着物と在る日々ー季節感について考えた日
暑い日々が続いています。
もう、この暑さには終わりがないんじゃないか…そう途方に暮れそうになったことが、今年も片手ではきかないくらいの回数はあったような気がしています。
それでも、毎日を懸命に生きていれば、季節は少しずつ先へ進みます。
不思議なもので、“暑い!”と大騒ぎしているにもかかわらず、お盆を過ぎた頃になると“秋色”が気になり始めるのです。暑い期間が長くなった現代日本においては、季節と一緒に進むというよりも、やや気持ちの方が先行しているようにも思いますが、それもまた楽しみの一つ。
着物において、季節感は大切にされているものだと感じています。ただ、それは着用ルールがどうこうというよりも、人のその時の気持ちがまとう服に反映されているのが面白いな、と個人的には思うのです。
“秋になったらこんな色を着たいな”という願望も、逆に“まだまだ夏を楽しみたい!”という気持ちも、どちらも素敵。“夏と秋”が人々のコーディネートに混在し始める今の時季が、私は大好きです。
“秋色”の定義は人によって様々だと思いますが、私にとっては、”深い色”や“くすみカラー”がそれにあたります。芽吹きの季節を喜ぶ春から、眩しい太陽に焼かれる夏まで、明るく弾けたカラーを楽しんだ反動でしょうか。
この日手にしたのは、眩しい光のような鮮やかな黄色の有松絞り。いつもだったら、明度の高い色を合わせて元気に着る一枚なのですが、この日の気分は少しだけ、秋に向かっていました。
そこで合わせたのは、茶色の帯。明るい黄色の浴衣に深い茶色の帯を合わせたことで、グッと季節が先に進んだような気持ちになりました。
一見して印象が固まりやすい色であっても、隣り合う色によって随分イメージが変わったりするものです。メインとなるアイテムが同じであっても、全体の印象を決めるのは意外と、周りを固めるものたちだったりするのですよね。
その変化を余すところなく楽しめたらいいなあ…と、ジリジリと照りつける太陽に残り少ない夏を感じながら、思うのでした。