見たい景色が、きっとどこかに。
青春18きっぷでの、鈍行列車の旅が好きだ。
僕はいわゆる「乗り鉄」って生き物。大学生の頃から青春18きっぷを使っては、津々浦々を旅してきた。日本国内はほとんど網羅したんじゃなかろうか。
心がハッとするような景色に出会いたい…。それが、僕が旅をするたったひとつの理由だ。
「旅行の醍醐味はご当地グルメだ」などとよく言われるけれど、僕はそれほど興味がないんだ。一人旅ではよく、吉野家やガストなどで簡単に食事をすませることが多かった。
旅をしていると、琴線(きんせん)に触れるような景色に出会うことがある。初めて訪れたのに、まるで昔も来たことがあるかのような、懐かしさをおぼえる景色。
なぜだろう。自然と涙が出そうになる。言葉にできない感情が、内側から次々とあふれ出る。ああ、これだよ、これこれ。これを待っていた。
「マジ、生きてる」
自然と口からこぼれ出る。
この感情を、じっくり、丁寧に噛みしめるため、僕は旅をしているんだな。
また今度、時間ができたら、旅にでようか。
見たい景色が、きっとどこかにあるからさ。