医療的観点からフェムテックにアプローチし、良質な製品・サービスを広く社会に普及させるために
わたしたち一般社団法人メディカル・フェムテック・コンソーシアム(MFC)は、
産婦人科専門医のメンバーを中心とする団体であり、フェムテックを科学的根拠に基づき医療と親和させることにより、フェムテックに係る各種製品及びサービスが、医療制度及び薬事制度における正当な評価を受けられるようにすること、また、それを通じて、フェムテックに関する各種の製品・サービスを社会に普及させることをミッションとして、下記のような活動をしています。
そこで今回は、国内におけるフェムテックの概況に触れながら、わたしたちの活動や実績について、詳しく述べたいと思います。
【フェムテックとは?】
「フェムテック」という言葉を見聞きするようになったけれど、そもそも何を指すものなのだろう?という方も多いと思います。
フェムテック(femtech)とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)からなる造語ですが、MFCは
と定義しています。
ここ10年ほどの間に、欧米を中心に、女性の健康課題を解決することを目的とした「フェムテック」と呼ばれる新しい製品・サービスが次々と世に出ています。
日本においても、この2~3年で「フェムテック」を通して女性の健康課題に取り組もうとするスタートアップ企業が急増し、その分野への投資も盛んになっています。
【なぜフェムテックが必要なの?】
女性には、月経に伴うつらい症状や更年期の症状、そして妊娠中や産後の身体の変化に伴う症状など、ライフステージごとに様々な健康課題がありますが、そうした症状に対して、「仕方ないことだ」と我慢してしまう人がいます。さらに、我慢しすぎて症状が悪化してしまう人もいます。
それから、不妊治療についても、職場や周りの人になかなか相談しにくい、治療による身体や心への大きな負担、金銭的負担などたくさんの問題があります。
こうした健康課題は、女性の仕事や社会生活にも大きな影響を及ぼしています。
PMS (月経前症候群)や月経随伴症状によって、元気な状態のときと比較して仕事のパフォーマンスが半分以下になる人が約半数に上る(出典:日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査2018」)という調査結果があります。
また、更年期の症状が原因で、離職した女性が46万人に上るという推計もあります。(出典:(独)労働政策研究・研修機構HP)
このような女性の健康課題の解決の一つの手段として、様々なフェムテック製品・サービスが展開されています。
【フェムテック製品やサービスってどんなものがあるの?】
フェムテック製品・サービスを分かりやすく説明するために、ここでは矢野経済研究所の行ったフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査のレポートで示されている5つの分野のうち、市場規模の大きな3つの分野をご紹介します。
《生理関係》
既存のナプキン、タンポンといった生理処理用品のほかに、吸水ショーツ、月経カップといった新たな製品が登場しています。また、月経を管理するアプリなどもあります。
《不妊治療・妊活支援》
不妊治療をめぐる疑問に答えるオンライン相談サービスなどが始まっています。こうしたサービスには、個人での利用者もいますが、事業主が福利厚生の一環として、サービス提供会社と契約し、女性従業員の不妊治療、妊活を支援するケースも出てきています。
《更年期》
更年期に伴う症状は人によって異なり、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ等)、頭痛、うつ・不安感、膣内の乾燥による痛み(歩くだけでも痛いという人もいます)、骨盤底筋の衰えによる尿漏れ等、様々な症状があります。また、更年期からの骨密度の低下が、その後の骨粗しょう症につながるともいわれています。
日本では、骨盤底筋のトレーニングを行う機器や、オンラインにより骨盤底筋トレーニングの指導を行うサービスなどがあります。
【現在のフェムテックに関する課題】
しかし、そうしたフェムテック関連製品の中には、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の承認等を受けていない「雑品」として販売されているものもあります。
こうした製品は、薬機法上の承認等を受けた場合に表示することが認められる効能・効果を消費者に示すことができず、また、製品に含まれる成分について行政の審査等を受けずに市場に出されていることから、消費者に性能や品質が保証された状態で届けられていない可能性もあります。
一方で、フェムテック関連製品はまだ新しい製品であるため、薬機法上の位置づけがまだ決まっていないものや、品質評価の方法がまだ確立していないものもあります。
人々のライフスタイルが多様化する中で、女性の生活の質の向上を目的とした新たなフェムテック製品が数多く開発されていますし、これからも増えていくと思います。
女性が、個々のニーズに合った、性能や安全性の確保されたフェムテック製品に、より迅速にアクセスできるように、MFCは、国や事業者と協力して取り組んでいます。
【国もフェムテックの推進に取り組んでいる】
2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」、いわゆる「骨太の方針」では、初めて「フェムテックの推進」という文言が盛り込まれ、国としてフェムテックの推進に取り組む方針が示されました。
また、経済産業省は、2020年度にフェムテック産業の実態調査を行い、2021年度および2022年度は、約20の事業者を公募し、フェムテック製品・サービスの社会実装を目指した実証実験を行っています。
【フェムテック振興議員連盟について】
政治の動きとしては、2020年10月に、「フェムテック振興議員連盟」が発足しました。同議員連盟では、
という3本の大きな柱を掲げ、これらの課題解決にどのように政策的に取り組むべきかを、厚生労働省、経済産業省等の関係省庁や、フェムテック関連事業者とともに議論しています。
【MFCの活動】
このような動きの中で、MFCは、新しいフェムテック製品をユーザーの方々が安心して使えるように、医学的に適切な評価を行うことが必要であると考えており、そうした製品評価のあり方を検討し、それを通じてフェムテック製品の適正な普及を図る一助となることを目指しています。
具体的な活動としては、
(1)フェムテック振興議員連盟に参加し、フェムテック製品の中には薬機法上の位置づけが定まっていないものがあるという現状や、フェムテック製品の品質評価の在り方を検討することの必要性などを報告してきました。
また、不妊治療の当事者が直面している課題とその解決策についても提言を行っています。
(2)厚生労働省、経済産業省等の関係省庁や、フェムテック関連事業者との橋渡し役となるべく活動しています。
2021年には、フェムテック製品の薬機法上の位置づけや品質評価のあり方等を検討するため、日本衛生材料工業連合会と共催で「薬機法ワーキンググループ」を開催し、厚生労働省・事業者の参加を得て、経血吸収ショーツ、月経カップ、各種機器について議論をしてきました。
【これまでの活動の成果】
上記の薬機法ワーキンググループでの議論を踏まえ、医薬部外品の承認を受けようする場合に、どのような観点から品質評価を行うべきかを整理しました。また、医薬部外品となった場合及び雑品として販売する場合のそれぞれについて、広告表現上気を付けるべき点を整理しました。
これらを2021年10月に日本衛生材料工業連合会と連名で「経血吸収ショーツ等に関する評価の観点について」「経血吸収ショーツ等に関する広告表現の考え方について」という文書にまとめ、公表しました。
この文書は、厚生労働省から各都道府県等に対し、事務連絡による周知がされました。
(本件に関する記事はこちら↓)
また、薬機法ワーキンググループの議論を踏まえ、2022年4月、二つのフェムテック関連機器について、薬機法上の位置づけが国において新たに定められました。
(本件に関する記事はこちら↓)
【今後の活動予定】
MFCでは引き続き、フェムテック議連に参加するとともに、フェムテック事業者の皆さんや関係省庁と連携しながら、各種フェムテック製品の薬機法上の位置づけや、品質評価のあり方などについて議論をしていきます。
フェムテック議連では、今後、更年期の健康課題への対応について議論される予定です。
厚生労働省や関係団体、事業者の方々と連携し、いわゆるデリケートゾーン用の各種製品の薬機法上の位置づけ等について検討していきます。
SNSやWebサイト、また新聞・雑誌などのメディアを通じて、良質なフェムテック製品・サービスの普及に向けた取り組みや政治・行政の動きなど情報提供していきます。
フェムテック事業者の方々にとって、良質な製品を展開していく一助となるような情報を提供するため、勉強会等を行っていきたいと考えています。
【最後に】
わたしたちMFCは、これからも、フェムテック製品の法令上の位置づけや品質評価の考え方などを官民のコミュニケーションを図りながら確立していくことを通じて、良質なフェムテック製品・サービスが普及するよう取り組んでいきます。
法人、個人問わず、フェムテック業界を盛り上げていきたい方、MFCの活動趣旨にご賛同・ご支援いただける方は、ぜひご入会をご検討ください!
また、取材や講演、医療監修などのご依頼や、ご入会に関するお問い合わせについても、下記よりご連絡いただければと思います。
https://femtech.or.jp/inquiry/
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