12月!おねショタの季節!「年末はおうちで」
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「珠湖おねえちゃん……なにしてるの」
「ブレ〇イ」
「それはわかるけども」
大晦日! 寒い季節!
少年 射場りょうが、年末年始のため帰省した女子大学生 師走珠湖に会いに行くと、彼女は炬燵に潜り込み、なにか鬼気迫る様子でゲームをプレイしていた。
見た目は黒ロングに眼鏡とクールな雰囲気を漂わせているが、そうではないことは少年は昔からの付き合いで良く知っていた。
「こんな面白いことある? こんな面白かったのこのゲーム」
「まあ、それは有名なゲームだから」
「なんかの誇張とかステ〇かと思ってた……」
「それ以上いけない」
彼女の目の前の画面では鎧姿の少年が空高く打ち上げられ、落下しながら電光を纏う矢を射ろうとしていた。
なんでこんなゲームを何年も……
と、感情の薄い声で何故か慄いた様子で呟きつつも、その矢は過たず妖しくマゼンタに輝く部位を射抜く。すると場面はムービーシーンに移った。
「これは序盤抜けたくらいか……なぁっ!?」
「え、まだそんな……でも四体いるからそうか」
そう言いながら、珠湖はごく自然な様子でりょうを引き寄せ、炬燵と自分の間の隙間に抱っこクッション宜しく少年を抱える。
彼女は割合大柄な方で、少年は比較的小柄な方だったから出来ることである。
「確かりょうくん、全クリしてたよね?」
「う、うん。やりこみまでは出来てないけど、DLCも買った」
「OKOK。じゃあ、一緒にやって教えてもらおうかな」
珠湖の声が、顔を赤くした りょうの耳の真横で響く。
いろいろと大きくて暖かくて何より柔らかいものが、少年の厚手のトレーナ越しにも分かるほど背中に押し付けられる。
「んっ……んっ……ゴメンね、りょうくんのことを忘れてたわけじゃないの。ただ……」
「ただ……?」
視線を画面に寄せたまま、僅かに上の空な様子で紡がれる彼女の言葉は、どこか空虚な色を含んでいて少年の胸を無為にドキドキさせる。
「ゲームが面白過ぎて忘れてたの」
「……ん?」
そのドキドキに、少年は騙されそうになっていたが、ギリギリで踏みとどまる。
「……忘れたたんじゃん?」
「ゴメン」
「かれ……しを、置いて……!」
「ゴメン!!」
少年の口から控えめに呟かれた”彼氏”の言葉のとおり、二人はこの春の直前、彼女が上京する時以来男女交際を始めていたのだが……。
「こ、このー! わるいかのじょさんだ!」
「あ、ムービー見えない。どいて」
「んもおおおおおおおおおお! 止む無し!」
帰省するたびこの調子で、なかなかいちゃつくこともできていなかった。
「まあ、でも、これ終わったら、ちょっと……ね?」
「うん……」
甘い空気が始まりそうだったが、残念ながら今しがた倒した巨大ボスがそのままダンジョンになるというまさか展開により、その姿勢のまま年越しを迎えたのだった。
【おわり】
良いお年を