妻たちの映画。
自分の棚卸をする、と大見得切って始めたそばから映画の話。人の作ったお話や言葉に居場所を見つけようとしてしまうのは昔から。
映画が好きだ。
初めて自分のお金で映画館で観た映画は「タイタニック」、小6の春。
本当はブラピの「セブンイヤーズ・イン・チベット」を友達と観に行こうとしていたのだが、たまたま時間が合わずタイタニックにする。
はい、号泣。
魂が抜けるような衝撃的な原体験。
12歳の初映画が、ヌードありカーセックスあり死体ありの3時間長編ラブロマンスなのだ。私の価値観形成に大きな影響を及ぼすことになる。
ディカプリオの美しさ、潔さと儚さ。
ケイトウィンスレットの強さ、無邪気さ、決められた人生への満ち足りなさ。
脇を囲む人々の人間模様。土壇場で出る本性。
些細な目の動き、諦めの表情の意味。
一番好きなシーンは、ジャックがローズを夜遊びに連れ出す酒場のシーン。
アイリッシュ音楽のテンポに心が躍る。
(この次の瞬間、めちゃくちゃ静かなシーンにすっと切り替わる。文字通り画面に吸い込まれる)
ディカプリオ&ケイトウィンスレットはこの共演がきっかけで大親友となるが、夫婦役で再共演した映画のことはあまり知られていない。
『Revolutinary Road レボリューショナリーロード/燃え尽きるまで』
「タイタニック」が一瞬で着火し終わる運命の愛の打ち上げ花火だとしたら、「レボリューショナリーロード」はじわじわと終わりへと向かう線香花火の様。
いつポトリ、と落ちてしまうか分からないギリギリのラインを少しでも長引かせようと、なんとかできるはずと苦しむ夫婦。
あまりに現実的で辛い。ロマンスの後に長く続くリアル。
今ほど人生の選択肢がない時代設定で、火の様な情熱をもてあます妻エイプリルの息苦しさにひりひりする。
ロマンス後のひりひりするリアルを描いた映画をもう一つ。
『ブルー・バレンタイン』
カップルの出会いから破局まで、愛が終わる痛みを紡いだストーリー。関係が破綻していく描写と入れ替わりに、幸せだった恋愛の始まりが何度も挿入される。鮮やかな対比に胸が詰まる。
近づこうとするたび深まる溝。愛を確かめたいがためにすること全てから、愛がもう無いことを知る。禿げた酔っ払いのライアンゴズリングが切ない。
そして『マリッジ・ストーリー』。
今はなき渋谷のアップリンクで観た。アダムドライバー大好き。
互いにリスペクトのある夫婦が離婚するプロセスを丁寧に描く。お願いだから別れないでほしい、と思ってしまう。
これも辛い。でも必要なプロセスだから向き合うしかない。愛していたことも、未だ少し愛していることにも。その上でもうお互いの存在が必要ではないことにも。
「愛してはいるが、ずっと好きではいられない」
長いトンネルを抜けた終わりは、だけど明るい。
ずいぶん熱がこもって長くなってしまった。
最後にアダムドライバーの大好きな映画を。
変わらない日々が何より大切。
1人でも幸せ、2人だともっと幸せ。
こんな2人になりたいな。