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“女性の視点”があれば女性活躍は進むのか?

制度はあれど…女活、D&Iが進まない?

“mezame”をスタートさせて以来、たくさんの経営層のみなさんや女性活躍推進、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の担当役員のみなさんとお話させていただく機会をちょうだいしています。

すでに多くの企業でさまざまな施策が施され、社内制度もしっかりとしている印象ですが、課題を伺うと、

「推進する人材が社内で育成できない」
「どのように取り組んで良いかわからない」
「取組みが企業全体になかなか浸透しない」

といった発言を、大半の方がなさいます。

パーソルホールディングス株式会社がおこなった「経営・人事がいま取り組むべきテーマ 最新調査レポート2021」によると、ダイバーシティ推進の取り組みができている企業は39%、女性活躍推進は43.5%で、いずれも企業規模が大きいほど取り組みが進んでいるようです。

「ある程度まで取り組みはできている」と回答する超大手企業は約6割、それに準じる大手企業でも約5割になります。
けれど、取り組みに対する懸念点として上位にあげられているのは、まさに私が企業で聞いている上記の声の通りなのです。

男性中心の組織で受け入れられる「女性視点」とは

いわゆる典型的な日本企業では、数少ない女性管理職がお一人、あるいは数名でこれらの施策を担い、孤軍奮闘している印象があります。
「女性の視点から、どんなことをすれば女性活躍につながるか考えてください」――こんなミッションを投げかけられている方も少なくありません。

ですが、女性活躍推進に必要なのは、本当に“女性の視点”だけでいいのでしょうか?

このような経緯で進められている施策には、逆に男性の視点が不足していると私は感じます。皆無の場合もあるといっていいでしょう。
会社によっては、こうしたことについて意見交換すること自体が憚られるといった印象すらあります。

もちろん、女性活躍推進に女性の視点は不可欠です。
しかし大手企業の大半では、男性を中心としたキャリアステップが組み立てられています。女性の視点“だけ”で考えられた施策が、そのまますんなりと受け入れられたり、浸透したりすることはまれ。
「ある程度まではできている」けれど、「そこから先が進まない」「この先を担う人材が育たない」理由がそこにあることは明白です。

また、もうひとつの理由として、社内で話題として取り上げることがタブー視されるテーマばかりが含まれたパンドラの箱だから、という側面も大きいと思います。

例えば、私たちさんぎょうい(株)が提供している“mezame”でもお伝えしている「女性の健康課題とキャリア」の問題。
女性の月経や更年期など、一歩間違えるとハラスメントにもなりうるテーマに対して(仮に、そこをクリアすれば業績も風土も大きく変わる可能性を秘めた課題であっても)男性も女性もどのように切り込んでいけばよいのか、組織によっては誰一人わからないということもあるでしょう。

属性の境目をなくした共通言語とコミュニケーションの道筋作りを

ではどうするのか?

まずは、経営層と担当役員の間で共通の課題と目的を明確にすること。
これは、企業理念にも直結することだと思います。

そして、各階層ごとに必要なリテラシーを学ぶ機会をていねいに与え、全社員の共通認識、共通言語を増やしていくこと。
一見、アナログで時間がかかる方法に見えますが、おかれた立場や状況、価値観が異なる人間同士が集まるなかでひとつの施策を進めるためには、齟齬のないコミュニケーションが成立する道筋を根気強く用意する必要があると考えます。

その姿勢が組織の本気度をメンバーに伝え、風通しの良い新たな企業風土の醸成につながります。
共通の認識(含リテラシー)や属性が違うメンバー同士でも通じる言語を増やし、その垣根を可能な限り低くする。
多様な視点で議論できる場作りにも挑戦する必要があるでしょう。

制度を作ればたいていのことはカバーできていた従来型のやり方を踏襲するだけでは、女性活躍推進も多様性の推進も頭打ちになってしまいます。
他社のグッドプラクティスに学んだり、外部の知見も取り入れながら、御社の女活、D&Iがさらに一歩前進できるといいですね。

■文/芥川 奈津子(あくたがわ・なつこ)
さんぎょうい株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 産業保健協議会 理事

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