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着物と段取り

着物を着るには、段取りが大切だ…ふと、そんなことを思いました。

例えば。
メイクとヘアアレンジは、着物を着る前に済ませることがほとんどです。
コスメやスタイリング剤で、着物を汚してしまうかも…と思うと、落ち着かないんですよね。洗える着物ばかり着ると言っても、積極的に汚したいとは思っていないわけです。
それに、着物を着ている時に腕を上げ続けるような動作は、あまりしたくない。単純に疲れるし、着崩れだって気になります。

ここに、不可逆な矢印が存在するなぁと思うのです。
コスメの色や質感を選ぶのも、ヘアスタイルを選ぶのも、着物を着る前。だから、自ずと着た後の姿をイメージしながらヘアメイクをすることになります。
しっとりした大人っぽいコーディネートを組んだのに、二つ結びのおさげを組み合わせるようなチグハグ感は、できれば避けたい…そんな感じ。

そして何より、着物は、アイテムを身体に【重ねて】着ていくものなんですよね。
私の場合、肌着に始まり、肌襦袢、着物、帯、帯揚げ・帯締め・帯留めなどの小物…という具合ですが、着る順番があるということは、先に着たものを、後から取り替えるのが難しいということでもあります。
全てを着てしまってから「ああ、半衿だけ別のものに変えたい!」と思っても、全部脱いで着付けをやり直す手間と天秤にかけると、ぐぬぬぬぬ…と悩んでしまいます。場合によっては、タイムリミットだってあるでしょう。
故に、着付けのやり直しをしたくないのであれば、出来上がりをしっかりイメージしてから着た方が良いわけです。

この日は、名古屋帯を銀座結びに。
例えば、帯揚げを後から変えたいと思った場合、
構造的にどうしても結び直すことになります。

だから、着物を着るには、段取りが大切なんだなあ…と思いました。
私の場合、着物を着る前の日にコーディネートを決めてしまうことがほとんどです。当日バタバタしたら嫌だなぁという不安を、前日に準備することで回避したいという算段でしょう。
今までずっと、そうしてきたように思います。計算はあったと思うけど、多分無意識に、そういうものだと思ってしまっていました。

そして、今日。
私は、洋服を着ました。
どうしても、今日着たいスカートがあったのです。そこを起点として、トップスを合わせる。ベストを重ねる。一度脱いで、別のベストを着る。あぁ、こっちがいいな。靴下はどうしようか?同じ青でも、このスカートに合う青はどの子だろう。
全身決まったらヘアメイクを考えます。メイクはいつもの感じで、髪型は編みおろし?いや、案外ポニーテールとかどうかな…

どうしても着たかったスカートは
harunachicoさんのもの。
手描きの線が温かくて大好きなんです。

ここまできて、無性にワクワクしている自分に気が付きました。
【やりながら決めていく】という、自由で、瞬発力が必要なスタイルが久しぶりで、そのことに心が躍ったのです。

コーディネートの全てを決めて、イメージして、明日の自分への期待に胸を膨らませながら床に就くのは、とっても素敵なことです。
でも、アレコレ身体に当てながら試行錯誤して、その場のフィーリングで着姿を作っていくのも、やはりワクワクを高めてくれる素敵なことなんだなぁ、思ったんです。
そんなことを、洋服に教えてもらいました。

洋服のように着物を着る…そんなスタンスに憧れる方は多いのではないでしょうか。
私もその一人です。
ただ、【洋服のように】と一口に言っても、【具体的にどのように着たいのか】というところは、解釈がたくさんあるように思います。
私の場合、心のハードルが高さが、洋服を着る時と同じくらいの高さになったら嬉しいな…という、ささやかな目標があって。
洋服に教わったことを通して、【そこまでの準備をしなくても、楽しく着物を着られる】状態というのが、その到達点のひとつなのかなぁと思いました。

今度、着物を着る当日に、何もないところからコーディネートを作ってみたいな…そんな妄想をしているところです。
もちろん、慣れないことするわけですから、たっぷり時間が取れる時に限られると思うけれど。その日を迎えるのが、何だか楽しみでなりません。
新しい楽しみが見つかると、ワクワクしますね。

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Instagramをしています。着物のコーディネートを載せたり、スタッフをしている【普段着物のお店】のことを載せたりしています。もしよろしければ、お気軽に覗きにいらしてくださいね。


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