着物と在る日々ー春の訪れを感じ取った日
2022年、3月下旬のある日。
みぞれちらつく極寒の日の、翌日でした。
天気は回復したものの、前日の余韻が残る、厳しい寒さ。
少し悩んだ末に、春らしい淡いカラーの片貝木綿を着ることにしました。
七分袖のインナーと、着物用のカーディガンコートを合わせれば大丈夫。この2つは今シーズンの“防寒いつものセット”でした。
黒い半衿を着けたい気分だったので、帯と足袋も黒で合わせることにしました。
差し色は、黄色。着物のチェック模様にうっすら黄色が入っているので、違和感なく溶け込んだかな。水色×黄色は春らしい色合わせだな…と思い、心が弾みました。
家を出ると、空気がピンと張り詰めていました。やはり寒かったけれど、嫌な感じはしなかったです。
まるで、前日の雨でいろいろなものが洗い流されたかのような、さっぱりとした空気。
歩いていると、歩道の脇に植わっている紫陽花が目に入りました。からからに枯れたように見える枝から、顔を出しはじめた新芽たち。
この紫陽花は、厳しい冬を過ごしほぼ丸裸になった状態から、毎年きちんと芽を出して、花を咲かせに戻ってきます。いっそ暴力的とも思えるほどの生命力に、私は何度も勇気をもらってきました。
どんな状態になろうと、生きてさえいれば、また時が巡って新しい芽を出すことができる。何だってそうなんじゃないかと、私は思います。
春が大好きです。再出発の季節。
新しい何かを芽吹かせられるような、そんなワクワクを感じながら、軽い足取りで私は目的地へ向かうのでした。