気象大学校の受験方法

前回は気象大学校の概要について紹介した。

前回の記事「気象大学校の概要」はコチラ

その中で、気象大学校は一般の大学とは違い、気象庁の施設であること、入学=気象庁職員採用であることについても触れた。
今回は気象大学校に興味を持っていただいた中高生、受験生の方に一般の大学受験とは違う気象大学校の受験方法について説明することとする。

なお、本記事は令和4年度の情報に基づいて記述している。受験生の方は必ず最新の情報を確認すること。令和5年度受験案内は6月14日(木)に人事院HPに掲載予定であるので、今年受験を希望する方はHPにて最新の情報を確認して欲しい。

国家公務員「気象大学校学生採用試験」

気象大学校への入学は気象庁職員として採用されるということであり、入学のための試験の正式名称も「気象大学校学生採用試験」となっている。

前回の記事でも述べたように、気象庁職員の教育機関であることから、気象大学校卒業後は、気象庁で働くことが前提となっている。
募集要項には「職務内容」として、その点が明確に記載がされている。

職務内容

気象大学校は気象庁の幹部候補生を養成するための機関であり、気象大学校学生は気象に関する専門的知識、技術などについて気象大学校で4年間の教育を受けたのち、気象庁本庁又は全国各地の気象台などに配属され、観測、調査、予報及び研究などの気象業務に従事します。

人事院HPより

受験資格

気象大学校受験にあたって、まず注意が必要なのは受験資格である。
高校3年生で翌年3月に卒業見込みの人、高校卒業後2年が経過していない人(いわゆる2浪まで)しか受験できない。
したがって、他大学卒業後、気象大学校に入り直したい、社会人となった人が気象大学校に入り直したいというという場合は、この条件に合わない可能性が出てくる。
ただし、あくまでも令和4年までの受験資格なので、今後、募集要項が変更となる可能性もないとはいえず、最新の受験資格は確認していただきたい。

採用予定数

気象大学校は学校全体の定員が60名となっていることから、単純に4学年で割ると1学年15名となる。しかし、実際には学年ごとに学生数がバラバラであり、中退や留年等があったり、令和4年度(令和5年4月1日採用)のように入学辞退者が多く採用人数が定員を下回ることもあることから、実際の採用予定数は年によって異なる。

定員60名が在籍している場合は、その年の4年生が全員無事に卒業できると想定して凡その採用予定数はわかるということにはなるが、あくまでも見込みである。例年、6月に出される募集要項では「採用予定数 約〇名」とされており、最終的な数は確定されていない。
なお、確定の採用予定数は1月の最終合格者発表時に判明する。

試験日程

試験日程も一般の大学受験とは大きく異なっているので注意が必要である。令和4年度を参考に下記に日程を記す。

  • 受付期間       8月下旬~9月上旬(インターネット受付)

  • 第1次試験日(学力) 10月下旬

  • 第1次試験合格発表  12月上旬

  • 第2次試験日(面接) 12月中旬

  • 最終合格者発表    1月中旬

一般の大学受験よりも試験日がかなり早めなので、併願が可能である。東大・京大をはじめとした旧帝大と併願する人はかなり多い印象だ。
ただし、後述のとおり、第1次試験は10月末であるが高校全範囲から出題されるため、特に公立高校で物理の授業が遅い学校の人などは自力で全範囲を勉強しておく必要があるので注意が必要である。

試験地

国家公務員試験であり試験は気象大学校ではなく、全国の各地方の都市での受験が可能である。地方在住の受験生にとってはありがたい。第1次試験の試験地はインターネットでの試験申込時に選択する。
参考までに令和4年度の試験地を紹介しておく。(実際の受験にあたっては最新の募集要項を参考すること)

【第1次試験地】※筆記試験
札幌市、仙台市、東京都、新潟市、名古屋市、大阪市、広島市、高松市、福岡市、鹿児島市、那覇市
【第2次試験地】※面接・健康診断
札幌市、仙台市、東京都、大阪市、福岡市、那覇市

受験費用

気象大学校学生採用試験は受験費用は無料である。無料、地方でも受験できることに加えて、一般の大学と試験日程も被らないことから、東大・京大志望者が力試しを兼ねて受験しているとの話も良く聞かれる。

第1次試験内容

第1次試験では「基礎能力試験(多肢選択式)」「学科試験(多肢選択式」「学科試験(記述式)」「作文試験」が行われる。
(ただし、「作文試験」については、第1次試験の合否判定には利用されず、最終合格者判定での合否判定に利用されるとのこと)

気象大学校の試験内容が一般の大学と大きく違うのは、「基礎能力試験(多肢選択式)」があることである。これは文章理解力や数的処理能力のほか、自然科学から地歴公民までの一般教養問題が出題される。公務員試験としては一般的な試験であるが、一般の大学受験には出ないタイプの問題である。特に理系特化型の受験生で文系科目が苦手な人は要注意である。しかも、配点は全体の25%を占めているので、当然、合否にも影響する試験科目となっている。基準点は満点の30%とされ、それを下回ると他の試験の点数に関わらず不合格となる。

一方で「学科試験(多肢選択式)」は、共通テストなど、いわゆるマークシート試験である。科目も数学、物理、英語の3科目であるので、一般の受験生が共通テスト対策で勉強を進めていれば十分対応が可能である。こちらも配点は全体の25%であるので、しっかりと得点を積み上げておきたい。基準点は16点とされ、それを下回ると他の試験の点数に関わらず不合格となる。

そして「学科試験(記述式)」である。科目は「数学」「物理」「英語」の3科目であるが、難易度は旧帝大以上だと考えて良い。配点は3教科合計で全体の50%、つまり、各教科16.6%となる。各教科16%なので、苦手科目があっても他でカバーできるかというと、それぞれの教科に基準点が設定されて、1科目でもそれを下回ると不合格になる。

「作文試験」については、1次試験の合否には関係ないが、最終合格者の判定には利用されるので、小論文等の基本的なルール、文章構成力は身に着けたうえで受験する方が良いだろう。

2022年度募集要項

気象大学校の試験は「学科試験」では選択式・記述式ともに「数学」「物理」「英語」の3教科のみであるので、一見、理系特化型の受験生が有利に思えるのだが、「基礎能力試験」において国語能力、地歴公民など文系科目の能力が問われるので、バランスのとれた学力を見に付けておく必要がある。

第1次試験合格発表

第1次試験の合否は12月上旬に発表(インターネットにて確認)される。第1次試験合格者数は年によってバラつきがあるが、近年では採用予定人数の3倍ぐらいとなっているようである。
合格発表の1週間後には第2次試験が行われるので注意が必要だ。
個別面接で使われる面接カードの作成が必要であること、1次試験よりも試験地が少ないため、地方からの受験者は前泊のためのホテル予約等も必要であることから、心の準備をして段取りよく、面接会場入りできるようにしておくと良いだろう。面接の経験がない人、自信がない人は、面接カードを記入したうえで、学校で模擬面接をやってもらえると良いかもしれない。

第2次試験内容

第2次試験では「人物試験(個別面接)」「身体検査」が行われる。
個別面接では、当日、事前に書いておいた面接カードを提出するのであるが、その面接カードに書かれている内容に沿って面接官から質問されることが多い。受験者の話を聞く限り、面接は和やかな雰囲気で行われるようである。
一点注意が必要なのは、単独の試験項目としては書かれていないが「第2次試験の際、人物試験の参考とするため、性格検査を行います。」との記載があり、実際に当日、性格検査(マーク)が実施される。結果がわからず、どの程度、合否に影響するかもわからない。なかなか対策方法がないが、受験者はそのような検査があることは、頭に入れておくと良いだろう。
身体検査は普通の健康診断のような感じであり、健康上の大きな疾患がなければ問題はないだろう。

第2次試験では面接に時間がかかることから、面接順が遅いと丸一日会場にいなければならないので、一般大学の受験も行う人は参考書などを持って行くとよいだろう。
なお、面接順は第1次試験の順位等ではなくて、おそらく試験地から遠いところに住んでいる受験者から行っているのではないか(帰宅に時間がかかるため)と思われる。

最終合格者発表

気象大学校の最終合格者発表は1月中旬の共通テスト実施後にある。以前はセンター試験(共通テストの前身)前に発表があったようであるが、近年は共通テスト後となっている。
ちょうど共通テストの自己採点が終わり、国立大学二次試験の出願締切までの間にあることから、気象大学校の合否結果によって、国立大学・私立大学の出願戦略を考えることとなる。

最終合格者発表についても注意点がある。

最終合格者発表時に最終的な採用人数が発表されるのであるが、例年、その人数よりも合格者数は多くなっている。
令和4年度採用試験で言えば、採用人数は13名と通知されるが、合格者は29名であった。つまり、辞退者が出ることを想定して多めに合格者を出しているのである。
合格通知には合格者内席次が記載されており、その席次が採用人数以内(2022年度であれば1位~13位)であれば採用内定、採用人数を超える席次は内定者の辞退待ち、いわゆる補欠合格になるということである。

採用内定者には入学意思の確認書類が送付されるが、国立後期試験の合否発表のある3月下旬まで入学するか辞退するかの返答は保留できる。

入学意思確認

前述のとおり、採用内定者には入学意思の確認書類が送付され、他の大学への入学が決まるなどして、辞退の届出が出ると順番に次の席次の合格者に内定が回って行くこととなる。
現実には国立前期受験者が多いことから、3月10日前後の国立前期合格発表後に気象大学校から採用内定者に入学意思の確認の電話があるとのことである。(気象大学校の上位合格者は東大・京大受験者が多いと思われる)
その後、補欠合格者にも順番に連絡が回ってくるのであるが、合格席次が後ろの方だと、国公立後期合格発表の3月25日前後まで内定がわからない場合もあり、最終合格者でもハラハラドキドキすることとなる。

入学手続き

内定通知とともに、入学手続きに必要な書類が気象大学校から送られてくるが、内定がギリギリになった場合、4月1日採用であることから、すぐに書類の準備、入寮の準備をしなければならない。特に入学書類の中に高校の調査書が必要なので、あらかじめ取り寄せておくか、すぐに学校にもらいにいくなど準備をしておくべきであろう。

さて、今回は気象大学校の受験方法について説明した。受験を考えている人は参考にしていただければと思う。ただし、何度も繰り返すようであるが、本記事は令和4年度採用試験に基づいて記載しているので、最新の受験案内、募集要項を必ず確認して欲しい。

次回は気象大学校の難易度についても、簡単に考察してみたい。

「気象大学校の入学難易度」はコチラ


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