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ノベルマガジンロクジゲン

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むつぎはじめの書いた小説が読めるマガジン。 メインはSFというかファンタジー。
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#パルプ小説

むつぎ ノベル 総合目次

オリジナル断章 灰色の浜辺にて ニーナ・ザ・ミストガン 【1】 【2】 【3】 【4】 少女ファイル 満ちぬ街のムメイとクーニグンデ 【1】 【2】 【3】 黎明亭の核爆発。 【1】 まいこ・ザ・ジャンパー(完) 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【あとがき】 【完全版】 商人と海。あと亀とエルフとレールガン 【1】 【2】 【3】 黒の機械兵 【第一話】たびだち(完) 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 Mine&In

年末特別妖魔退治キャンペーン #パルプアドベントカレンダー2024

「まよせ? なよけ? ってのを貰いたいんだけど」 「名寄の取得なら二階の税務課の家屋係。魔除けの配布なら三階の霊務課の禍乎駆係になります」 「じゃあ二階だわ。ありがとうね」  50代ほどの女性市民が、市役所入り口の案内係の女性に礼を言ってエレベーターへと向かった。すぐに、次に並んでいた市民が用向きを相談する。  年末も差し迫った12月のなかば。華護洲市役所瑠璃光町支所は市民でごったがえしていた。  世界に妖魔が現れ社会が崩壊しかけて数十年。どんなことがあっても、年は暮れる。

ヤクザの鉄砲玉は悪魔を撃ち抜けるか?

「こいつ消せ。報酬は五千万。前払いで千万。サポートもつける」 「ヤスさん、すみません。この写真だと本人確認がちょっとなんですけど……」  任されている古本屋のバックヤード。パイプ椅子にどっかと座ったヤスさんが前置きも無しに僕に差し出したのは、滅茶苦茶気合の入った特殊メイク姿の女の写真だった。撮影の角度的に、盗撮されたもの。  バチっとした細身のダークスーツ姿はまだしも、露出した肌は真っ青。目の白目部分が黒い所謂黒白目で、瞳孔は赤。側頭部から角。歳の頃は僕と同じ20代半ば程。

『アドベント19』 / #パルプアドベントカレンダー2019

この作品は上記世界の物語です。 「相変わらず他では見ないくらい混んでるね」 「そうだな。普通、ダンジョンで人を避けて動くとか並んでモンスターを待つなんて有り得ないものな」 超大規模VRゲーム【BlackGate】内、プレイヤー街【フィフスノート】。冒険者《エクスプローラー》でごった返す一画を、僕と黒川さんは歩いていた。 有志で運営される大型プライベートヴァース上に築かれた、紛うことなき【街】は、素晴らしき日本の心を体現しており……店舗オブジェクトを取って付けたようなクリスマ

素晴らしき大事業 【NoteパルプマガジンMexico】を褒める

先日、この様なマガジンが発刊された。 遊行剣禅=サンと桃之字=サンがうんえいする大事業である。 拙作も収蔵していただき感謝の極み。 何がスゴイのかそれを説明するには発端の非note公式超規模企画第1回逆噴射小説大賞に遡る。400文字の書き出しでメキシカンスタンドオフする真の漢(魂の性別)のイベントだった。 このイベントは凄まじい数のパルプスリンガーを発掘し……本当にどこに潜んでいたんだこの連中?……実際おれの創作における再生を促してくれた。 この企画は【ほんやくチー

ウェルカム・ブラックゲート 省かれたエピローグ。あるいは、それからのこと。

承前 それからはあっという間だった。 真のVRゲーム端末。完全な異世界体験。BG対応。 そのインパクトはあまりに大きく、そしておれの生活も一変した。まあ懐周りについては省こう。 真に一変したのは、予想の通り世界そのもの。 そのVRゲーム端末にダース単位で使用された隔絶した技術は、否応なく<ギフト>の存在を世界の表側に知らしめ、更なる熱狂をBGにもたらした。 ――あるいは、それが、突然何の前触れ無くおれのような凡プレイヤーに<ギフト>をドロップさせたBGの意志なのかも

ウェルカム・ブラックゲート #7

最初から 前回へ 週末。 おれはようやく市街地の電気屋まで出かけて外付けストレージを買い、端末にデータを落とした(更に丸一日かかった)。この前ある程度は儲けが出る算段がついたのでその後はBGをすることもなく端末で動画サイトを見たりSNSを見たりしつつ、今回の件で行きつけの攻略フォーラムになにか出てないか調べてみる。 【クリプトグラムって知ってる?】 【暗号。暗号文。クリプト。のことやで】 【博識ィー】 【コピペ乙】 【でなにそれ】 【コンテナからドロップした】 【

ウェルカム・ブラックゲート #6

最初から 前回へ 予想外の表示に呆然としていると、容赦なくグレネードが放物線を描いて飛んでくる。NPCは空気を読まねえな! 読まれても困るけど! しょうがないのでおれは派手な爆音を背に、本来のバトルフィールド、すなわち『マシナリー・リーダー』が本来待機している部屋に逃げ込むことにする。こうなったら戦ってやんよ! と言いつつ、部屋の中の遮蔽物に素早く隠れつつステータスを開いて念の為装備やアイテム、そしてオプションを確認する。ログアウトは……出来るようだ。となると、昔ラノベで

ウェルカム・ブラックゲート #5

最初から 前回へ 爆風ダメを避け、前ステップ。ダッシュ開始、シフト移動右。 武器ロール、セカンダリ、レディ、ロングソード『クイックトゥース』実体化。 二秒ほどでコマンドを入力し、グレネードを搭載した左腕側に回り込む。理由1、近距離で右腕のガトリングを受けたくない。理由2、狭所でグレネードを受けたくない。結論、グレのリロードがされる前に潰す! 『マシナリー・リーダー』の直前で小ジャンプ。後、通常斬撃! システムアシストで吸い付くように鋭い連続斬撃を放ち、異音とともに細めの腕

ウェルカム・ブラックゲート #4

最初から 前回へ 通路の壁面を触ると、ハイライトされていた扉が音もなく開く。いや、これはホログラムだったのか? しゃがんで入ると低くなっていたのはそこだけで、すぐに通路になっていた。ドレイクが体の幅を無視してチュルンとついてくる。 現実であれば通路の高さは3m程だろうか。幅は先程の通路よりだいぶ狭い。天井部が等しく発光して照らしている。そしてその先には……コンテナ! すなわち宝箱! 走り寄りながら【トラップ発見】を起動。結果、グリーン。隠し通路に隠されている関係上、再度

ウェルカム・ブラックゲート #3

最初から 前回へ このゲームにおいて、ポイントがすべてだ。 スキルとステータスに区別はなく、ポイントを割り振れば一定の区切りでレベルアップする。 まあ、何をするにもステータスが無ければ始まらないので、ステータスの合計値をキャラのレベルと便宜的に呼ぶことが多いが。 そして難儀なのがスキルである。 スキルに必要なポイントは変動する。基本的な方針として、万能キャラは作りづらいように設計されており、かつその抜け穴は定期的にふさがれる。 今現在、概ね無茶なキャラは出来ないように調

ウェルカム・ブラックゲート #2

前回へ 火星マスドライバーは中級と初級の間とされているダンジョンだ。 メインエネミーは暴走した防衛機械<マシナリー>……と言う設定。 「【踏みしだき】!」 四本脚の小型竜……ドレイクの足元から発生した衝撃派を受け、『マシナリー・ウォーカー』が爆散する。大体のダンジョンがそうであるように、入口付近のエネミーは比較的弱い。今日のメインターゲットは中頃にポップする『マシナリー・リーダー』なので、そこまでは騎乗生物で蹴散らしていく。 ドレイクのスキルなら、その道中の敵も狩りながら

ウェルカム・ブラックゲート #1

ダイヴ、スタート。おれの視界を覆っていた緋色の砂嵐が明け、目の前にカウンターが見える。 「ウェルカム。冒険者<エクスプローラ>。本日はどちらへ?」 「火星マスドライバー第69層。ライディングドレイクをレンタル」 「了解しました。解析対象は指定しますか?」 「MWコインのマイニングを」 「了解しました。ゲート、開きます」 虚空に石のアーチが出現し、その暗黒へ、おれは無造作に足を踏み出した。 2009年、世界各地にて深黒の不明物体(大型バスほどだ)が出現した。 測定不能の度外れ