ヨーロッパでの資金集めってどうしてるの? vol.9 国際共同製作(Co-Pro)
さて、前回ピッチや映画祭でのCo-Proマーケットについて話しました。 そして、ポーランド映画協会から無事に助成金を獲得した流れをご説明しましたが、大事なポイントをもう一つ。
それは強力なCo-Proの存在です。
国際共同製作(Co-Pro)
我々は2019年、ほぼ撮影と同時にある準備をしていました。
それはポーランド最大のドキュメンタリー映画祭である
クラクフ映画祭でのCo-Proマーケット参加です。
このタイミングでの参加は、プロジェクトの成功に大きく貢献しました。
日本の皆さんは聞いたことがない映画祭かもしれません。
しかしクラクフ映画祭は受賞作は長編、短編を含め米オスカーノミネートへの切符を手にする為、ドキュメンタリー、短編アニメーション部門ではかなり重要な映画祭として世界で認識されています。
アカデミー賞(オスカー)の公認映画祭は結構ありますが、大事なのは受賞作品が実際にどのくらいオスカーノミネートされているかが最も大事なポイントなので、映画祭戦略の際はこの点も意識しましょう。
例えば日本だとショートショートフィルムフェスティバル & アジアがアカデミー賞公認映画祭として有名ですが(SSFF & ASIA)推薦で実際にオスカーノミネート作品が出た実績はありません。
(この辺の映画祭の力関係や映画祭戦略に関しては一つのテーマでお話ができそうなぐらい大事な項目です。もし興味があればコメント欄などでご希望いただければ別途記事にしたいと思います。)
さて、話が逸れてしまいましたが、このCo-Proマーケットにて我々は
フィンランドの制作会社と国営テレビYLEというCo-Pro相手と出会うことができました。
ここで大事になるのがLetter of Intentです。日本語では製作の意思表明と訳すことができます。
Letter of Intent
Letter of Intentは、映画製作者が映画プロジェクトを実現する意思を正式に表明する文書です。資金調達のツールとしてかなり重要な役割を与え、実はこれらを集める事も映画祭やピッチ等の付加価値づくりと同時に大事なこととなります。
Letter of Intentは、公的助成金の申請や民間投資家の勧誘において、プロジェクトの信頼性を示す重要な文書となり、ヨーロッパの助成金申請には、Letter of Intentの提出が必須とされています。
国際共同製作(Co-Pro)においては、各国の製作者間でLetter of Intentが交わされます。これにより、プロジェクトへの関与の意思と、役割分担や出資比率などの基本的な合意が確認されます。
またこれらはキャスト・スタッフの確保などにも使用される大事な書類となるのです。
Letter of Intentは法的拘束力のある契約ではありませんが、プロジェクトへの関与の意思を示す重要な文書です。映画界では、Letter of Intentは製作の初期段階から資金調達、キャスティング、進捗管理に至るまで、プロジェクトの実現に不可欠な役割を果たしています。
助成金を得る中でテレビ会社からのLetter of Intentはかなり重要となります。これは次のテレビ局との提携の項目でより詳しく説明しますが、今回はぜひLetter of Intentの重要性について覚えておいてください。
以下、おまけとしてクラクフ映画祭を通してオスカーに繋がった作品例を紹介します。皆さんも将来の実績づくりのプランに組み入れてみてはどうでしょうか?
「イーダ」(2013年) - 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
クラクフ映画祭でFIPRESCI賞を受賞
2015年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞
「The Dress」(2020年)- 監督:タデウシュ・リシンスキ
クラクフ映画祭での受賞:Silver Dragon for Best Short Fiction Film
第94回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネート
「Our Curse」(2013年) - 監督:トマシュ・シリヴィンスキ
クラクフ映画祭でドキュメンタリー部門のSrebrny Lajkonik賞を受賞
2015年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネート
「ヨアンナ」(2013年) - 監督:アネタ・コパチ
クラクフ映画祭で中編ドキュメンタリー最優秀賞(Srebrny Róg賞)を受賞
2015年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネート
「Rabbit à la Berlin」(2009年) - 監督:バルトシュ・コニョプカ、ペテル・ロゼヴィッチ
クラクフ映画祭でゴールデン・ホーン賞(中編・長編ドキュメンタリー部門)を受賞
2010年のアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネート
「Daughter」(2019年) - 監督:ダリア・カシミロヴァ
クラクフ映画祭で学生エチュード部門のSilver Dragon賞を受賞
2020年のアカデミー賞短編アニメーション賞にノミネート
ここで、ポーランド映画が多いのはワールドプレミアのルールが関係しています。基本的に映画のプレミアは制作国はカウントされません。KFFは国内の受賞作の海外プロモーションを担当する部門とワンセットになっているため、特に短編での受賞は重要になります。