告白はいつもの場所で







秀さんに告白保留されて数日後。
連れていきたい場所がある、と誘われて4度目の会う約束をした。

「車で片道1時間ちょいかかるんだけど、大丈夫?」

子供かいるから、
時間に制限があるから、
気にかけてくれる一言が嬉しい。


わくわく、そわそわしながら迎えたその日…


娘が熱を出した。




そんなに高熱じゃない。
夜なら夫が家にいるし。
子供を1人にするわけじゃない。
だから秀さんに会いに…………

なーーーーんていうわけにはいかない。

夫は娘が熱でグッタリしていても気付かず爆睡するタイプだし、何より娘自体が、体調悪い時はママが傍にいないと不安だろう。
今は微熱でも、夜は急に高熱になることもあるし、そんな時に娘から離れてるわけにはいかない。



首の後ろを冷やしながらベッドに寝かせ、水分をとらせると、疲れもあったのかすぐに眠った娘。
起きた時用にお粥を作りながらスマホを手に取る。

お断りの連絡入れなきゃ。
秀さん、機嫌悪くなったらどうしよう…。

不安に思いながらメッセージを送ると、すぐに返事か返ってきた。




「それは大変!私との約束はいつでも大丈夫だから、娘ちゃんの傍にいてあげてください!」




全然怒ってない…!
そして優しい…!
さすが子持ちの既婚男性!(笑)


良かった、安心……


…という気持ちを、無かったことにするほど大きな罪悪感に私は襲われていた。




悪いことしたから…その反動が娘に悪い形で返ってきたんだ…!
私が不倫なんてしなければ、娘が熱で苦しむことも無かったかもしれない…。

ダメだ…

やっぱり良くない…!

これはきっと、神様が「やめなさい、行ってはいけない」と言っているんだ…!!!




…と、普段大して信仰してもいない神様のお告げ(と勝手に思っている)に突然恐怖を抱く私。

そしてそれを勢いのまま秀さんに送った。

やっぱりやめましょう、と。



秀さんは慌てた様子で、
でも冷静に、
私の暴走を止めてくれて


「じゃあ…お付き合いするしないはおいておいて、友達として話したりするのは?それもダメかな…?」


娘の体調が回復して、私の気持ちが落ち着いたら、また会いに行くよ、と諭してくれて。
娘が回復していつもの日常が戻ってから

「少しでいいから会えない?」

そう誘われて、少しだけなら…と会うことにした。




"神様からの罰"論が完全に頭から消えたわけじゃなかったけど…

あれからも毎日、たわいない内容のメッセージを何度もくれる秀さんの優しさに気持ちが救われてたのは事実で。
恩返し……ではないけど、何か喜んでくれることをしたくて。
「会いたい」って言われるのが嬉しくて。



「この前と同じ場所に待ち合わせでいい?」


わりと明るい大きな駐車場の、自動販売機の前。
後に「いつもの場所」と呼ぶことになるこの場所は、深夜~早朝の時間帯でも適度に間隔あけて複数台車が停まっているし、大通りのすぐ横で程々に明るいから安心感がある。



娘が寝たのを確認し、夫に後をお願いして車を借りる。
待ち合わせ場所にはもう秀さんが来ていた。



「…こんばんは、お邪魔します」


盛大に迷惑をかけ不安をぶちまけ心配させまくってしまった後の対面で、なんだか申し訳ない気持ちが渦巻いてしまう。

助手席にお邪魔すると、あの良い香りに包まれた。



安心する、良い香り。




香りが安心するのか…
秀さんの車だ、って認識するから安心なのか…


ちらり、と秀さんを見る。



秀さんは…



不安そうな表情で私をじっと見ていた。





「娘ちゃん、もう大丈夫?」

どこまでも良い人だ。



Xでのやりとり同様、たわいない話をするだけ。
接触は無し。
…友達として、って言ってたもんね?

徐々に緊張感が緩んできた私とは対照的に、秀さんはずっと不安そうな顔。
これは…どうしよう…。
早めに切り上げて帰った方がいいかな?

話が途切れて一瞬の間ができた時、私がそんなことを考えていたら秀さんが…




「……ね、やっぱり付き合ってもらえないかな?」



突然の告白。


雰囲気の良い場所で、思い出に残る告白がしたい!と言っていた彼が、まさかこんなタイミングで言ってくるなんて思ってなくて固まってしまった。



「ごめんね、友達で…って自分で言ったけど…
会ったらやっぱり好きで、言わずにいられなかった」


迷惑だよね、と笑う彼は、
私の気分で振り回された被害者なのに申し訳なさそうな顔をする。
だけど、じっと見つめてくる目は返事をくれるまで帰らない、というくらい強くて、心がキュウゥとなった。




相手は既婚者。



相手は既婚者。




………本気じゃない、遊びたいだけ。




あぁ、でも………



この人の傍は心地良いと知ってしまった…。





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