オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームに行った

オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームライブの当日。
水道橋駅の周りは、縦縞のユニフォームを着た人で溢れていた。

僕はいつも着ているコートの内側に、3601と書いてあるTシャツを着ているだけの恰好だったから、
ユニフォームを着ている人たちの中で浮いていたと思う。
リストバンドは付けていたけれど、何となく恥ずかしくて隠していた。

開場より少し早く着いたからご飯を食べようと思ったけど、どこも並んでいて入れそうになかった。
すぐ入れそうな店を探して、はなまるうどんにした。
店の中も、ユニフォームとパーカーの人だらけで、どちらも着ていなかったから、少し肩身が狭かった。

開演前に食事しようとしただけでこれだ。
東京ドームでライブをするという出来事の大きさを、今更思い知った。


はなまるうどんを出て、15時。東京ドームに向かうことにした。
水道橋駅から陸橋を渡ると、徐々にビタースイートサンバが聞こえてくる。
まるで、祭りの時に聞こえてくる祭囃子だった。

ドームが視界に見えるところまで来ると、道の両サイドには、オードリーと付け焼き刃の幟が立っていて、皆思い思いに幟の写真を撮っていた。

岡田の幟が一番好きだったなあ。
岡田の打球が一番飛んでいきそうだなあと感じたので。
次点で舟崎D。ビジュが良い。

ドームが目の前ぐらいの距離になると、人が多すぎて流れに身を任せるしかなくなった。
遠目にグッズ売り場の大行列は見えた。
それと、オードリーのオールナイトニッポンの旗が大きいポールの先にはためいているのは見えた。
今考えても、とんでもない人密度だった。

それからドームの中に入るのにも時間がかかり、結局中に入ったのは4時ぐらい。
ドームの中に入っても人だらけで、トイレをするだけで20分ぐらいかかるほどだった。

場内では、サトミツと青銅さんのラジオが流れている。
二人とも声質がまったりしていて、内容もまったりしていて、安心させてくれる内容だった。


ようやく三塁側スタンドに辿り着いて、自分の席を見つけて座って、ゆっくり辺りを見渡して思った。

東京ドームって広いなあ。

今考えれば、あまりにもそのまますぎる感想だが、この時点ではそんなに席が埋まっていなかったから、これから何が起きるか想像がついていなかった。
ステージもあって大きな照明も立ってたけど、それでもまだ現実味がなかった。

開演時間が迫るにつれて、次第に人が増えていく。
サトミツ青銅のラジオを聴いているうちに、気づけばステージ以外の視界には人しか映らないぐらい、人が入っていた。
後ろを見ても前を見ても人だらけだ。


次第に現実味が増してきて、怖くなってきた。
これから何が始まるのか。
内容の告知はされていない。
告知されているのは終了時間が9時ぐらいかも?という話ぐらい。
ただ、「ラジオをやる」という合言葉だけで、本当に5万人が集結している。
楽しみというより、こんな新参リスナーでも楽しめるのだろうか?とか、もし昔の話をされて、笑えなかったらどうしようとか。
不安だった。

開演10分前。
外野スタンドから不意に歓声が聴こえた。
外野スタンドはいわゆる体感席で、ステージ裏が見える代わりにステージ正面を直接見ることはできない席だ。
この席の歓声で、ステージ裏で何かが起きていることを知った。

ステージ裏にサトミツと藤井青銅がいる映像がビジョンで流れる。
開演直前の生放送だ。
一気に会場のボルテージが上がる。
僕は持ってきていたサトミツと藤井青銅のタオルを握りしめながら、二人の話を聞いていた。

サトミツ青銅のラジオが終わり、程なくして、よふかしのうたが流れる。

曲が大きくなってフェードアウトし、暗転。
5万人の拍手が起きる。
僕は拍手しながら、身震いしていた。
歓喜なのか、恐怖なのかは分からなかった。

「ウェルカムムービー おともだち」が流れる。


この映像が終わった時、会場の雰囲気は明らかに変わっていた。
このイベントはオードリーのラジオを聴いたことある人の為のもので、この映像はその意思表明だということは明白だった。
その意思は、観ている人全員に届いたと思う。

それから、若林がトウモロコシ畑から出てきてチャリで爆走したり、春日がゆっくり歩いてきたりして、オープニングトークが始まった。

びっくりするぐらい、いつも通りのオープニングトークだった。
ただ、「今日はラジオをやります」とは言っていたけれど。
どうやって? まだ信じられていなかった。

若林のフリートークが始まった。
あまりにいつも通りすぎた。
2人の言葉に聞き耳を立てて、驚き、笑っていた。
ただそれが5万人が聴いている東京ドームの真ん中というだけ。

凄すぎた。本当にラジオをしていた。
同じ空間で同じラジオを聴いて、気持ちを共有する5万人。
配信ライブビューイングを含めたら16万人がリアルタイムでオードリーの一言一句に対して、リアクションを返す。
その中心で平然とラジオをするオードリー。
とんでもないことが起きていると感じた。

「ローマ教皇と大川隆法」ぐらいしか、東京ドームでトークしたことないということの理由がよく分かった。
話す方と聞く方の波長が合わないと絶対に成立しない。
それぐらい東京ドームは広いし、5万人は多い。

このフリートークで、観ていた全員とオードリーの波長が完全に一致したと思う。
「ラジオモンスター」の力を思い知った。

それから、春日のフリートーク、ひろしのコーナーと流れていくけど、若林のトークで一体感が生まれた会場の熱は、それからずっと冷めることがなかった。

春日のプロレス凄かったな。フワちゃんANN0リスナーでもあるから、嬉しかった。
プロレスの楽しみ方は分からなかったけど、サトミツがいい感じで解説を入れてくれるから、ブーイングのタイミングも徐々に掴めた。
サトミツは本当にいい仕事していたと思う。

若林のDJプレイ。
orangeのイントロ流れた時は震えたね。
「いや、LIGHT HOUSEじゃん」と思ってたら、本当に星野源が出てくるんだから。
この辺のくだりは、良くも悪くもラジオイベントの流れではあった。
いや、それにしても源さんは歌上手いし、若林のラップは良かったなあ。

楽しい時間はあっという間で、気づけばエンディング。
若林と春日がトロッコに乗って、アリーナ席の間を練り歩く。
もう終わりなのか... 祭りの終わりはいつだって悲しい。

ただ、まだ一つやっていないことがある。
それは会場のみんなが分かっているから、トロッコがステージ裏に戻っていっても、ざわめきは収まらなかった。

少しして、花道の先にあるせり上がりにスポットライトが当たり、38マイクがせり上がってきた。
ビジョンに「漫才」と表示される。

漫才だ!
割れんばかりの歓声。

出囃子の「SHOWがはじまるよ」が流れて、オードリーが出てきた。
もちろん若林はSADAで作ったスーツだ。
かっこよかった。
春日は歩き方が変だなぁとは思った。
歩き方変えたわけではなく、春仁田だとは想像出来なかった。

面白かったなあ。
二人で全力を尽くして、観ている全員を全力で笑かそうとしてくれていた。
もちろん我々リスナーは全力で笑っていた。

5分ぐらいしか経ってないんじゃないかってぐらい、あっという間だった。
あとでネットの記事見て30分と書いてあって驚いたぐらいだ。

漫才が終わって、本当の終わり。
「皆さんのお守りになるようなライブになればと思ってたけど、こっちがお守りをもらってしまった」と若林が言ってたけど、とんでもない。
こっちこそ、本当に大きなお守りをもらった。

楽しい祭りが終わったら、あとは帰る時間だ。
規制退場で、あれだけいた客がどんどんいなくなっていく。
僕も規制退場の対象になって、東京ドームを出ることになった。

帰りは水道橋駅から帰ると、とんでもない混雑になりそうだったのと、外の風を浴びてから帰りたかったから、少し離れたところでLUUPの電動キックボードを借りて、どこかの駅まで向かうことにした。

どこに向かうかも決めないまま、無軌道に電動キックボードを走らせながら、東京ドームライブに現地で参加することに最後まで迷いがあったことを思い出していた。

始まりは、東京ドームライブの一次先行抽選に、すんなりと当選してしまったことからだ。

あんなに宣伝してるし、折角だから行けるなら行きたいし、抽選だけ応募してみよう、ぐらいの気持ちで応募したチケットが取れてしまった。
聞き始めたのも最近なのに。
前回の武道館の時、聴いてすらいなかったのに。

ツイッターを見れば、古参リスナーがチケットを取れなかったという恨み節が流れてくる。

「即完するなら宣伝に協力しなかった」なんていう人もいた。

正直、チケットを売ってしまおうと思っていたこともある。
僕より参加するのに相応しい人が絶対にいる。
そういう人を押し退けて自分が参加することに自信が持てなかった。
この気持ちはどうしようもなくて、ずっと抱え込んでいた。

そして、参加しないかどうか考えているうちに当日が来てしまった。
グッズはちゃっかり買ってたけど、自分をリトルトゥースとしてアピールする気にならなくて、3番の背番号をもらうのはやめた。

ただ、3601であることだけはドームに持っていきたくて、3601と書かれたTシャツだけを着た。
あとは、密かにリストバンドだけ着けて。

そんな鬱屈とした思いも、東京ドームライブが終わってしまえば、吹き飛んでしまった。
オードリーの2人と、ライブを観た人たちと波長が合った感覚が体に残っている。
人生においてはたったの3時間半かもしれないけど、その3時間半はライブを観ていた人全員と心をひとつにすることができた。

彼らはこの世界の中にありふれた日常のどこかで生活していて、オードリーのラジオを聴いている時に心を通わせることが出来る人たちだ。

その人たちのことをリトルトゥースと呼ぶのだとしたら、あの場にいて心をひとつにした自分も、リトルトゥースの一員だと思えるようになった。

新参とか古参とかは関係なく、オードリーのラジオを聴いてればリトルトゥース。
リトルトゥースの人たちからすれば、最初から分かりきっていたかもしれないことを、3時間半かけて教えてもらったライブだったなあ。

そんなことを考えながら走っていたら、巣鴨駅に着いたので、そこから山手線に乗って帰ることにした。
お腹が空いたので、電車に乗る前に吉野家で牛丼を食べようとして歩いていると、東京ドームで配られた紙袋を持っている人とすれ違った。
多分、水道橋から電車で巣鴨まで帰ってきた人なんだろう。
もちろんこっちも紙袋を持っているから、お互いがリトルトゥースだと認識した。

間違いなくあの人は笑っていて、多分僕も笑っていたと思う。
「お前もリトルトゥースだったか〜ライブ最高だったな!」って、目で通じ合った気がしたな。
嬉しくなって、牛丼に卵とキムチをトッピングして食べた。美味しかった。

帰りの電車では、リストバンドを目立つ場所に着けて帰った。
せめて今日ぐらいは、家に帰るまでリトルトゥースでいさせてほしかったから。


ここで一曲。
「Analogfish」で「SHOWがはじまるよ」。





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