メッツゲライササキの美味しいパートナー:「ランマス」篇。
こんにちは、代表の佐々木です。今日は当店で扱っているチーズの専門店「ランマス」をご紹介します。チーズを美味しく仕上げる上で欠かせない“熟成”の重要性は日本ではあまり知られていませんが、ランマスの代表・富山和亮さんはまさに熟成に注目されています。取り扱うチーズへのこだわりや、メッツゲライササキに手を貸してくださるようになった経緯などをインタビューしました。
チーズを美味しくするための“熟成”という仕事に魅了されて。
―富山さんは元々イタリアンの料理人でいらっしゃいますね。チーズに目覚めたのは現地での修業中だとか?
「はい。イタリアには22歳で渡り、料理人として働いていました。その傍ら食材のことを勉強するため、バルサミコや生ハムを手作りしてみるのと同じようにチーズについて知ろうとチーズ屋さんへ。たまたま受け入れてくれたチーズ屋さんが製造ではなく熟成の会社だったんです。そこで初めて、熟成の工程でチーズのクオリティが上がることを知り、のめり込みました。製造から熟成、販売まで一社で行うお店もあるけれど、精肉店がそうするようにいい生産者を見つけてきて熟成して販売する熟成士もヨーロッパでは珍しくありません」
―それから帰国して自身のお店をオープン。料理よりチーズに希望の光を見出したのですね。
「ヨーロッパの様子を見れば、日本にはいいチーズ屋さんが圧倒的に少ないことは明らかでした。私は20歳の時に『30歳までに自分の店を持とう』と目標を立てていたのですが、自然な流れでチーズ店を開くことに決めました。そしていい物件が見つかったこともあり、ちょうど30歳の2014年に『ランマス』をオープンできたのです」
―どんなチーズを取り扱っているのですか?
「取引しているのは、フランス、イタリア、イギリス、スペインのチーズです。年間150種類くらいを扱っていて、全て熟成士の方から送っていただいています。当店では熟成士の方が仕上げた状態をキープできる環境を整え、販売。簡単そうに聞こえますが、実はとても大変な作業なんです。それぞれの状態を見ながら、適した保管方法を模索しています。たとえばヤギチーズの場合は60gなど小さいものが多いので、特に管理が難しいんですよ。保管するためのチーズルームの中でも、入り口近くと奥、棚の上段と下段、など置く場所によっても状態が変わってきます。カビが生えてしまったときにどういうメンテナンスをすべきなのかも、そのときによって違うんですよ」
適切なケアで、美味しさが復活することも。
―それには知識と経験が必要ですね。
「まさに。私はイタリアで修業させてもらったお店のほかにもいろんなお店を回って見学しました。熟成士の作業って、様子を見てチーズを反転させたり移動させたりと、テクニカルなことは必要ないのですが“見る力”が大事なんです。だからそれを養うために、レストランに食べに行ってはおいしかった工房にアポイントを取り、見学に行きました。そこでチーズの見方・管理の仕方を教えてもらうのですが、今考えればお店を持つ前だったのによく信用してくれたなと思います。みなさんに優しくしてもらいました」
―私たちもハム・ソーセージをドイツ流の作り方に近づけるために努力しているのですが、環境が違う分苦労もあります。チーズの管理の場合はどうですか?
「そうですね。チーズも同じです。環境の違う日本でヨーロッパのやり方を真似してもうまくいかないので、常に模索しています。チーズの管理で面白いのが、一回悪くなってしまったものもきちんとケアすれば美味しい状態に戻るんです。ヨーロッパだと『チーズは生きもの』と言われるほど。チーズのコンディションは大体見た目に現れます。たとえばコンテチーズは乾きすぎてもダメだし蒸れていてもNG。見た目でわからない場合も、少し触ればわかります。体調が悪いと顔色が悪くなるという、人間と一緒ですね。美味しいチーズは美味しそうな表情をしています」
ヨーロッパに引けを取らないメッツゲライササキのアイテム。
―そんな中、メッツゲライササキとも出会いがありました。
2019年に三軒茶屋に移転したとき、スイスワインのインポーターさん伝いで知り合いました。正直、うちはヨーロッパ食材をテーマにしているので国産のものはあまり使いたくないな、と思っていたのですが、初めて佐々木さんと会うときに福田さんのパテ・クルートを持ってきてくださったんですよ。まず作っていること自体すごいなと思ったのと、クオリティの高さにも驚きました。『六本木のお店で売れると思うので、ぜひ卸してください』とお願いしたんです」
―嬉しいです。
「結構いろいろと食べてきたので味にはうるさいのですが、とても美味しかったです。あの時は真空して持ってきてくださったので店頭の量り売りスタイルとは違うと思いますが、それでも美味しかったです。まず見た目が美しいじゃないですか。中に勾玉の形で鴨肉が入っているのですが、こんなに綺麗に入っているのは見たことがない。芸術的だなと思います。メッツゲライササキと同じようにうちでも切り売りで販売できたらいいな、と思い、2週間に1本作ってもらっていたのですが、福田さんも『練習になった』と言ってくださって。福田さんが優勝する前のタイミングでラッキーでしたね(笑)。パテ・クルートのほかにも、コンビーフやジャンボンペルシェなどワインのアテになるものを扱わせてもらっています」
―当店にもチーズを卸してくださっています。とても好評ですよ。
「ありがとうございます。リニューアルオープンのタイミングでお声がけいただきましたね。今は10種類ほど扱っていただいています。できるだけ劣化しないようチーズも切り売りしてくださっていますね」
店づくりやスタッフの育成でも刺激し合う存在。
―富山さんからご覧になって、「メッツゲライササキ」はどんな印象ですか?
「素材と商品にこだわって、無添加でいいものを届けたいというコンセプトをリスペクトしていますし、働くスタッフのやりたいことを優先されている姿も印象的です。みんなのスキルやいい部分を活かしていらっしゃるのが羨ましいです。私も会社を経営する立場なので、見習うところがあります。これだけ大きな会社で好きなことをやらせてあげられるのはすごいなと思います。ブランドを守りつつ、やりたいことをやらせるのは大変なことです」
―「ランマス」でも海外研修や勉強に対するバックアップが充実しているとか。
「『広報の勉強がしたい』というスタッフにはそのための費用を出したり、大きな話ですと、2年以上働いている社員にはヨーロッパでの研修費を会社が負担しています。現地でしか見えないもの、わからないものがあるので、その体験をしてきてもらうと仕事にも生かされるんですよね。スタッフのスキルアップは会社にとってもメリットが大きいですから。私がヨーロッパの人によくしてもらったように、今度は私が若い人たちの手助けをしてあげたいなと思います」
―今後、「ランマス」を営む上での目標はありますか?
「チーズはもちろん、ワインももっと美味しいものを仕入れたいなと思います。今はソムリエ4人が選ぶナチュラルワインと自社ワインを中心に150〜200種のワインを扱っていますが、ナッツやバルサミコなど、ヨーロッパの美味しい食材をもっと日本のお客さんに紹介していきたいです。今は3店舗に広がりましたが、これからは店舗を増やすというよりも、それぞれを充実させていくことを目標にしています。今は年に2〜3回ヨーロッパを視察していますが、将来的には1ヶ月など中・長期での滞在ができたら。現地の視点が身につくのではと思っています」
―そうなれば、「ランマス」もさらに進化しそうですね。楽しみにしています!
「ありがとうございました!」