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お客さんが値段を決めるお店のはなし#3

3度目の正直という言葉がある。
「正直この回で何らかの結果が出ますように」と神様に祈る気持ちでたこ焼きを仕込んで挑みました。

1回目〜2回目は20日くらい間が空いたのだけど
2回目〜3回目は14日くらいのスパンだったので前回の段取りが生々しく残っていたのでめちゃくちゃ頭の中がクリアだった。

持ち物や段取りが洗練されて、やらなければいけない事も考えなくても身体が動く感じ。
この日はヘルプがいなかったのでワンオペでしたが全く不安も何もなかった。(鈍感なだけかもしれません)

3回目のテーマ:FUTURE IS PAST

3回目のテーマは「未来は過去」
「いやいや未来は未来やろ」と突っ込まれそうだけど、未来とはイメージした瞬間に決まってしまう(前回、2回目は上手くいかないと決めた瞬間に未来はすでに決まってしまったので)という気づきからこのテーマにした。
ま、それよりも「たこ焼き屋さんやりてー」っていう未来がすでに過去のものになっている実感から来てるのかも。

では結果見てみましょう。

カオパス3月P/L

相変わらずタコが高い。
おまけに卵まで値上がりしてきていて火の車。
「どんこ」(干し椎茸)が相変わらず高い。(とはいえ買い足してはいない)
2回開店して分かったことは「選べる楽しみ」と思って用意していたハーブ系の塩やハバネロソースは誰も使わない。ソース・マヨネーズ・塩だけでいい感じもする。(ここは滞在体験の改善余地がある)

カオパス3月収支

前回を超えて売り上げは伸びた。
原価率74%がアホなだけ。
原因は初回からのテーマで生産数が少な過ぎて利益が出せる量まで到達できていないことにある。
この日は2リットルしか生地が消化できなかったことが痛い。(4リットル作ってたので2リットルは夕食になってしまった)
数売らないとこの商売は成り立たないってわけ。(逆に数捌けると原価率はギリギリまで下がるはず)

カオパス3月販売実績

リピーターのお客さんがめちゃくちゃ嬉しい

この日の開店時間は11時〜14時。
前回の反省を活かして昼時を跨ぐようにした。
でも11時45分くらいまでは誰も人が来なかったのでドキがムネムネしてました。
一人目のお客さんが入ってきてくれたら立て続けに売れて14時までという流れ。

嬉しかったのは1回目に来てくださったお客さんが「美味しかったのよ〜いつやってるのかと思って買いに来たわ」とリピーターになってくださったこと。
これ想像以上にめちゃくちゃ嬉しい出来事ですね。
たこ焼きの味に共感してくれて買いに来てくれるなんて、こんなに嬉しいことはないな。

おばちゃん達の憩いの場

この日はおばちゃん(おばあちゃん)が一人で入店されることが多かった。
食べていかれる人ばかりだったので、それとなくお話が弾む。
話を聞いていると色々な背景があるもんだ

「骨折をしてから外出がなかなか出来ない」
「唯一の楽しみは銭湯に行くこと」
「腸の調子が悪いのよ」
「テレビ見てても話し相手にはならない」
「若い子が多いところはちょっと苦手」
「姑との姑との上手い関係の気づき方」
などなど

売上の放棄と顧客体験へのコミット

色々はお話を聞かせていただいた。
話を聞いてる途中で気がついたのは
「これ普通のお店だったら話を適当に切り上げたいとなるんだろうな」
ということ。
都合のいいことにカオパスは売上を(ある意味)放棄している。
いや、むしろここでのカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)が売上に何らかの影響があるとなんとなく知ってる。
これがポイントだけど、あくまで打算的な感じではなく影響は感じながらも売上への固執を放棄しているというバランスかな。

饒舌に語り始めたおばあちゃん

売上というより体験に重心を置いている。
だから延々と話を聞いていたい。
お腹も心も満たされて帰ってもらえるのが一番だ。
という感覚。
話を聞いていると更なる関心が湧く。
関心が湧くとついつい質問をしてしまう。
このループが延々とつづく。
お客さんが「あら。話し過ぎちゃって商売の邪魔になるわね」と言い出すまで。
言い出さなかったら、どうぞ気の済むまでいてください(手伝ってもらうかもですが)

とても印象的なお客さんが居た。
旦那さんにも先立たれてしまい、外出先で骨折してからお子さんから外出を制限されているおばあちゃんだ。
初め入店された時は窓際に座って外をずっと見ながら会話をしていた。
色々なお話を聞きながら
おばあちゃんの外出ルーティンの話になった時、「話し相手のいる場所」がお気に入りだということがわかった。
「じゃアレですね、今度このお店来たらなんでもいいんで手伝ってくださいよ、話し相手でも皿洗いでも、ただ座ってお話ししてるだけでも」
何となく「必要とされる場所があるといいな」と感じたからだ。

すると、それまで窓の外を見て話していたおばあちゃんがこちらを向いて
「お手伝いするんだったら、ちゃんとしないとね。コーヒーとかおいた方がいいわよ、せめて水くらい置きなさいよ」と饒舌に語り始めた。

「誰もが必要とされる場所」というプラットフォーム

カオパスを実験的に始めて3回目だけれど
ようやくこのお店の持つポテンシャルに少し気がつけたかもしれない。
今日体験したおばあちゃんは僕らにとって「未来」であり、おばあちゃんにとっては「過去」だったのだろう。
今、その「過去」を変える(商売の新しい形として)ことで僕らの「未来」も変わるという確信が持てた。
だから今回のテーマは”FUTURE IS PAST”だったのか俺天才。

カオパスの「値段をお客さんに決めてもらう」というのはある意味アイコンのようなもので、実はもっと可能性を秘めている。
売上目標達成は目指すべきだ。(持続しなければいけないので)
しかしそこに到達するプロセスは恐らくビジネスモデルの奇抜さがいい影響を与えている。
3回目にしてリピーターさんの存在やこの日出会ったユニークなお客さん達とこのお店を作り上げていきたいイメージの解像度がめちゃくちゃ上がった。

と言いつつ4月からはスケジュールが読めなくなってしまったので一旦白紙にしている。
でも、めちゃくちゃお客さんと触れ合いたい衝動に駆られている自分が間違いなくここにいる。


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