色葉

編集のお仕事。いつかのための軽い遺書

色葉

編集のお仕事。いつかのための軽い遺書

最近の記事

不幸カウント

さっきからハエがうろうろ飛んでいる。 起こってほしくない、と薄々思っていたことが起こってしまったり、 起こるわけない、と何も気に留めていなかったことが突然起こってしまったり、総じて私にとって不幸というか嫌なことというか、元気にならないことが続いた。 よくないことが続いたことで、自分の周りに意外と誰もいないという新たなよくないことにも気づいてしまい、最近はすべてに気力を失ってへなへなと過ごしている。 友達はほぼみんな、県境2コ向こうにいるから、会いやすそうで会えない。休み

    • 同じドア、違う生活

      体温と同じくらいぬるい夜、いつもより残業した体でまっすぐ道を自転車で帰っていたら、そのまま自分の輪郭がなくなる感じがした。疲れの重さと向かい風で。 あと中指の爪がゆっくりと欠けた。栄養が不足している。 筋肉はたいして使っていないのに、脳をフル回転させたせいでの疲れがつま先まで充填されている。帰宅したらベッドにダイブで、体からマットレスへと根を伸ばし風呂までの道のりと戦う。 ちゃんと暮らしたい!と何度思ったことか。 ほら、こういう暮らしをずっとしている。 でも私が輪郭

      • ことしの誕プレ、自信がいい

        もうすぐ加齢の日がくる。 小さい頃は大好きなメニューとケーキが並ぶ誕生日が待ち遠しかったけど、もう最近は「ひとり孤独に仕事をして終えるだけかも」という恐怖に怯えて過ごすことの方が多い。 しょーもない衝動買いはするくせに、「自分で自分に誕プレを買う」ことを考えると一気にケチが発動してなにを買っても「こんな高いものを…」と後悔してしまう予感がする。 欲しいと毎日思うのに、得るための努力をちっとも継続できていない最たるものが、自分への自信だということにさっきスーパーの前を歩いて

        • 川のせせらぎにイラつく

          元気な中年男性の食べログレビューの筆致を見て、ここまで陽気になれない自分に落ち込む。 足取り重く歩いていたらスススと軽そうに流れる雲を見て嫉妬する。 川の水面に夕陽が反射してキラキラするその幸福さにげんなりする。 理由もなく不安になって落ち込んで、怖くなったり万物に劣等感を覚えたり、ホルモンバランスの偉大さを毎月感じさせられることに、また落ち込む。たすけてー 「自分の機嫌は自分で取る」とか「今日も生きてて偉い」とか、それすらも励ましとして受け取れず、うるさいよと思って

          氣功ジジイ

          鮭の切り身が目の前にあり、食べろと言われているのに頑なに食べず激怒される夢を見た。夢の中では鮭を食べられないことに対して本気で「どうしよう」と思っていたので、夢だとわかって安心した。 鮭のおかげで早起きできたので掃除を始めたら、掃除機が大破した。頭の部分だけぽっくりと外れ、吸った瞬間ゴミを撒き散らすただの長い機械になってしまった。 ちなみに1週間前から冷蔵庫も壊れている。 帰宅して冷凍庫を開けたら「チャポ……」と聞こえ、カチコチだったにんじんがシャバシャバになっていた。

          氣功ジジイ

          ストローみたいな自分軸

          高さ30cmくらいの4倍濃縮めんつゆを買ってしまったので、 ふつうめんつゆに換算したら1m越えのめんつゆを買ったことになるのだろうか。みたいな、くだらないことを考えていたら前回の投稿から時間が経ってしまいました。 ヘッダー(?)は、ニッコリじゃが。 新しいやりたいことのために、泣く泣く離れた環境があったのだけど、そのときも「いつでもまた戻ってきなね」と挨拶してくれる人がたくさんいた。 私は、すぐ人のことが大好きになってしまう。これはとても大変なことで、人のことを観察しす

          ストローみたいな自分軸

          9階建の書店で落ち合う

          9階建てのおっきい本屋さんを、待ち合わせ場所にしてみた。 金曜日の夜、高校時代の友達と適当に喫茶店でも行こうと約束していた。 駅構内で盛大に道に迷い、私が待たせる側になってしまった。 着いて、「どのへんにいる?」と連絡するも、返信がない。 「あの子はあれを読むだろうな」とPOPEYE売り場に行ってみると、やっぱりいた。これぞ友達〜と嬉しかった。まかせろ。 夜=飲みに行く、の共通認識がそもそも無いというのもお互いに心地いいな〜と思う。 何を飲もうが食べようが、最後はコー

          9階建の書店で落ち合う

          毎月、実験して暮らす

          屋根のつららから水が滴る音がメトロノームみたいだなと久しぶりに浸かる湯船でとろけながら聞いている。 雪が降った日の外は「しずか」より「静謐」みたいな感じがするなあと毎回思う。 去年の雪日記。 ふわふわに降ったのに、朝にかけてかちかちのつるつるに固まってしまった地面を辿りながら今日は会社に歩いて行かなければならなかった。 晴れまくっている日に在宅勤務ばっかりしていた罰かもしれない。 20分くらいてくてくと歩かなければいけない。 保育園や学校の前では先生たちが朝からせかせ

          毎月、実験して暮らす

          わすれがたいマダム

          ↑のような4人もいれば、衝撃的な尊敬をした大人もいる。 衝撃的な尊敬、というのは多分テストだとバツだけど、本当にそんな感じなので。 じわあ、と「あの人すごいなあ」と思うというよりは、関わる中で急に圧倒的な大人のかっこよさを実感させられる、と言う感覚。 衝撃的な尊敬をした大人、マダム。(推定60〜) 出版社でアルバイトをしていた時に、よく隣の席になった。 空き時間に数チャートを解いていて驚愕したのが第一印象。 勤務時間中に持参の分厚い手帳を丁寧に埋め、 業務用PCで近

          わすれがたいマダム

          音層の中に寝る

          「好きな歌手は?」みたいな質問。 小学校の新学期の自己紹介シートでも、 みんな持っていたプロフィール帳の欄でも、 大学の新歓コンパのさわりでも、 会社に入ってからも、 当たり障りのない質問として幾度となく出くわしてきた。 「まあ誰かしら好きな歌手はいるだろう」前提のもとされるこの質問がいつまでも苦手だった。「ショパンをよく聴いてます」とかなんか場によってははずれそうなことを言ってしらけさせる勇気もなかったし、ショパンもわざわざ挙げるほどの熱を持って推してるわけでもなかった

          音層の中に寝る

          何者かにされちゃう!

          なんとなく外に出たら、私がカメラでいつも設定する色味、みたいな空だった。へんないろ〜と思った。 空というか街(とは言いがたい田舎だけど)全体がそういう色をしていて、 ちょうど体温と同じくらいの体感気温だったから、ウソの空間にいるみたいと思った。 平日、家で仕事をして1人でちょっとコンビニに行くだけ、みたいな生活を繰り返しているから考え事をどうしてもしてしまう。 「多様化というけど、それは情報過多の中で量産されたり露見したりした『いろんな型』にわざわざ当てはめてしまってい

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          19歳の校閲ガール

          「ひとんちを見る」というのが幼い頃から好きだった。 父の働くいろいろなモデルルームに遊びに行った朧げな記憶がある。 新築の匂い、サラサラな床、それをやわらかく照らす陽、「これからあたらしいことが始まりますよ!」感にわくわくした。 自分のとは違う子供部屋のじゅうたんを踏むのとか、 開きそうな扉と引き出しは全部開けたし、なかなか迷惑な子どもだったとは思う。 でも、まだ新品のふかふかさを足に感じたり、開けても何も入っていない引き出しの軽さが面白かったりした。 誰かの暮らし

          19歳の校閲ガール

          令和じいさんと苺大福

          「ふるさと納税の蟹があるよ」 「ふるさと納税のお米持って帰りなよ」 「お年玉もあるぞ〜」 「とろろ(私の大大好物)大量に摺るぞ〜」 「数の子(私の大好物)もあるよ〜」 M-1が盛り上がり、仕事納めのために奮闘し、行きたくない忘年会を丁重に(ストレスを溜めながら)お断りしている間、家族ラインでは年末年始にいかに素晴らしいものが取り揃えられているかのアピールが絶えなかった。 そこまでしないと実家に寄りつかない娘と思われているのかしらと反省しつつ、蟹と米と金と芋と魚卵のために帰省

          令和じいさんと苺大福

          新幹線の運転手になりたかった、編集者になった

          誰しもあるであろう、生まれた時から今までの将来の夢の変遷。いろんな人の聞くのも好き。 私は 新幹線の運転手(はやくてかっこいい) ↓ おもちゃ屋さん(いっぱい遊べると思った) ↓ バレリーナ(このころバレエを習い始めた) ↓ ピアノの先生(このころピアノを習い始めた) ↓ 作家(絵本作りにハマる) ↓ 学校の先生 ↓ 出版(教師たりうるバイタリティが自分に無いことを自覚) という感じだった。 最後のふたつは繋がっていて、「学びのための出版物をつくりたい」と思っていた。義務

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          昼下がりの下品な婦人

          おやつの時間くらいに、モノレールに乗っていた。 モノレール、移動手段として使うにはゆったり運転すぎてなにもかも持て余してしまう。別に見る景色もないし。 モノレールが到着して、まだ降車している人々の隙間を縫って乗車し、空席を狙う婦人がいた。指先を揃えて文庫本のページをめくったりしていたが、隙間縫い乗車のせいで全部下品に見えるなーと思った。 100センチくらいの観葉植物を鉢ごと抱えて大切そうにしている坊主の若者もいた。車内で、その植物をいろんな角度から嬉しそうに眺めていて、よ

          昼下がりの下品な婦人

          居酒屋・人間観察・蛇

          待ち合わせまでの時間にかなり余裕がある、みたいな状況が好き。 三軒茶屋で夜待ち合わせたとき、全身ツタンカーメンのコスプレをした男児が母親に手を引かれていたり、「エグぅ」しか言わない金髪ボブがいたり、綺麗に梳いたショートカット&タートルネックマダム×3が互いのペンダントを褒めあっていたりしていた。 金曜夜8時の三茶は、ちょうど「たのしみ!」の人と「たのしかった!」の人が混ざって色々な方向に歩いていて見応えがあった。私は「たのしみ!」の方なのではやくビール飲みたいな〜と思いな

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