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ヨーロッパでの資金集めってどうしてるの? vol.3 スタートラインに立つ2

さて、前回はスタートラインに立つために映画学校が最も近道だと説明しました。

しかし、もちろん例外もあります。
逆にいうとスタートラインにさえ立てば良いのです
どうすれば自分の能力を証明できるのか逆算してみましょう。

1.映画制作の講座に通う
2.助成金に結ぶつく学校、又はメンターシッププログラムに通う
3.短編映画をとる
4.その映画で賞をとる

皆さんはアンナ・ザメツカ(Anna Zamecka)というポーランドの映画監督をご存知でしょうか?

彼女は自身の長編デビュードキュメンタリー作品『祝福』(原題: Komunia)で2016年に注目を集めました。

この作品は世界中の映画祭で受賞し、最終的には米アカデミー賞の最終選考まで勝ち残り、ヨーロッパ映画界の最大の名誉、ヨーロッパ映画賞を受賞するというサクセスストーリーを叶えた人物でもあります。

『祝福』はポーランドの14歳の少女が、アルコール依存症の父親と精神疾患を抱える母親に代わって家庭を切り盛りする姿を描いた作品で、その力強い描写と深い洞察が高く評価されました。

彼女はワルシャワとコペンハーゲンでジャーナリズム、文化人類学、写真を学びました。ジャーナリズムの学びは取材力や物事を批判的に見る目を養い、文化人類学は異文化理解や社会現象の分析力を磨き、写真は視覚的な表現力を高めます。これらの教養は映画を撮る上で大重要な知識にはなりますが、これらは映画制作の技術的な側面や実践的なスキルを直接的に証明するものではありません。

そこで第一歩が

1.映画制作の講座に通う

です。これは一般の人に向けに開催されるワークショップや脚本、映画監督などの講座のことです。日本にもいくつかあると思います。
基本的にはお金を払って定期的に通って映画制作の基本を学びます。
ここで、本格的な短編映画が撮れるかどうかは、そのコースにもよりますが、あまり期待はしない方がいいです。それよりも映画がどのように作られ、どのようにアイディアを実現化させるかのイメージを知る程度と捉えるのが良いでしょう。

ポイントは『脚本家』と『映画監督』のコースをバランスよく学ぶことです。

以前、こちらの記事を書いた際に詳しく説明しましたが、映画は『書く』ことなしでは実現しません。そのため、脚本の書き方は全ての映画文学を準備するための大事な基礎知識になります。脚本は映画の設計図であり、物語の構造、キャラクターの発展、ダイアログの作成など、映画の骨格を形成する重要な要素です。一方、監督のコースでは、脚本を視覚的に解釈し、俳優を指導し、技術スタッフと協力して作品を作り上げる方法を学びます。

さて、映画制作の基本を学んだ後は

2.助成金に結ぶつく学校、又はメンターシッププログラムに通う

です。

ポーランドにあるドキュメンタリープログラム DOC DEVELOPMENT

応募できる条件はプログラムや学校によって違います。映画による高等教育修了者を対象としたものも多いですが、多くは企画によって選ばれます。

1の講座で学んだスキルを使って、企画書を作り応募します。
これらはプログラムごとに最終ゴールがそれぞれ設定されています。

例えば、ポーランドにあるドキュメンタリープログラム
DOC DEVELOPMENTの場合は企画書に当たるパケットのブラッシュアップをしつつ、最終的にピッチ(企画プレゼン)を行いプロデューサーを見つけることを最終目的にします。このプログラムでは、参加者は自身のドキュメンタリー企画を発展させ、業界のプロフェッショナルからフィードバックを受けながら、プロジェクトを洗練させていきます。

また、ポーランドにあるWajda Schoolは一年を通して、若い映画監督のためのプログラムstudio Munkの助成金にアプライするための権利付与の為の教育と企画ブラッシュアップを行います。Wajda Schoolは、故アンジェイ・ワイダ監督が設立した学校で、実践的な映画製作の教育に重点を置いています。

これらの学校やメンターシッププログラムは学びや企画の開発もそうですが、助成金アプライに必要な資格を得る、または資格ある人と出会うための場となります。例えば、ヨーロッパの MEDIA プログラムなどの大規模な助成金制度では、このようなプログラムの修了が応募条件の一つとなっていることがあります。

3.短編映画をとる

映画学校での短編撮影風景

さて、2を経て得た経験で助成金を得たら短編映画を取ります。助成金を得るためにはいくつかの条件があります。もし、あなたが映画大学を出ていない、いわゆる素人に該当する場合は経験豊かなカメラマン、編集マンと組むことで資金提供を得られます。

この時点で、あなたの企画は魅力的であると認められています。ですので、より確実な方法でより良い作品にするために経験あるスタッフが就くことを求められるのです。これはあなた自身にもとても良い経験となります。プロのカメラマンと仕事をすることで、構図や照明の重要性を学び、編集者と協力することで、ストーリーテリングの技術を磨くことができます。自分で希望がない場合は大抵、推薦してもらえるので心配する必要はありません。

4.その映画で賞をとる

在学中に作った水谷作品

さて、その短編はショーレースに勝つことを最大の目的にしましょう。これは映画学校出の人にとってもとても大事なことです。基本的にはあなたが知っている国際的な映画祭、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア、トロント、サンダンス…映画人なら誰でも知っている映画祭で賞を取ることが大事です。

もちろん、短編映画で有名な賞を取るのはあなたの今後のキャリアを"少し手助けする"程度ですが、なるべく高いところを狙いましょう。そうすることによって "あなたが有名映画学校を卒業していないけど魅力的な映画を撮る能力がある"という証明になります。

例えば、ポール・トーマス・アンダーソン監督の 『Cigarettes & Coffee』(短編)は1993年のサンダンス映画祭で上映さたことがきっかけで、その後『ハード・エイト』(1996)で長編デビューしました。

もちろん人によっては、自費でいきなり短編映画を撮って映画祭に送って賞を取られる人たちもいます。

例えば、クリストファー・ノーラン監督は大学では英文学を専攻しましが、自身の短編『Doodlebug』を自費制作し、これが彼のキャリアの出発点となりました。あくまで大事なのは映画をとれる証明をすることなので、どんな道を行くかはあなたの自由です。

映画を作る上で最も大事なのは"この企画を絶対に映画化する"という気持ちと忍耐、そして可能な限り有益な情報やアドバイスを積極的に取り入れ、常に魅力ある企画へと昇華させる粘り強さです。

例えば、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は、この映画のアイデアを7年間温め続け、何度も脚本を書き直しました。その結果、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、アカデミー賞で作品賞を含む4部門を受賞するという快挙を成し遂げました。

ということで、スタートラインに立った後はどうするのか? 次回、解説していきます。その中では、ネットワーキングの重要性や、長編映画への移行、資金調達の方法などについて詳しく説明する予定です。映画製作の道のりは長く険しいものですが、情熱と努力、そして適切な戦略があれば、必ず道は開けるはずです。

おまけ

 映画学校を未卒業で映画監督となった人たちの作品集です。

  1. クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)
    アメリカ出身の監督で、高校中退後、ビデオレンタル店で働きながら映画を独学で学びました。短編『My Best Friend's Birthday』(1987)を制作し、特定の映画祭での受賞は確認できませんが、この作品が彼のキャリアの出発点となりました。その後『レザボア・ドッグス』(1992)で長編デビューしました。 

2.ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)
アメリカ出身の監督で大学では哲学を専攻しました。短編『Bottle Rocket』(1994)は特定の大きな映画祭での受賞は確認できませんが、多くの批評家から高い評価を得ました。、これを長編化した同名作品(1996)で長編デビューしました。この作品は 1994年のサンダンス映画祭で上映されました。

  1. ロバート・ロドリゲス(Robert Rodriguez)
    アメリカ出身の監督で、大学ではフィルム制作を学びましたが、学位は取得していません。短編『Bedhead』(1991)で注目を集め、その後。『エル・マリアッチ』(長編デビュー作)は1993年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞しました。

これらの監督たちは、正規の映画教育を受けていなくても、短編映画制作を通じて自身のビジョンと才能を示し、業界の注目を集めることに成功しました。彼らの経歴は、映画学校の学位がなくても、才能と努力次第で映画監督としてのキャリアを築くことが可能であることを示しています。

ただし、これらの例は比較的珍しいケースであり、多くの成功した映画監督は何らかの形で映画教育を受けているか、業界での経験を積んでいることに注意が必要です。また、映画産業の現状や競争の激しさを考えると、正規の教育や業界でのコネクションが重要な役割を果たすことも多いです。

その為の助成金に結ぶつく学校、メンターシッププログラムの活用ととらえましょう。


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