テレワーク中の会社でキャリア面談をおこなうと…?【その3 報告・改善編】
新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入した、メザメ・エンジニアリング株式会社。開発第一課では慣れない環境下でメンバーそれぞれがストレスを感じ、第1話では係長の照森さんが、第2話では上司の落合課長が、それぞれの状況と苦しい心情を、キャリアコンサルタント・多聞さんとのオンライン面談で吐露しました。
1週間かけて課のメンバー全員との面談を終えた多聞さんは、依頼元である人事部門にあてた報告書の作成にかかりました。
仕事の大前提として「守秘義務」を持つキャリアコンサルタントは、雇用側と雇用される側との中立を保ちながら、はたしてどのような結果報告を行うのでしょう?
シリーズ最終回の今回は、キャリアコンサルタントを導入検討中の多くの企業がおそらく知りたいと感じているこのテーマについてお伝えします。
組織・チームのリアルを伝えながら
発話者を特定しない公平な報告書
メザメ・エンジニアリング株式会社 開発部面談報告書
(前文省略)
開発部26人(管理職も含む)に面談した中で、次のような事象が起きていることを報告いたします。
《働く環境に起因する問題 》
① 全員が自宅にてテレワークを行なわれていますが、ネットワーク環境が各自さまざまで、接続に問題があると感じている社員は強くストレスを感じている。
② とくに他の家族もいる方は、自宅で仕事をしている際にテレワーク以前には経験しなかったストレスを感じている。
例)配偶者もテレワークをしているため、同じ時間帯にオンライン会議が入ると相手の会議の声が気になる。子供の面倒をどちらも見ることができない など。
③ 会社の就業時間である朝9時から夕方6時が、朝食の片付け、朝のゴミ出し、洗濯、昼食の準備、子供の世話、親の世話、夕食の準備などとぶつかるため、会社の仕事に影響が出ないように家事をこなすのに大変な神経を使っている。
④ そもそも自宅で仕事をすることを想定していないため、座卓で長時間のPC作業をつづけることにより腰痛になった。
《チームワークとコミュニケーションに起因する問題 》
① お互いが見えにくくなったことで、コミュニケーションがスムーズにいかない。
例)相手に声をかけて良いのか神経を使いすぎていると感じる など。
② オンライン会議ではビデオカメラをオフにしているので、お互いの顔の表情が見えず、声だけでニュアンスがつかみにくい。コミュニケーションがうまくいかない原因になっているかもしれない。しかし、「ビデオをオンにしてほしい」と相手に言いにくい。
③ オフィスで働いていた時には気軽に話ができたが、テレワークだとなぜか気軽に話ができない。
④ 以前より管理職が怒ることが増え、チームの雰囲気がギスギスしてきて余裕がなくなってきたように感じる。
⑤景気の急激な減速により会社の業績も悪化していることは理解しているが、会社の状況や今後についての説明がなく、自分たちの仕事についてさまざまなお叱りを受けることに対して理不尽だと感じている。
継続的なキャリア面談の実施は
テレワーク経験を会社の資産にする
メザメ・エンジニアリング株式会社の人事部長は、この報告をもとにキャリアコンサルタント・多聞さんと相談し、対応案をまとめました。
この対応案は5月末の経営会議の議題となり、その場で決定6月15日より実行に移される運びとなりました。 その内容は以下の通り。
① 会社の現況と今後については、社長から全社員向けにオンライン会議で説明を行う。ここでは同時に困難な状況で貢献している全社員に対しての感謝の言葉が表明される予定。
② テレワーク で勤務する社員については、朝9時から夕方6時までの就業時間に拘束されることなく上司と決めたタスクを最も実施しやすい時間でフレキシブルに仕事ができるよう人事的な特例を出す。(詳細は追って発表)
③ 今回のテレワークでの経験を踏まえた就業規則の改訂作業に着手する。
④ テレワークで勤務する社員のネットワーク環境の強化に伴う個人的な支出については適切な金額を会社が補助する。詳細は追って経理本部と情報システム本部から発表がある。
⑤ 全社員を対象としたコミュニケーション研修を実施する。これはテレワークが始まってから、組織の垂直方向、水平方向で起こっているコミュニケーション不全を是正するもので次の研修を実施。
⑥ 管理職向けには「傾聴」スキル研修。部下の話をしっかり聞くところからコミュニケーション不全の改善を図る。
⑦ 非管理職社員にはアサーティブコミュニケーション研修を実施し、相手に敬意を持ちながらも自分の気持ちを伝えることスキルを学んでいただく。
⑧ 全社員に向けて、オンラインコミュニケーション研修で、オンライン会議ツールを上手に使って快適なコミュニケーションをとる方法を学んでいたただく。
⑨ 以上の施策を実施し、3ヵ月後に再度キャリアコンサルタントによる面談を実施し、施策の効果を図る。
メザメ・エンジニアリング、対応が早いですね。
慣れないテレワークで上司も部下もそれぞれにストレスを抱えていましたが、社員の声に耳を傾け、経営会議が迅速に対応を発表してくれたことは、多くのメンバーにとって安心材料になったのではないでしょうか。
このような対応は、働く人々のモチベーションにつながり、結果として労働生産性の向上、従業員の定着にもつながっていくと思います。
メンバーの本音がくみ取れる
キャリアコンサルタント面談
2020年04月17日にパーソル研究所が発表した「緊急事態宣言(7都府県)後のテレワークの実態について、全国2.5万人規模の調査結果を発表」では、突然のテレワーク への移行に戸惑う企業と社員の実態が垣間見られます。
ただ一方で、「生活の満足度が高まった」という回答が増えていること、また回答者の半数以上が「テレワークを続けたい」といったポジティブな受け止めも少なくないことがわかります。
3回に渡ってお読みいただいた「テレワーク中の会社でキャリア面談をおこなうと…?」シリーズ。
新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入した仮想企業・メザメ・エンジニアリング株式会社が、キャリアコンサルタントを導入することで社員の生の声(本音)を集め、そこから浮かび上がった問題点を改善しながら、テレワークを取り入れていこうとする企業の姿を描きました。
現場で働くメンバーは、同僚や上司には正直な気持ちを打ち明けにくい部分がありますが、まったくの第三者には案外本音を話してくれるもの。傾聴スキルと守秘義務をもつキャリアコンサルタントの起用は、こうした役回りには最適ではないでしょうか。
歴史の中で感染症は何度となく現れましたが、人類はそのたびに柔軟に対応し、進化してきました。今回のコロナウィルス による緊急事態宣言とその対応から、さらにより良い働き方を見つけることができればと願っています。
文/東 公成(あずま・きみなり)
国家資格キャリアコンサルタント、DiSC認定トレーナー、プレゼンテーショントレーナー
【編集部からの追伸】
ところでこのメザメ・エンジニアリング株式会社シリーズ、mezame公式noteの執筆陣の間でも人気となり、他のメンバーがそれぞれの専門領域のもと、スピンアウトストーリーを作ってくださっています。
こちらも近日公開予定。どうぞお楽しみに (╹◡╹)!!
キャリアコンサルタントによる
「テレワーク支援サービス」実施中!
はたらく女性の健康とキャリアプログラム「mezame(めざめ)」を提供するさんぎょうい株式会社では、キャリアコンサルタントによるオンライン面談サービスを行っています。
テレワークにおける問題を見える化し、新しい生活様式にふさわしい働き方をいち早くはじめるためにも、ぜひ導入をご検討ください。