ドイツ歌曲の話 シューベルト Der Jüngling an der Quelle 泉のほとりの若者
この曲を聴くとき、歌うとき、いつもその美しさに溺れそうになります。
8分の6拍子、イ長調。Etwas langsam (少し遅く)
私はシューベルトの水の表現が好きです。この曲ではピアノの右手はずっと16分音符でミソミソミソ.....と、小川が流れる様子を表していますが、日本語で言えば「春の小川はさらさらいくよ」のさらさら、というところでしょう。泉から流れ出す、水量の少ない、でも澄んだ水がその音とともに目に浮かびます。
主和音と属和音が主なシンプルで明るい音楽の中にひょいと出てくる短調の響き。「(ルイーゼにつれなくされたぼくは木々や小川に慰めてほしいのに)木々や小川はそのルイーゼに憧れてため息をついているんだ」というところ。この歌詞は2回繰り返されますが、その2回目の最後にまた長調に戻ってきます。そして最後に「ルイーゼ!」と二度繰り返されますが、それはシューベルトが付け加えたもの。ピアニシモでひっそりと。
詩はスイスの貴族、ヨハン・ガウデンツ・フォン・ザーリス=ゼーヴィス(1762-1834)。日本のWikipediaには載っていませんでしだが、英語版によると、自然や祖国についての詩が多いそう。この詩を見ても愛の苦しみ、嘆きというにはあまりにも慎ましやかで美しく、自然の美しさに目がいくと言えばいいでしょうか。
こんなにも美しく、しかもソルフェージュ的にもそんなに難しくない曲。もっともっと歌われたらいいのに。
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