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アウトレイジ議員@ゴルフ

推定65歳くらいのおじさんが目の前で狂ったように私に怒鳴っている。これが癇癪というやつかーーーー。

先日、両親とゴルフに行きました。若干ボケている難聴の父親は屋外だとこちらの声はなにも聞こえないし、元気だけど下手くそな母親はいつもテンパりっ放しです。私はそんな両親二人を見ているのが楽しいんですよね。

その日はとても夏日で猛暑だったのですが、ゴルフ場につくと体に触れる山の風は涼しく、最高のレジャー日和の幕開けだ。おぉし!!!!

本日のゴルフ場は、私の大好きな会員制の名門ゴルフ場。父親がバブルの時期にかなり背伸びして会員になった素晴らしいコース。駐車場には高級車ズラリと並び、そのうちの何台かは運転手が主人の帰りを運転席で待っている。

私たちはそんな緊張感のある駐車場で、型落ちの車を目立たない場所を探し、ひっそりと停めるのです。

ラウンド30分前にクラブハウス(ゴルフ場の建物)に到着。以前は1時間前に来てラウンド前にドライバーやアプローチの練習をしたり、パターを打った時のボールの進み具体とかチェックしてたのですが、気づいちゃったんですよね。

今練習したところでスコアになんら影響ない。


そう、私のような下手くそにはね、寸前で練習したところで意味ないんですよ。ジタバタせずに堂々と開き直ってぶっつけ本番でOKです。

ロッカーで着替えてから、カートへ行くと若い女性のキャディさんがテキパキと準備をしていたので、元気よく挨拶を済ませ、「下手糞なのでよろしくお願いします!」と実力と明るいバイブスを伝えたところ、キャディさんは「しっかり面倒見ますよ♪」と答えてくれました。

今日は楽しいラウンドになるなと思いました。その時は―――。

いつだって私たちバカ家族は練習もしないうえに、準備運動もせずにラウンドを始めます。当然、1ホール目のドライバーは軽く振ってもOBです。想定内です。大きな声でキャディさんが「ファー」と叫んでくれます。

父親は飛距離はないものの、そこそこ上手なのでコースの真ん中らへんに落とすのですが、母親はダフって20ヤードくらいしか飛ばず「あぁ~またやっちゃった!」と眉をへの字にして悲しそうな顔をし、キャディさんが内心で放つ「あらあら、、、」という声が聞こえてきます。こんな感じで回るのが私たち家族です。

ちなみに、
ゴルフというのは自分たちのグループはもちろん、自分たちの前ろ後のグループにも気を遣うスポーツです。

打つタイミングが早いと、前のグループの近くに球が落ち、ケガの元または、煽ったカタチになります。これを「打ち込み」と言いご法度です。絶対にやってはいけません。また一方で、ダラダラやっていると後ろのグループやそのまた後ろにまで迷惑がかかります。

そう!
ゴルフは終始周りに気を配る、紳士のスポーツなのです!


そんな流れで、4ホール目。ここで事件が起きるのです。

ちなみに、ゴルフをやる人ならわかると思うのですが、ゴルファーたちを乗せるカートにはモニターが付いており、そのモニターで前のグループがこの先何ヤードにいるか確認しながらゲームを進めます。

しかしこの名門コース、めちゃくちゃ広いのにカートが無いんですよ。なのでキャディーさんの言うことを聞きながらゲームを進めます。

もう少し待ってからドライバーを打つか。そう思っていると、キャディさんが「もう打ってもOKですよ。真ん中の木の左側を狙ってください」そう言われると前のグループが遠くにいるように見えました。

実は私、小柄なのですが、なぜが体の回転だけはパワフルでして、スイングが綺麗に決まると結構遠くまで飛ばしちゃうんですよね。

それじゃあ打つか。ボールを乗せたティーを地面に刺して、肩の力を抜き、、、、ゆっくり振りかぶる、、、、、、頭上でクラブヘッドが止まり、一拍置いてから、腰の回転させ、その回転が上半身に伝わってきたと同時にクラブヘッドをビュンと振り下ろし、

その小さなボールを叩く!!!!

キンッ!!!!!!!

稀に見るいい当たり!

「ん~けっこう飛んだな~~~~、、、、、、、、、、、ん?」

「あれ?キャディーさん!
今の球、打ちこんじゃいましたかね?!?!?」


「いや、大丈夫だと思います!」


ほっとした。なら良かった。私の見間違いか。

その後に、父親が飛距離の無いショットを放ち、また母親がダフって「あぁまたやっちゃった!!」と叫ぶ。


その1分後、

250mくらい先で前のグループの一人がアイアンを振り回して何か叫んでいる。こっちになにか言っている?その刹那、キャディさん走る!女性特有のあの非効率な走り方で走る!(ただし早い!)

やっぱりさっきの打ち込んでたじゃねーか!


謝らねば!!!!!と思いつつも早歩きで向かう。距離が近づくにつれて罵声が大きくなってくる。

会話が出来る距離になる。推定65歳老け顔、身長約175cmの痩せ型、短髪白髪、サングラスのおじさんが、眉間に皺をつくり不動明王のような表情で私たちのキャディを叱責している。
(以下、不動明王)

「何で打たせたんだ!何年キャディやってんだ!!」


そこへ、遅れて真犯人の私が、帽子を取り「すみません〜申し訳なかったです」と少し遅れて登場。

それがいけなかったらしい


「お前か!!!!早く謝りに来いよ!!!!キャディーも悪いけどな、お前も悪いよ!!打ち込んだらすぐに謝りにこいよ!!それがマナーだろ!!!なんで直ぐに謝罪に来ないんだよ!?それについても謝れよ!!!!!お前どれくらいゴルフやってるんだ!?」

不動明王は、ボールが打ち込まれたことに加え、直ぐに謝りに来なかったことにご立腹のようだ。アイアンのヘッドを私に向けて叫ぶ。

彼の後ろには二人の女性が腕を組みながら怪訝そうに私とキャディーを見つめる。確かにすぐに謝りにくベキだった。1000000 vs 0で完膚なきまで私が悪い。本当に申し訳ない。頭を何度も下げて謝るしかない。

「はい!はい!申し訳ないです。ゴルフ歴は5年ほどです。飛びすぎちゃって、、、。」

それがいけなかったらしい


「飛びすぎちゃっただと!?ふざけてんのか!?そうじゃねぇだろう!なんでこのゴルフ場にお前みたいのがいるんだよ!?俺がセカンド打ってたらなココにおちてきたんだよ!ココにぃ!」

飛びすぎという言葉が気に入らなかったらしい。確かに当たってたら大怪我に繋がる可能性もあったし、ちゃんと見ていなかった私の不注意だ。確かにこの神聖なゴルフ場に私みたいな者がいてはいけないかもしれない、、、。なんとかこの方の気分を鎮火させねば!!!!

「ごめんなさい、以後気をつけます。マナーがなっておりませんでした」

それがいけなかったらしい


「そうだよマナーだよ!!!!基本的なマナーも知らずにここに来るなよな!?普通前の人間がセカンド打ち終わってから打つのがマナーだろ!?」

マナーという言葉に反応し、完全に癇癪を起こしている。おっさんになってもこんなに怒られることがあるとは、、、、。とにかく謝る。

「おい、お前名前なんて言うんだ?会員か!?まさか会員じゃねーだろうな!?」

「本当に申し訳ございません。私は会員じゃありません。名前はコジマです。」

「コジマだな!?覚えておくよ!どの会員と来てんだ!?あそこに会員はいるのか?もしかして会員は父親だな?父親は会員か!?」

「はいそうです。」

「父親の名前を言え!」

ん?脅されている?


もしかして、私の父親に何かしようとしているのだろうか?家族に危害を加えるとなると話は別。

そろそろ冷静になってもらおうと思い、謝るのをやめ、不動明王の瞳孔を死んだ魚のような目をして見つめてみました。

不動明王はしばらく何か怒鳴っていたが、目の前にいるのがマネキンということに気づき始め、すこしつづ冷静をとり戻したようでした。そして最後に何か捨て台詞を言って去っていった。建築会社か不動産屋の社長だろうか。(←偏見)その場には私とキャディさんが残されます。

そこで当然こう思うわけです。

全然紳士じゃなかったわ

下を向き元気がなくなってしまったキャディさんに「本当にごめんなさい!僕のせいであとであなたが怒られるハメになってしまった。それだけが申し訳いです」

「大丈夫です。私の責任です。気にしないでください。」と言うが表情はお通夜のように悲しげだ。きっと今日は寝る寸前までさっきのことが引っかかるに違いない。

その直後、マスター室(ゴルフの全ゲームを司るセンター)から男が一人参上し、状況を簡単に説明してくれる。

男がキャディさんに言う、「ちゃんと前のグループを確認してゴーサインを出さないとだめじゃないか。また、お客様にも直ぐ謝りにいくように促さないとだめだよ。⚪︎⚪︎さんかなり怒ってらっしゃるみたいだよ」

そこで男の登場が早すぎるので、なんとなく気づく。

さっきの事件が全スタッフに共有されている!?


私は「申し訳ないです。完全に私のミスです。ゴルフ場に迷惑をかけてすみません」と男に平謝りする。男は「いえいえ、私たちにも責任があります。またあとでね」とキャディさんにも一言伝え去っていく。

キャディさんはすっかりどんよりした空気になってしまった!私は元来の気遣い男なのでこうした空気は耐えられないのである。とりあえずこのキャディーさんを元気にせねば!

現場にいなかった父親は悠長に「はっはっは、打ち込んで怒られちゃったのか。そういう人もいるんだよ。俺もやったことあるよ」などと言う。確かにコイツが父親でよかった。母親は「打ち込みってなあに?」といまだにルールを理解していない。

キャディーさん曰く、最近よく不動明王に付いていたらしく、今日の姿をみて驚いているとのこと。そして不動明王はこのゴルフ場の理事も務めており当ゴルフ場の一部統括も担っているうえ、議員らしい。

え!?さっきのクソジジイ議員なの!?
(以下、クソジジイ)


オイオイオイ!あんな自分の感情もろくにコントロールできない、エクストリーム老害サイコパスが議員を務めているのか!この国の未来は大丈夫なのか!?しかも、このゴルフ場の理事ってことはうちの親父に危害加えないだろうな?(元はと言えば私の前方不注意が悪いんだろ!!!!)

ハーフが終わりクラブハウスに向かう途中「あ〜レストランでまたクソジジイと遭遇するわ〜気まずいわ〜」と思いながら歩く。

クラブハウスに到着すると、マスター室の前に4名(スタッフ3名と副支配人)が立っており、「本日はうちのキャディーが申し訳ございませんでした」と私たちに謝罪する。「いえいえ!彼女は一切悪く無いです、打った私の前方不注意なので彼女を責めないでください!」と伝えると、

「⚪︎⚪︎さまは今レストランにいらっしゃいますので、お手数なのですが今一度謝罪をして頂きますよう、お願いします」

それが言いたかったのね(笑)


もう十分謝った気がするし、お客に、あのお客様に謝って下さいというのもなんとも不自然な現象だが、火種が残らぬよう、完全に鎮火させろと言うことか。致し方ない。世の中は全て権力で成り立っている、私のような底辺は従わなければならん。

ここで思った。

すげえな議員って。


私は「承知しました。きっちり謝罪しておきます」と伝え。腹を決めた。「謝ってやるぜ!!!!」と。ゴルフ場に迷惑をかけてしまったのは間違いない。きっとこの後キャディさんも説教されるのが伝わってくる。

正直あのクソジジイにはこれ以上屈したくなかったが、一興打つか。

いた。見つけた。

近くを歩く人が挨拶している。それに対しクソジジイはまるで菩薩のような笑顔と声色で「今日は最高のゴルフ日和ですねえ。」なんて言っているのを見て、

コイツは本物なんだなと思った。


クソジジイに近づき、腰を45度曲げて「先ほどは大変なことをしてしまい、申し訳ございませんでした」と改めて謝罪する。

「はい。はい。」と私を絶対に視界に入れることはなく、まるであっちへ行けと言うように飛んでる虫を祓うようにし、3秒で終わった。

なんて嫌なやつなんだ(笑)


とは言えよかった。また癇癪おこされると思ったが何も起こらずよかった。

そこで思った。素人の私が議員に怒鳴られるなんてお金を払ってでも出来る体験では無い。あれは素晴らしいエンターテイメントだったのだ!

席に着くとトイレを済ませてきた親父が来た、「もう謝ったのか?俺も謝ってくるよ。」

「え、いいよ。もう十分謝ったし済んだよ。もういいって。」

「息子の面倒を見るのが父親の役目だろうよ。それに俺もまたこのゴルフ場に来づらくなるの嫌だしよ」と言ってゆっくりと席を立つ。

すまん親父、申し訳なくて直視できん、すると遠くの席から聞こえてくる。

「はい?なんのことですか?息子さんのこと?」


ちがう!!!

親父!そいつじゃない!似てるけど違う!


もういいって!


昼食後、後半が始まり数ホール回っていると、急な雨になり、雷が鳴り始めた。避雷針の小屋に逃げましょうとなり、しばらく待ったが雷は強くなる一方で、そのまま全ホールのゲームが途中で中止になった。

午後も雷を落とされるとは。

まあそんな日もあるさ!怒鳴られるってこうしてネタになるからいいかもしれないと気づいた日だった。

END









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