ドイツ歌曲の話 詩人の恋 Dichterliebe #16 嘲笑するピアノ
これまたひどい話。
この詩はハイネの中でも有名なのかもしれない。というのはYouTubeには朗読もたくさん上がっているから。シューマンが曲を付けているということ関係なく、知られている詩なのかも。
シューマンはハイネの皮肉や批判精神を理解していなかった、とはよく言われること。しかし前曲のどっぷりと悲しみに浸った後奏から、この変わり身。これを皮肉と言わずしてなんと言う。
変ホ長調。前曲のト短調の平行調の下属調。要するに♭2つから、♭3つに。
四分の二拍子
前奏は歌い出しのメロディーと同じだが、シンコペーションとアクセントで、言葉におけるアクセント、強拍を無視してみせ、それはまるで詩人を嘲笑するかのよう。私はこのシンコペーションが、何者かが詩人を後ろから「膝カックン」して馬鹿にしているかのように感じる。
歌が始まるとそのアクセントはなくなりますが、3回だけ左手にまた現れる。それは「(彼女が選んだ)他の男は、他の娘を愛し」というところと
「ゆきずりに出会った」というところ。
嘲笑ってる、嘲笑ってる。
左手、というところがまた、陰でこっそり指差して笑っている感じがする。
最後の
「それが本当に起こったら 、心は…..」
ではリタルダンドして、変ト長調なんか使って寄り添うふりしながら、右手でまた大っぴらにアクセント。
そして極め付けが「まっぷたつ」で、しれっとア・テンポ。
お前の戯言なんて聞いちゃいねえ、って感じ。
書いてて辛くなってきた。うわあ。