効果的なフラッシュバックの使い方 vol.3
さて、前回はフラッシュバックの役割を学習しました。
今回はその役割をベースにフラッシュバック表現をする上で
でやるべき5つのことを紹介します。
これらはあなたのフラッシュバックが物語にきちんと作用しているかのチェック要綱となります。
1. フラッシュバックの正当性を確認する
フラッシュバックが物語の中で明確な目的を果たしているか確認しましょう。「このフラッシュバックは物語に何を付け加えるのか」と自問してみて下さい。
明確な目的を持たせる
自問しましょう「このフラッシュバックは物語に何を付け加えるか?」
フラッシュバックの価値を確認する
重要な情報を明らかにしているか?
物語を強化しているか?
不必要なフラッシュバックは避ける
目的が不明確な場合は使用を再考する
使ってはいけない場合
物語の弱点を隠す「騙し」として
単なる説明や情報の詰め込みのため
要するに、フラッシュバックは物語を豊かにする強力なツールですが、慎重に使用する必要があります。物語に真の価値を加える場合にのみ使うようにしましょう。
ここで、物語の弱点を隠す「騙し」とは何かを詳しく説明しておきます。
情報の後出し
フラッシュバックは、過去の出来事を後から明かすことができるため、物語の展開に都合の良い情報を後から挿入する手段として使われることがあります。これは「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」のように、突然の解決策を提示するために使われる場合があり、読者や視聴者に理不尽な「騙された」感を与える可能性があります。キャラクターの動機の正当化
キャラクターの行動や決定が不自然に感じられる場合、作者はフラッシュバックを使って後付けで動機を説明しようとすることがあります。これは、キャラクター設定の弱さを隠すための手段となり得ます。プロットの穴の埋め合わせ
物語の展開に矛盾や不自然さがある場合、フラッシュバックを使ってそれを説明しようとすることがあります。これは、本来ならばしっかりと設定されるべきプロットの弱点を隠蔽する手段となる可能性があります。感情操作の道具
フラッシュバックは強力な感情的効果を持つ可能性があるため、物語の弱さを感情的な衝撃で覆い隠すために使われることがあります。これは、本質的な物語の深みや一貫性の欠如を隠すための「騙し」となりかねません。緊張感の人為的な創出
フラッシュバックを使って過去の悲劇的な出来事を示すことで、現在の状況に人為的な緊張感を加えようとすることがあります。これは、本来の物語展開の弱さを隠すための手段となる可能性があります。キャラクター成長の省略
フラッシュバックを使って、キャラクターの成長や変化を一瞬で説明しようとすることがあります。これは、本来ならば丁寧に描かれるべきキャラクターの発展プロセスを省略する「騙し」となる可能性があります。
2. フラッシュバックの境界線をなくす
フラッシュバックへの移行は常にスムーズにする必要があります。
視覚的または聴覚的な合図を使って、移行の合図を観客に与えます。
観客を混乱させるような唐突な移行は避けましょう。
フラッシュバックを効果的に使うためのテクニック
スムーズな移行を心がける 移行を示す合図の例
キャラクターの物思いにふける表情
特徴的な音
マッチカット(視覚的に似たシーンへの切り替え)
物語の構成に組み込む
フラッシュバックを物語全体の構造の一部にする
例:テレビドラマ「LOST」(2004-2010)の場合
島に残された生存者たちの過去を明らかにするためにフラッシュバックを使用
過去のシーンを現在の苦境と関連づけて構成
『LOST』は、フラッシュバックを巧みに使うことで、物語に深みを加え、キャラクターの背景をより効果的に描き、物語にリズムを与えた作品と言えます。適切な移行技術と全体的な構成の中での位置づけが、フラッシュバックの効果を最大限に引き出すカギとなります。
3. フォーマットを分けることで物語中でどこがフラッシュバックかを明確にする
現在のタイムラインとフラッシュバックを明確に区別する必要があります。撮影の際には、ライティング、カラーグレーディング、アスペクト比を変えることでこれができます。
しかし、脚本執筆では、そのようなクリエイティブなカメラワークの自由はありません。そのため、代わりにフォーマット (詳しくは次回説明) を使います。
映画製作の場合: 視覚的な手法の使用例
ライティングの変更
カラーグレーディングの調整
アスペクト比の変更
脚本執筆の場合: 視覚的な手法が使えないため、別の方法を使用
フォーマットの工夫(詳しくは次回説明)
タイトルカードの使用 例:「10年前」「2005年、ニューヨーク」など
脚本でのフラッシュバック表現は、視覚的な要素を使えない分、言葉やフォーマットで時間の変化を明確に示す必要があります。これにより、読み手(そして未来の視聴者)が現在とフラッシュバックを混同することなく、スムーズに物語を追えるようになります。
4. フラッシュバックを簡潔にする
フラッシュバックは短く、要点を押さえたものにする必要があります。メインの物語を邪魔するのではなく、補完するものです。ストーリーのテンポを乱すような長い寄り道は避けましょう。ただし、フラッシュバックがストーリー構成の一部として確立されている場合は除きます。
5. フラッシュバックを現在に繋げる
脚本を書くときは常に視覚的に考えましょう。これは、フラッシュバックを現在と繋げることで行います。現在と過去で起こっている出来事には、テーマ的、感情的、視覚的、またはプロット上の直接的な関連性を持たせるようにしてください。
フラッシュバックを書く際は以上の点をまずじっくり確認して下さい。