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84歳寅年京子ばあちゃんの老いるを楽しむを書き留めてみる その十六

長女がお嫁に行った年、次女はやしきたかじんさんの事務所に在籍、長男は中学三年生になりました。長男は中2の時、やしきさんが箕面市に建てた一軒家の新築パーティに誘ってもらって、参加しました。その時、やしきさんから「俺の母校の桃山学院高校に行け」と言われ、それがどんな学校かも知らないまま、「はい」と応えたようです。全く想定外でしたが、誰かが決めてくれるというのは楽だし、信頼している人の母校だというだけで、なぜだかそれも悪くないと思えるから不思議です。桃山学院はキリスト教の学校で教会がありました。落ち着いて考えてみると、私の実家のお墓は日蓮宗、河野の家は浄土宗、娘たちが通った相愛は親鸞上人の浄土真宗、この宗教観のなさというか、おおらかさというか…宗教で争う国もある中、全く宗教など意識しない気楽な国で良かったと思いました。

改めて、桃山学院を調べてみますと、「ピン校」と軽く呼ばれている割にはレベルが高くて驚きました。そういえば、やしきさんは新聞記者になりたかったそうで、歴史や文学も好きで、何か一つ気になることがあると、徹底的に勉強するようなところがあると言っていました。

いよいよ息子が3年生になって、最初の実力テストがありました。結果は100番。当時は一学年10クラスで400人くらいでしたので、中の上な感じではありますが、これではピン校は難しい。成績を上げるため、試しに「次の実力テストで学年順位が今回より一つでも上がったら1000円あげる」と言ってみました。すると、早速2回目で急激にアップし、最終的にはなんと400人中6番まで上がったのです。わかりやすい子でした。そうなると他の学校にも行ける可能性がありましたが、そこは、親分のたかじんさんの言葉に一途に従い、専願で受験し、見事合格。晴れて桃山学院高校に入学して、親分も喜んでくれました。

当時のピン校は制服がなく、私服で通っていました。ある日、私が買物に出て、南海線の難波駅の長いエスカレーターを降りていると、下から上がってくるエレベーターから、すれ違いざまに「よう!」と声を掛けられ、振り返ると息子でした。平日の午前中。学校にいるはずですが、私服なので違和感なく街中に溶け込んでいて、悪びれることなく親に挨拶。呆れました。また、ある時は、「校内でタバコを吸っていた」と学校から呼び出され、校長先生から注意されました。そういえば、小学校の時にも友達とふざけていたら相手がけがをして、相手の家に夫と二人で謝りに行ったこともありました。夫は子供たちのことで頭を下げるなんて嫌がるだろうと思っていたら、意外と面白がっていましたね。岸和田の男ですから、自分も歩んできた道で、頭を下げる側になったことがうれしかったのかもしれません(笑)。そんな息子の高校での成績は次女と同じでほとんどが10段階の6。ただ一つ飛びぬけて良かったのは「宗教」で9でした。学校に呼び出される子が宗教で良い成績なのは面白かったです。

息子は欲しいものがあると私にねだりましたので、そのたびに宝くじを買ってあげました。当たったら、好きに使って良いよと。彼が初めて買ったコンサートのチケットはビリージョエルで、ものすごく楽しみにしていたのに、一緒に行くはずだったお友達がいけなくなって、代わりに一緒に行ってくれたのが、当時「ヤングタウン」のパーソナリティだった佐藤良子さんで、息子の初めてのデートの相手はなんと良子さん。たかじんさんといい、良子さんと言い、多感な時期をカッコイイ大人に囲まれて過ごすことができて、親としてはありがたかったです。

そんな高校生活もあっという間に過ぎ、インテリアが好きな息子は、中3の時、勉強するために与えた部屋を自分でリノベーションしていて、インテリアを勉強したいと思っていたようでしたが、当時はまだそういう学科はなく、建築科を志望して、近畿大学に入りました。大学時代も遊びを謳歌し、船舶の免許を取り、ヨットを神戸から東京まで運ぶアルバイトをしたり、ご多分に漏れず、親にうそをついて女の子と旅行に出かけました。ところが、その旅行中、女の子の親御さんから「うちの娘がお宅の息子さんと一緒にいるらしい」と家に電話が入りました。詰めの甘い息子です。すぐにピンと来たので、「いえいえ、うちの子は一緒ではないと思いますよ」とうそをついて事なきを得ました。その時の彼女が今の奥さんなので、まあ良かったですけど。息子には「おかん、さすがや」と褒められました。

うちの場合、長女は女の子の典型、次女は中性で性格的に男の子ならよかったのにと夫と話したことがあり、長男は男の子の典型という感じで、みんな違っていたので、いかに客観的に感情移入せずに見守るかということを親としての自分に課してきた気がします。

そんな息子も今では魚屋。昔と違って世界中が刺身やお寿司の生魚のおいしさに気づいたので、息子のお商売も大変かと思いますが、第一次産業をおろそかにしてはいけません。生きることは食べること。農業や漁業を大事にしない国はダメです。老後はできるだけ日本でお米を作り、魚を獲り、野菜を作る若者を応援したいと思います。

ということで、今日は息子から届いた一番人気があるというギンダラの西京漬をいただきます。

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