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「乳がん検診」を受けましょう!

こんにちは。産業保健師の小林智美です。

例年10月には「ピンクリボンキャンペーン」が行われます。

これは、乳がんについての正しい知識を広め、乳がん検診の早期受診をすすめるための啓蒙キャンペーンです。
コロナウイルスの拡大で、市街地でおこなわれるイベントは中止となりましたが、今年も動画配信やWeb上でのシンポジウムなどが開催されています。

“がん”というと、一般には高齢者に多く見られる病気というイメージがありますが、乳がんは30代後半から急増し、40代~60代までかかる人が多い病気。つまり、働きざかりの女性、子育て真っ最中の女性ほど注意しなければいけない病気です。

乳がんにかかる人は約20年で3倍以上に増加!

最新のがん統計によると、現在の日本女性で乳がんを発症するのは9人に1人(10.6%)。2003年は30人に1人(3.0%)だったので、この20年程度の間に3倍以上も罹患リスクが増えていることになります。

なぜ、日本女性の乳がんはここまで増えてしまったのでしょう?

その理由としてまずあげられるのが、食の欧米化です。

食事で摂取する動物性タンパク質や脂質の増加で、コレステロールの量が増えたことにより、女性ホルモンの分泌も増加(女性ホルモンはコレステロールを材料にして作られます!)
その結果、乳房で細胞増殖が活発になり、がんができやすくなったのです。

また、妊娠経験が少なくなっていることも、乳がんにかかる女性が増えた原因だといわれています。

早期発見のカナメ、「乳がん検診」の受診率は…

ところが、乳がん検診受診率を見てみると、アメリカでは80%程度なのに対し、日本ではその半分の40%程度とかなり低め。

そのせいか、2013年までの20年で、アメリカの乳がん死亡率は36%下がったという報告がある一方、日本では33%も上昇しています。

「ピンクリボンキャンペーン」などの啓発活動がおこなわれているにもかかわらず、なぜ日本女性の乳がん検診受診率は低いままなのでしょう?

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女性ががん検診を受診しない理由は以下の通り。

1位 「がん検診を受ける時間がない」
2位 「健康状態に自信があり必要性を感じない」
3位 「心配なときはいつでも医療期間を受診できる」

*内閣府「がん対策・たばこ対策に関する世論調査」令和元年

「家事育児や仕事で忙しい」もしくは「その両方で手いっぱいな中、さらに受診の時間まで捻出するなんてムリ!」というのはわかります。
日々、忙しく活動的にすごしていると、自覚症状がない限り「自分は健康だもの」「まだ若いんだし」と思ってしまうのもわかります。

いつでも病院を受診できる?
そうですね、「おかしいな?」と思ったら、たいていはすぐに受診できる場所に病院ってありますからね。

でも、思い出してください。
先にもお伝えしたとおり、乳がんは働き盛りの女性、子育て中の女性に多い病気です。
60代までの比較的若い世代でがんを発症すると、進行が早い…という話も聞いたことがありますよね?

「知らない」が残念なケースにつながることも

また、「がん検診を受けない理由」のトップ3ランキング外ではありますが、意外に多いのが「検査にともなう苦痛に不安がある」というもの。
例えば「マンモグラフィーは痛そうだからイヤだなぁ」といった声です。

確かに、マンモグラフィー検査は苦痛がゼロではないかもしれません。
でも、受診時期などを考慮することで、受診時の痛みや苦痛は軽減することもできるんですよ。

そういう情報が十分に知られていないために、命をおびやかす結果につながるケースがいくつもあります。
私もいくつか知っていますが、本当に残念な気持ちになります。

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乳がんになった自分を想像してみると…

私自身も働く女性であり、子育て中の女性です。ですから、乳がん検診を受けにくい状況や気持ちはよくわかります。
でも、それが受診しなくてよい理由にはならないと思うんです。

なぜなら、繰り返しますが、乳がんにかかる確率が高いのは、働き盛りや子育て中の女性。つまり、職場でも家庭でも、さまざまな責任、役割を担っている世代だからです。

想像してみてください。
まだ子育て中の女性が、子どもを残して亡くなる。それは本当に、無念なことでしょう。
残された子どもやご家族も、どんなにつらい思いをすることでしょう。

今や乳がんは、早期発見すれば5年生存率が9割のがんですが、進行した状態で見つかれば、命を取り留めたとしても、これまでと同じような暮らしをするのは難しくなるかもしれません。

仕事でも、今と同じパフォーマンスが再び発揮できるようになるとは限りません。仕事と治療を両立させるために、仕事を変えざるを得なくなるかもしれません。

お金の面だって気になります。
加入している健康保険にもよりますが、治療で仕事を休むことになっても私傷病休職にならなかったり、無事に私傷病手当金が支給されたとしても、その金額は通常収入の3分の2程度になるため、治療費と生活費のやりくりが大きな負担になるかもしれません。

少し考えれば、いろいろと予想できる「乳がんになった自分」。
それが万一、現実になってしまったときに、

「ああ、乳がん検診をちゃんと受けていれば…」

そんな後悔をしてほしくないのです。

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がんに「ならない」ではなく「早期発見」する

がんが発症する原因には生活習慣も考えられますが、遺伝的要素が影響したり、遺伝子の突然変異などでも起きるため、普段の暮らしぶりにかかわらず、誰にでも起こりえる病気だといえます。

ですから、「がんにならない」を目標にするのではなく、がん検診を定期的に受診して「早期発見」「早期治療」することを心がける方が大切です。もちろん、乳がん検診も然りです。

医療の進歩が進む現在、職場にはがん治療をしながら働く従業員が増えていますし、今後もその数は増加していくでしょう。

企業にとっても「治療と仕事の両立支援」は大きなテーマになってきています。病気によって優秀な人材を失う損失が避けられるようになるからです。

がん治療自体も、長期入院から通院治療へ大きくシフトしているため、会社側の工夫とサポートいかんでは、がんと共存しながら働き続けられる可能性は、年々高くなっていくことと思います。

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はたらく人なら持っていてほしい心構え

ただ、労働基準法において「賃金」は、

「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」

と定義されています(労基法第11条)。

つまり、乳がんに罹患した際、私たちはさまざまな補償を受けることができますが、それでも職場からもらえるおかねは本来、“労働の対価”としていただくものなのです。

健康を管理し、常に働ける状態にあるよう努めることは、すべての働く人=ビジネスパーソンとして必要なことであり、マナーです

日頃からきちんとがん検診を受診し、早期にがんを発見できれば、仕事を失う可能性も低く、自身の収入と生活を維持しながら、労働者としての社会的役割も果たすことができます。

「大丈夫。だって友だちも受けてないモン」なんて言っている場合ではありません。「いつかは受けなきゃ」と思いつつ後回しにしているならば、今月ぜひ、がん検診の予約を取ってくださいね。

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*文章中、とくに脚注のないデータについては「国立がん研究センターがん情報サービス」より抜粋しています。

■ 文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガマネージメントコンサルタント叱り方トレーナー


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