ドイツ歌曲の話番外編 冬の旅〜無伴奏混声合唱版 #1
冬の旅といえばシューベルトがミュラーの連作詩に作曲した24曲からなる歌曲集ですが、これから書く「冬の旅」とは、プロのアカペラ室内合唱団であるThe TARO Singersが千原英喜氏に委嘱し発表した無伴奏混声合唱曲に編曲された「冬の旅」のことです。(2010年6月27日、大阪のいずみホールにて初演)オリジナルのシューベルトの冬の旅の概要についてはWikipediaなどでお読みいただければと思います。
再演まで1ヶ月を切った今、この作品についてコンサートマスター、またアルトパートの歌い手として書いてみたいと思います。
冬の旅の編曲を千原氏に頼もうと思う、と、The TARO Singersの主宰であり指揮者の里井宏次から聞かされたのは2009年のいつだったか。冬の旅ですか…? はあ.…と、曖昧な返事しか出来なかった私です。なぜなら想像がつかなかったから。「神聖ニシテ侵スベカラズ」と思ってしまったんですね。当時はHans Zenderの編曲版の存在なども知らなかったし。
https://youtu.be/8ryOYCzpJu0?si=8sYxm5tVTPVzCY2V
私が曖昧な返事をしようとしなかろうと(笑)このプロジェクトは動き出しました。初稿を経て、千原氏は何度も練習会場を訪れ、里井や我々歌い手と意見を交換しながら作り上げていきました。その経験は我々にとっても得難いものとなったのは間違いありません。
この曲集の特徴は、あくまでシューベルトが作曲したメロディー、和声は変えていないということ。ピアノ伴奏の音もほぼ声で再現されています。しかしピアノと声では出来ることと、出来ないことが違います。声は音を伸ばすことが出来る、ピアノは出来ない。声は一人一つの音しか出せない。ピアノは一人で和音が出せるetc.
そして擬音やシュプリヒ・シュティンメなどのいわゆる特殊効果が加わることにより、この歌曲集の主人公である青年の心象風景が描き出されます。
約一年後に全音出版より出版された楽譜のあとがきに千原氏は次のように書いています。
冒涜か否か。リート(ドイツ歌曲)歌いを自認する私は、「好き」だ、とだけ言っておきましょう。アルトパートゆえにほとんどメロディーを歌わせてもらえない、にも関わらずです。
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https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02ab4fpwsg331.html
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