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#おっさんずラブ にまつわる地名を調べてみた

はじめに

おっさんずラブ(2018年連続ドラマ、2019年劇場版)は天空不動産という不動産会社が物語の舞台となっているため、作中に多くの地名が登場する。

武蔵野、国立、小金井、府中……その多くは東京都下を彷彿とさせるものであり、春田創一をはじめとする第二営業所の面々の、人々の暮らしに近い仕事というイメージを支えている。また、このドラマの地に足の着いた、すぐ近くでキャラクターたちが息づいていそうなリアリティは、こうした現実に即した舞台設定がもたらしている部分も多分にあると思う。

一方で、この作品の多くのロケ地は都の臨海部であり、実際に作中に登場するような地域からは距離の離れた場所にある。実際の武蔵野や国立、府中からは海は見えない

こうしたリアルな地名を使いながらも、映像は必ずしもそのリアルに結びついていない、いわばファンタジーの世界なのである。

それでは、おっさんずラブで言及される地名はどれほど現実とリンクしているのか。また、それが実際の映像のロケ地とどれほど乖離があるものなのか。さらに、その設定は物語に一体どのような効果をもたらしているのか。

上記を自分の中で整理したく、作中にて言及された地名を実際の東京都の地図に落とし込み考えてみたのが、以下から始まるスライドである。


課題設定

地図で見るおっさんずラブ

○背景

・おっさんずラブ(2018年版及び劇場版)は「東京」を舞台として物語が展開していく。

・映像としては海・川・橋といった臨海部を彷彿とさせるモチーフが多用される一方で、作品で出てくる地名は「立川」「小金井」「武蔵野」など臨海部からは乖離した多摩エリアであることが多い。

ひとつの作品に異なる二つのエリアが包括されていることで、日常的でありながら現実にはあり得ない、少しだけ現実を離れた非日常的な世界観が生み出されている。

○ 乖離した2つのエリアの例

・1話・3話 仕事帰りに告白される春田

職場は多摩エリアに描かれるが、告白される/告白を断る舞台は臨海部

・5話 デートが上手くいかず落ち合う二人

→設定上は表参道から落ち合っているが、表参道は海に隣接せず実際のロケ地は千葉県

・劇場版 うどん屋五郎

ラピュータ計画の舞台はベイエリアだが、ロケ地は山間部近くの青梅

○課題設定

・地理的には乖離した二つのエリアが包括することで、現実的でありながらドラマチックな舞台を設定することが可能となっている。

・一方で、この乖離が大きくなるほど、物語と現実の乖離も大きくなり、視聴者が感情移入しにくい物語設定となっているのではないか。


作中に登場した地名から舞台の特徴を考える

作中に登場した地名を東京都の地図に落とし込むと、本作は次のようなエリアを舞台にしていることが分かる。

スライド2

○舞台の特徴

・東京第二営業所、春田家、わんだほう、黒澤家をはじめ、物語の舞台の多くは立川市、国立市、小金井市、武蔵野市などの多摩エリアに集中している。

・第二営業所が取り扱う物件も、「立川本町」「武蔵野坂」「吉祥寺西」など上記地域を彷彿とさせる地名が多く、劇中ではいずれもJR中央線(中央本線)沿線であるとされている。

・物語では大場海浜公園(1話)、海辺(5話)、海港公園(7話)、東京リバーサイド公園(劇場版)など、臨海部を彷彿とさせる場所も数多く登場するが、実際には舞台となる多摩エリアは海とは隣接していない

・豊かな自然の多い多摩エリアと、埋立地など比較的新しい街であり更にオリンピックなどで再開発が進む臨海部は、東京の中でも特色が大きく異なる地域である。


ロケ地から舞台の特徴を考える

上記のとおり、本作の舞台は多摩エリアを想定しているが、映像は海沿いなど臨海部を彷彿とさせるものが多い。こうした特色が大きく異なる二つのエリアを混在させることにより、視聴者はどのようにドラマを捉えているのだろうか。その効果を考えてみたい。

スライド3

○舞台の特徴

・おっさんずラブの都内における都内のロケ地は江東区、江戸川区、港区など臨海部(ベイエリア)が比較的多い。舞台のイメージが「調布近辺」であり登場する地名が「立川」「小金井」などの多摩エリアであることを考えると、この作品は地理的には乖離した二つのエリアを包括している。

・「調布」「立川」「小金井」など都内の住宅街を舞台としたことで、不動産を通して人の人生に寄り添うという春田の人柄が浮き彫りになっている。

・地理的な乖離はドラマよりも劇場版で顕著となる。東京でも比較的新しい街であり再開発が進むベイエリアを中心としたことで、劇場版では第二営業所の所在がより非現実的になった。

・上記を踏まえると劇場版で「人の人生を預かる」ことを描く狸穴家の舞台を青梅市と多摩に置いていることは興味深い


まとめ

スライド4

この作品では、連続ドラマ/劇場版いずれも臨海部と多摩部という特色の大きく異なる二つのエリアが物語の舞台となっている。

臨海部は劇場版の主な舞台であり、その地名は架空のものであることが多い。また、当時の臨海部がそうであったように、オリンピック・再開発など、俯瞰的な文脈に位置づけられ、本作で言えば特に本社サイドの中で語られる。このため、牧凌太に軸を置いた物語が多くなる。

また、海と高層ビルという臨海部特有の美しい画のためか、告白/別れなど恋愛の転換点となる舞台に選ばれることが多いのも、この臨海部の大きな特徴である。

一方で、多摩部は連続ドラマの主な舞台であり、その地名の多くが実在するもの、またそれに近いものである。臨海部がオリンピック・再開発など、俯瞰的な視点で語られているのに対し、多摩部は第二営業所の所在地であることもあり、土地と家、人や家族など、現場視点での物語が展開されていく。このため、春田創一に軸を置いた物語が多くなる。

また、こうした地に足の着いた人の物語が展開される特徴から、夫婦、家族など関係性を描く際の舞台に選ばれることが多い。

こうした二面性のある舞台を一つの作品に盛り込んだことが、おっさんずラブの一見するとリアリティがあるのに、少し浮世離れしているという在り方そのものにリンクしているし、大きく影響を与えていると思う。

また、この視点から考えると、連続ドラマと劇場版の違いの一端も垣間見えるように思う。

すなわち、連続ドラマでは、実在する土地の上での夫婦/家族などの人間関係を起点として、人や家族に寄り添った物語を中心としていたが、劇場版では架空の舞台を中心に、都市計画という俯瞰的視点と恋愛的側面の「事件」を描くようになり、この点でより非現実性が高まったのではないかと思う。

私は劇場版が大好きなオタクなのであるが、連続ドラマとは別物だとは思っており、その違いのひとつはこうした舞台における非現実性の高まりがあったからではないかと考えている。


参考

本スライドを作成するにあたり参考とした、作中で言及されていた地名は以下のとおりである。

■1話
栗林「武蔵野坂、3千万の物件、売れちゃいました!」
黒澤「牧は入社3年目で豊洲地区の再開発を手掛けた我が社のエースだ」
春田日報「本日19時、大場海浜公園にて、待つ 黒澤」
天空不動産の本社「東京都千代田区東丸の内7-13-6」(公式本p56)
天空不動産と同じビルのテナント「ワクライフサービスショップ 南武蔵野店」
天空不動産第二営業所の住所(春の新生活キャンペーンチラシ)「〒180-0000 東京都南武蔵野市大島町3丁目7-12」
「武蔵野坂」JR中央線「武蔵野坂」駅徒歩14分 東京都武蔵野市武蔵野坂4丁目
「吉祥寺西」JR中央線「吉祥寺西」駅徒歩15分 東京都武蔵野市吉祥寺西2丁目
「新武蔵野」JR中央線「新武蔵野」駅徒歩13分東京都新武蔵野市久保3丁目
現地販売会の場所「武蔵野坂駅」

【営業虎の巻に出てくる地名】
「マンションから戸建てへの住み替えを検討中。23区内希望」
「2人目のお子様が生まれる予定なので、新築戸建ての購入を検討中。職場に近い世田谷区を希望」
「現在の自宅を売り、新たに中古物件を購入希望。バリアフリー物件を希望。立川本町の控除湯から車で30分圏内まで」
「4500万円くらいの中古マンションをお探し。駅から徒歩10分圏内、新宿から車で30分圏内希望」

■2話
ちず「広告代理店。本社はアメリカなんだけど」
ホワイトボードの予定表 瀬川「国立」
カズたちの見ているチラシ①「JR中央線 「小金井」駅徒歩20分」
ホワイトボードの予定表 武川「小金井」(ランチミーティングするお)
カズたちの見ているチラシ②「JR中央本線「新三鷹」駅徒歩7分」
ホワイトボードの予定表 武川「武蔵野坂」相原「日建」長濱「小金井」栗林「中目黒」(カズからの電話)

■3話
老女「すみません、北武蔵野公民館ってどこですかね?」

【蝶子の書いた希望シート】
住所:東京都国立市本富士見台3-14-2
ご希望の地域・沿線① 武蔵野市
ご希望の地域・沿線② 小金井市
⇒実際に見て回るマンションは臨海部でバルコニーから海が見える
サンドイッチマンをする春田の広告「立川本町」

【ホワイトボードの予定表】
黒澤「新宿」瀬川「麻布」相原「新子立」長濱「西?」宮島「三鷹」栗林「新小金井」牧「吉祥寺」(春田が武川に「俺のフォローのせいか?」と聞くシーン)

■4話
黒澤「(頷いて)三鷹第二地区の再開発が来月から始まる。また忙しくなるぞ」
ホワイトボードの予定表 牧「新北沢」(瀬川「そのお弁当は?ちずちゃん?」のシーン)
(株)真堺コーポレーションの住所 東京都西武蔵野市眉志多街7-13-6
荒井鉄平の住所(契約書) 東京都立川市西錦町9-13-2(わんだほうの住所)

■5話
ちずの春田へのLINE「キモッ。私は、表参道でパンケーキ満喫中」
武川が就活中の牧と配ったチラシ「武蔵野坂駅徒歩12分」
黒澤夫妻の離婚届の住所 東京都国立市本富士見台2丁目14-2
蝶子さんの本籍 東京都港区南白金7丁目3-6

■6話
黒澤「今日の午後、西多摩川のモデルルームにお客様がいらっしゃるんだが、牧の代わりに行ってもらえるか?」

■7話
牧の春田へのメール「明日、話がしたいです。19時に、海港公園で待ってます」

■劇場版
狸穴「今回のプロジェクトでは、東京オリンピックの跡地を含めたベイエリア一帯に、日本最大規模のリゾート地を建設する予定です。それに伴い、アジアを代表する企業、鳳凰山リゾート開発と提携し、共同チーム『Genius7』を発足しました」

黒澤「このベイエリアは歴史のある街で、老舗も多く集まっています。オーナー様一人一人と向き合って、粘り強く交渉していく必要があるんです!」

大江戸大華火祭の開催地:東京リバーサイド公園

ホワイトボードの予定表(武蔵がホワイトボードの後ろに隠れているとき)
瀬川「買物」長濱「西武蔵野」栗林「東雲」山田「吉祥寺」

狸穴「春田…今夜8時、東京ベイシティホテルに来なさい」

【さくらセメント工場の説明(ジャスティスのスマートフォン)】
さくらセメント工場(さくらせめんとこうじょう)は、東京都文東区に存在するさくらセメントのセメント工場。東京湾沿いに立地し、1996年から稼働している。(ワカルペディア)

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