウェルカム。冒険者<エクスプローラ>。初めまして】
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