尾道での日々②〜坂を縫う〜
7年前の尾道旅を振り返ります。
①はここから読めます。
2017年7月の記録。
「行きたいところある?」
そう聞いてくれたのは先ほどゲストハウスで会った地元の同い年くらいの大学生。私は友人から事前におすすめされていた珈琲店の名前を迷わずあげた。尾道は店じまいが早いらしい。5分遅れで入ることが出来なかった。
それから坂をのぼった。尾道の代名詞でもある坂。
坂を上る、というより縫うようにしてやや急な階段を上っていく。
途中で踊り場のような少しひらけた場所にでると、彼はおもむろに小さな家を指さしてここが行きつけの美容院だ、と言う。お店をやっているようには見えず、ごく普通の家だった。よくよく見ると、小さな看板が申し訳程度に営業時間を伝えていた。
尾道ではこういう雰囲気の佇まいをする店を多くみた。
そして、同じくらいのそんな店をきっと見逃している。
それが尾道にもう一度来たくなる理由だ、あざといね。
山の中腹にいくと、「みはらし亭」という名前のカフェがあった。窓際の特等席に腰かけ、おすすめされたほうじ茶をアイスで飲む。
ああ、なんというしあわせだろうか。
名前の通り、窓からは尾道の街を見晴らすことができた。マジックアワーの刹那的ピンクに染まる遠くの建物。そのもっと遠く先には尾道水道が愁いを帯びていて、その向かいの向島ではライトを点け始めた車が見える。