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自己紹介 1

大学を卒業して社会人になりたての頃、自分はある女性に大変気に入られておりました。この女性は、いわゆる美人でもなく、とり立てて可愛いわけでもないのですが、いかにも明るい、いい顔立ちをしていました。自分は彼女の気に入るように、精一杯の誠意を尽くしたつもりですが、彼女から愛されていると思うたびに、自分は彼女を欺いているような、後ろめたさを感じました。彼女は、自分はあなたに気があるのだ、とたびたび言いました。しかし自分は、それに答える言葉を持っていませんでした。なぜならば自分は、彼女が好きだったのではなく、彼女に好かれない事を怖れていたからです。そんな彼女も、やがて別の男のもとへ行ってしまいました。自分は今年で二十六歳になるはずなのですが、まだ一度も女の人と床を共にしたことがありません。それどころか、女性と付き合ったことさえないのです。自分は女が大嫌いです。なぜといって、女は男と違って、陰険で残酷だからです。自分は子供の時分には、母親によく叱られました。そのせいもあって、女性に対する恐怖感が骨髄にまで浸みこんでしまいました。そうして自分は、母の言いなりに従っていたばかりの子供時代を非常に後悔しています。





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