株式会社フォトラクション|テクノロジーで建設の世界を限りなくスマートに
ー 今回も光井さんの熱量を受け取りました ー
株式会社フォトラクション 代表 中島貴春さん(左)と、HIRAC FUND 光井香織さん(右)は、光井さん前職時代(みずほフィナンシャルグループ)からのお付き合い。
「光井さんの熱量は昔からすごいんです」と笑う中島さんと、フォトラクションの事業や中島さんの魅力について楽しそうに語る光井さん。そんなお2人に話をお聞きしました。
株式会社フォトラクション
「建設の世界を限りなくスマートにする」をミッションとし、建設現場の生産性向上をアプリケーションとデジタルアウトソーシングで支援する、建設支援クラウド『Photoruction(フォトラクション)』を提供。
建設支援アプリ『Photoruction』は工事現場の写真、図面、工程表、タスク、検査など豊富なデータ管理機能を備えたプラットフォームサービス。建設現場で発生する事務作業、報告作業の工数削減を叶え、スーパーゼネコンをはじめ10万を超える建設プロジェクトに導入されています。
アウトソーシングサービス『建設BPO』では、『Photoruction』にデータをアップロードするだけで専用オペレーターが建設現場で発生する事務作業を代行。独自に研究開発した建設業特化AIエンジンも活用し、建設現場での生産性をさらに高めます。
「絶対に中島さんと一緒にやりたい!」。熱意の出資から繋がった縁
ーお2人の出会いについて教えてください。
光井:私が前職のみずほキャピタル時代に、フォトラクションへの出資を担当させていただいたのが最初のきっかけです。
中島:2017年の始め頃ですね。当時は、シード期の資金調達をちょうど終えようとしていたタイミングだったんですが…。
光井:「今からでも入れてください!営業支援頑張るので是非!」と猛烈アピールさせていただいて(笑)
中島:その熱量に押されて、「そこまで言っていだだけるなら是非!」とすべり込みで入っていただきましたよね(笑)
ーそれはすごい(笑)当時そこまで出資したいと思われた理由は?
光井:当時、建設業はまだ業界としてIT化率が低くて、そこを変革していける起業家と出会いたいと考えていました。
そんな時に「建設業界出身でご自身でコードも書けるすごく稀有な起業家がいる」と、ジェネシア・ベンチャーズの田島さんに中島さんをご紹介いただいたんです。当時のチームヘッドの黒崎さんと一緒に中島さんにお会いした際、すごく誠実で本気で建設業を変えたいという想いが伝わってきて「絶対ご一緒したい!」と思い、投資させていただきました。
中島:ありがとうございます。当時はまだ「建設テック」という言葉も一般的でなかったですし、フォトラクションも創業間もないタイミングだったので、とても励まされました。
ーその当時からの関係が、今回のHIRAC FUNDからの出資につながったんですね。
中島:これは本当に偶然で、光井さんと久しぶりお会いした時に、ちょうど資金調達のファーストクローズのタイミングで「セカンドもする予定なんです」と何気なくお話したんですよね。そうしたら「HIRAC FUNDからも出資できるかもしれません!」と言っていただいて。HIRAC FUNDはシード・アーリーステージに特化しているイメージが強かったので、そのように言っていただけたのは想定外でした。
資金調達では、フォトラクションの「応援団」になってくださる方に出資いただきたいなと考えています。事業って良い時もあれば苦しい時もあるので、どんな時でも一緒にやっていける方、そういう意味では光井さんには是非入っていただきたいと思ったので、ご検討をお願いしました。
光井:私は「ファーストクローズでもギリギリ間に合うかもしれません!」とお伝えしたんですが。「大丈夫です」と丁重にお断りされました(笑)
中島:光井さんのこの熱量は昔と変わらないですね。
建設業で発生する膨大な事務・管理業務を効率化。10倍を超える業務削減を叶えるサービス
ー光井さんからも「中島さんは建設テックにマッチした稀有な起業家」というお話がありましたが、起業の背景なども教えていただけますか。
中島:私はもともとITを使ったモノづくりが好きで、小学生の頃からインターネットで出会った顔も知らない人と友達になって、一緒にホームページを立ち上げたりしていました。
その後、IT領域以外のモノづくりをしてみたいと思って大学では建築を専攻し、そこでBIM(Building Information Modeling/建物の3次元デジタルモデルに、材料、コスト、管理情報などの様々な属性情報を付加する事で建設物のデータベースを作り出す)に出会います。
まだまだアナログな部分の多い建設業において、こういったIT技術を活用して産業をどう効率化し、生産性を高めるのかというところにとても興味がわき、大学院ではBIMの研究を行い、卒業後に竹中工務店に入社しました。
しかし、実際に働いてみてわかったのは、工事現場はまだBIMを有効活用できる段階にないということ。その2歩、3歩手前の段階で困ってる人たちが沢山いて、業務量も多く、そもそもBIMを導入する時間や活用する余裕がない状況でした。まずこの目の前の課題を解決しようと考えて起業し、開発したのが『Photoruction』です。
ゼネコンの工事現場では、決められた内容通りに適切に建物が出来ているのかを確認するために「写真など現場状況を記録」「記録データを整理」「データと設計値に齟齬がないか比較」という作業が常に発生し、業務コストが非常に高い。『Photoruction』を使えば、モバイル端末でデータを記録し、そのデータをクラウドでリアルタイムで共有できる。
ー膨大な現場写真の記録や整理、これが全国の工事現場で行われていると知って驚きました。工事作業の合間や終了後に、この作業を行うのは想像するだけで大変そうです。
中島:そうなんです。どのゼネコンさんも、BIMなどで自社データを蓄積して活用したいという思いはあるものの、今までのやり方だと、工事現場の方々が必要データなどを入力する余裕もありませんよね。そこで、逆に普段の業務を便利にするものを提供してデータが自然に集まる仕組みを作れないかという発想で、最初の写真管理機能だけの『Photoruction』が生まれました。
一番の特徴はクラウドモバイルに特化した点です。
特に建築の工事現場の場合、何十万枚も写真を撮って、それをパソコンに取り込んで、フォルダ整理して、エクセルでデータをまとめてという作業が発生します。それが、スマホで撮影したものが自動で整理されて、1クリックで書類が作れればそれだけで数時間の作業が削減できるので、提供価値を感じてもらえたのだと思います。
現在は、写真だけではなく、書類や図面など写真と連携する様々なデータに適用範囲を広げて、建設プロジェクト全般のマネジメントツールとして活用できるよう開発を進めています。
光井:中島さんはサラッとおっしゃられましたが、ユーザーの求めるニーズを正確に把握して要件定義し、スケジュール通り開発を進められている点は、当時から本当にすごいと感じてました。営業同行をさせてもらった際のやり取りを見ても、中島さんの建設業への理解が深いからこそ、実現できることなのだろうなと思っています。
ーそして、そういった管理業務をさらに自動化するサービスが『建設BPO』ですね。
中島:創業時から、AIを活用して『Photoruction』での作業を自動化するという構想を持って、建設業に特化した独自のAIエンジンの開発研究を進めていました。
当初はユーザーに合わせたAI開発を受託していたのですが、最初の数件が、納品後全く使われていないことがわかったんです。
AI自体はすごく良いものが開発できたのに何でだろう?と調査した結果、AIを入れることで必要になる、業務フロー全体の見直しがネックになっていたことがわかりました。
AIが正確に機能するための前工程や、AIの業務結果の確認作業など、AIを踏まえて業務フロー全体を見直すのは難易度が高く、時間も必要です。
そこで、この業務フローをフォトラクション社内で設計して、結果をユーザーに返す方法(AIを活用したBPO)に軌道修正していき、現在の『建設BPO』サービスが生まれました。
光井:創業時からの構想を着実に形にされていて、今後の成長もとても楽しみです。
建設業全体のデジタル化を担う「デジタルゼネコン」へ
ー今後はどのようにサービスを成長させていく予定でしょうか。
中島:『Photoruction』では、さらに機能や扱えるデータを増やして、プロジェクトマネジメントツールとして色々な建設会社さんで使っていただけるように、網羅性を高めたいと思います。
建設業では、ゼネコンや建設事務所、実際に建設現場で施工を行う職人の方々など専門領域に応じて分業が行われている特性上、作業の指示や報告、情報管理などの業務が各会社・業者ごとに重複して発生しています。こういった直接的な管理をデジタルに集約することで分離して『Photoruction』が一手に担うことで、建設業全体のDX化とさらなる生産性向上を叶えたいと考えています。
建設業全体の管理業に労働力を提供する、クラウド上に存在する建設会社のようなイメージでしょうか。
光井:まさに、中島さんがおっしゃられている「デジタルゼネコン」ですね。建設業のデジタル化の部分を担う新しい業態として、建設業になくてはならない存在になれると確信しています。
中島:それと同時に、将来的には『Photoruction』で蓄積されるデータなどを活用し、デジタルだけでは掬い切れない建設業の課題も引き受けていきたいと考えています。
HIRAC FUNDへは「マネーフォワードグループ」ならではのサポートを期待
ーその中でHIRAC FUNDにはどのようなサポートを期待されていますか?
中島:「お金」に関する事業について、是非アドバイスをいただきたいです。
先ほどお話した「まだ掬いきれていない建設業の課題」の中でも、受発注やコスト管理など「お金」の課題については、これから取り掛からなくてはいけない領域だと思っています。
また、地場密着のゼネコンさんは地方銀行との繋がりが強いので、地方銀行とのアライアンスなども一緒に進められることを期待しています。
光井:マネーフォワードグループでは、特にMoney Forward Xで金融機関との繋がりも強いので、是非ご協力させてください。
また、情勢を見ながらではありますが、経営者の皆さんとのコミュニティも積極的にお繋ぎしたいです。色々企画を進めているところですが、ご要望などあれば遠慮なくおっしゃってくださいね!
インタビュー・文・写真/苞山 美香