なぜメルカリは売上金相当額を「補填」する、と言うのか
ちょっと前から話題になっている、メルカリの売上金失効問題。
8日の決算会見でついに公式見解が。
売上金を「補填」という表現をしている。とても回りくどいですよね。
補填・・・不足・欠損部分を補って埋めること(デジタル大辞林による)。
なぜ、売り上げを失効させてから補う、という回りくどいいい方をするのか。
供託なんてしたくない
メルカリはかつて、売上金の預かり期間を365日にしていたが、これを2017年12月に、90日に短縮した。これでは短すぎ、という批判が多かったのか、2018年9月には180日に延長しているが。
長期の預かり金を預かるのは、利用者の安全性を担保するため、資金移動業者として、預かり金と同額以上の供託金を供出することが義務付けられてしまう。これ売り上げ金の振込は、1万円未満の場合210円の手数料がかかってしまう。少額販売を行うユーザーからすると、現金として収入を得るには、1万円以上貯めてからやりたいところだ。
その結果、ユーザーが自動振り込みの振込先を設定しない、という、おそらくメルカリ運営側が予想していなかった(予想していたならば先んじて回避策を提示すべきだった)事態が起きる。
預かり期間の延長はありや?
じゃあ預かり期間を延長するか、というと、先の90日ルールが骨抜きになってしまう。これを契機に資金移動業者扱いなんてされたらたまらん。延長なんてできない、というのがメルカリのスタンスではないだろうか。
一旦失効させ補填する、は苦肉の策か言葉遊びか。
売上金を一旦失効させる、というスキームは期限ルールの厳格運用に必須、といえよう。しかし事ここに及んで、そのお金をそのままメルカリが抱き込むことは、不当利得の誹りを免れない。なんらかの形でユーザーに「戻す」必要はある。
そこで出てきたのが「補填」という言葉なのではなかろうか。
一旦「預かり期間を超えたお金は失効しました。しかし補填金として支払えるように引当計上しておき、本人確認のとれたユーザーに「補填金」として支払うんです。ええ、これはもはや売上金ではないのです何をおっしゃいます?資金移動?違いますよ一旦失効したんです」というスキームで。
これが実質的な売り上げ金預かり期間の延長である、資金移動業者とすべき実態かどうか、という判断はこれから金融庁が行うことになりましょう。
もうちょっと続きます。以降は蛇足的なお話ですので、興味がある方だけどうぞ。
「何度も本人確認失敗、振り込んでもらえない」のケースの問題は?
個人的には、支払い遅延による民事法定利率の上乗せの有無が気になります。
メルカリ利用規約
https://www.mercari.com/jp/tos/
によれば、 ※以下、カギカッコ囲み部はメルカリ利用規約から引用です
5条3において
「弊社は、本条の措置の時点で当ユーザーに支払われることとなっていた金銭等について、違法行為への関与が疑われる場合等、弊社の判断により、支払いを留保することができるものとします」としている。
そして5条4において「弊社は、本条の措置により生じる損害について、一切の責任を負わないものとします」
としている。
なお13条2(1)にも
「なお、商品代金の引出申請に当たっては、弊社所定の本人確認を求めることがあり、確認が終了するまでは、引出しを留保させていただくことがあります。」
という表記がみられる。
損害賠償に関しては23条2.弊社の損害賠償責任において、
「弊社は、弊社による本サービスの提供の停止、終了又は変更、ユーザー登録の取消、コンテンツの削除又は消失、本サービスの利用によるデータの消失又は機器の故障等、その他本サービスに関連してユーザーが被った損害につき、賠償する責任を一切負わないものとします。なお、消費者契約法の適用その他の理由により、本項その他弊社の損害賠償責任を免責する規定にかかわらず弊社がユーザーに対して損害賠償責任を負う場合においても、弊社の責任は、弊社の過失(重過失を除きます。)による債務不履行又は不法行為によりユーザーに生じた損害のうち現実に発生した直接かつ通常の損害に限り、かつ、当該ユーザーから受領した代金の累積総額を上限とします。」
とある。
※カギカッコ部メルカリ利用規約の引用は以上です
ここで気になるのは、twitterで見られた「本人確認を送ったのにまた本人確認依頼がきて売上申請できない」ことによる(一時的な)売上金失効。
これはメルカリの落ち度、過失なのでは。と考えると、そもそもしかるべきタイミングで振込がなされていたべきであり、実際に振込を受けることができるまでの期間は、一種の履行遅滞と考えることもできよう。そうであれば、その期間に対しては民事法定利率の範囲で利息をかけよ、という考え方もとれそうな気がする。スズメの涙程度の利率ですが。
ただ、補填金を「(なんやかんやあって)ユーザーに現実に発生した損害額相当額」とするならば、これ以上はビタ一文払わんぞ、というふうにも読めてしまうのがこの23条2なわけで。
確定申告の時期が近づいてきますが・・・
メルカリは基本的には売り手と買い手の間で売買契約が成立し、支払い、発送、商品のやり取り、まで済めば売買契約が完了し、売り手の所得に計上されるべきタイミングは到来しているのではないかと思います。(相互の評価までいって初めて完了、と捉えるむきもありますが)
少額の販売者にとっては問題ないでしょうが、貴金属を売る等、雑所得扱いといっても多額の売り上げを上げる方は、一部確定申告が必要になりましょう。
年内に売り上げ計上したものの、本人確認が通らずに売り上げ金が失効した場合って、その分のお金は課税・免税の決定に影響を及ぼさないでしょうか。
補填金が年を跨いで振り込まれた場合、その扱いは税法上どうなるんでしょうか。
とってもイレギュラーな話だとは思いますが、例えば定年ギリギリの方。
一般的な給与所得者は20万以上の雑所得で確定申告の必要が出てきます。
今年22万の売上金があるが失効した場合、この22万円は確定申告すべきか。来年持ち越してよい、として、無職になっていた場合、免税限界は38万円まで増えていますから、確定申告しなくてもよくなるかもしれない・・・、ということがあり得るのか。(でも失効したものを申告するのも不自然だし、「復活」ではないから売り上げを遡及するのも・・・?)
このへんは不勉強で詳しくありません。どうなるのかご存じの方がいらしたら、ぜひ教えてください。
長々と書きましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。