AIによる作品と著作権者の問題について

最近は、AIによる著作が盛んに行われているが、法制度の観点から、AIと著作権の関係の整理がいまだになされていない。著作権が発生しないという立場もあり混迷を極めている。では、そのあたりを整理していこう。

著作権の発生条件

まず、著作権法を見ていこう。

まず、第2条第1号で、著作物の定義として「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」としている。つまり、「創作的」であることが前提条件となる。

次に、第6条により、著作物が著作権により保護される条件として、以下の3つをあげている。

  1. 日本国民の著作物。ここで、日本国民というのは自然人だけではなく、日本法に基づいて作られた法人、および日本に主たる事務所を有する法人も含む

  2. 最初に国内において発行された著作物。ただし、最初に国外で発行されたのち、30日以内に日本国内にて発表された場合もこの条件を満たすものとする

  3. 条約により日本国が保護の義務を負う著作物

ここで「条約」というのはベルヌ条約などの諸条約のことである。端的に言えば外国の著作物も保護対象だということである。

除外条件もあるが、「事実の伝達にすぎない雑報および時事の報道」「憲法その他の法令」「国など政府が発表する訓令など」「裁判所の判決など」「法令・訓令・判決などの翻訳のうち、政府が作ったもの」というレベルであり、今回の議論には関係がない。

著作権の保護期間などに関しても今回の議論に関係はないので割愛する。

AIによる作品は著作物か

では、AIによる作品は著作物だろうか。そのためには以下の3つの条件を満たす必要がある。

  1. 思想又は感情を表現したものであること

  2. 創作的に表現したものであること

  3. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

まず、3に関しては自明で満たすため、考慮の必要はない。また、1に関しては、指示を入力した人の思想または感情を翻案してAIが表現しているだろうことから、1も満たすだろう。

ということから、争点は2だけに絞られる。私としては、この2は満たすだろうと考えているため、AIによる作品は著作物だろうと判断している。

AIによる作品の著作者は誰なのか

著作物である以上、著作権が著作者に発生するわけだが、著作者は誰だろうか。候補は概ね以下の4つ存在する。

  1. 指示を与えた人

  2. AIをサービスとして提供しているプロバイダ

  3. AIを開発した開発者

  4. AIのデータセットの作者

まず1に関しては、誰の思想または感情を表現したものなのか、を考えれば合理的であると考える。一方、創作してるのは指示を与えた人ではないという奇妙なことになる。

2と3と4は、逆に、何が創作したものなのかに着眼することになる。AIが創作したならば、そのAI自身が作ったものなのだが、当然AIには人格は存在しない以上、誰かに帰属させる必要がある。その帰属先として、これら3つが候補になる。だが、AI自身の思想または感情を表現したものではないという奇妙なことになる。

では、これらの合同の著作物とするのはどうだろうか?その場合、持ち分の問題が発生するわけで、そこで頭を抱える羽目になるだろう。また、何らかの法的問題があった際、2から4が引っ張り出されることになると、AIの開発が委縮することになりかねない。

以上のことから、指示を与えた人が著作権者になる、というのが自然だろう。これであれば、人格権も指示を与えた人になるので、出力を改変したうえで公開する、というのも法的な論理性を担保できる。

結論

私は、AIによる著作物は、指示を与えた人が著作権を得るべきであり、かつそれに関して一切の責任を負う、というのがスマートではないかと考える。

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