5月に読んだ本でよかったやつ
5月に読んだ本でよかったやつを、多少の備忘録とともに書き残しておくやつです。
辻村深月「スロウハイツの神様(下)」
作家やクリエイターの卵が集まるスロウハイツ。
そこに住まう面々の停滞していた時間が、それぞれのキッカケで動き出すさまは読んでいて感慨深いものがありました。
特に、上巻下巻に渡って散りばめられたパズルのピースが、クライマックスで一気に一つの物語として再構成されていくのは読んでいて手が止まらなかったです。
すべてが明らかになった上で振り返ると「そういうことか!」と思わされるくだりもあり、目頭が熱くなりました。
物語としてのおもしろさもあり、クリエイターを志す彼ら彼女らの想いに心揺さぶられる場面もあり、良書でした
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」
「このライトノベルがすごい!」作品部門3連覇を果たし殿堂入りした、ラノベ界2010年代の金字塔。
読んだ印象としては、ものすごく分かりやすくヲタク向けに特化された日常系青春ラブコメ、みたいな感じ。
キャラクターが魅力的で、軽快な会話によるボケツッコミもおもしろい。
個人的にはギャル系な見た目でアホっぽいけどいい子な由比ヶ浜が好き。
平塚先生のキャラクターも好きだったのだけれど、出番が少なかったな……。まあ1冊でまとめるとなると仕方ないか。
このラノで上位を獲るその魅力は知れたので、今後もゆっくり追いかけよう。
宮澤伊織「裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル」
現実世界とは異なる、様々な怪異の潜む“裏世界”に立ち入ることとなった女子たちの物語。
かなりおもしろかった。
作中で主人公たちに襲いかかる“恐怖”がめちゃくちゃ想像しやすく描かれていて、読んでいて何度も背筋がゾッとする思いだった。
それでもホラー展開だけでなく女子ふたりの互いを思い合う気持ちを描いていたりなど、読み応えがあった。
実話怪談・ネットロアを下敷きに書かれた物語は、ほんのりと知っている怪談が登場することも。
ホラーだけどコミカルさもあって、読み物としての完成度がめちゃくちゃ高くて良かった。
植杉光「ニセ記憶喪失の蜂夜さん 第1巻」
一般人の男の子に近づくために、不良少女が記憶喪失のフリをして清楚な女の子にキャラ変する話。
恋するヤンキーの蜂夜さんが可愛い、の一点突破。
蜂夜さんが最初だけ「アタイ」って言ってるけどすぐ「アタシ」になってたりとか、ツイッター漫画みたいな軽い媒体でない漫画本として読むと、多少の粗が無いでもないけど……キャラを楽しむ漫画としては、アリだと思います。ヤンキー女子は可愛いので。
中道裕大「放課後さいころ俱楽部 第12巻」
前半戦はエミーの故郷、ドイツでの幼馴染たちとの物語。
アンナの悪ぶってるけど全然悪くなくて健全で良い子だったオチ可愛すぎるだろう。
……というかアンナとつるんでいた連中、いくらそういう趣味の人たちなんだとしても、見た目がヤンチャすぎてやっぱダメだろ。
そして物語は再び日本に戻って、イメチェンしたカンナにこっそり恋心を抱いていた新キャラ南澤くんが登場。
ボードゲームでつながる恋愛模様は、まだまだ甘酸っぱい展開が続きそう。
駱駝「俺を好きなのはお前だけかよ11」
今回もかなり大きな仕掛けを仕組んできた、繚乱祭編。
再び西木蔦高校にやってきたホースを中心に、ジョーロやパンジーたちの思惑が次々に交錯する。
序盤は読みながらかなりの違和感を感じるし、正直読みやすいとは言いがたいものだったけれど、後半で伏線が回収され始めればやはりおもしろいな……と。
主要キャラクターが増えまくった結果、口絵がなんだかもうお祭り騒ぎなんですが……まあ、文化祭だからいいのかな?
全体が見えないながらも話は順調に前に進んでいて、ジョーロが誰を選ぶのかを含め、ますます先が読めない展開になってきましたね。
川原礫「絶対ナル孤独者5 ―液化者 The Liquidizer―」
ルビーアイ最強の能力者、リキダイザーから取引を持ちかけられ、ミノルは一時的に彼女と共闘をすることに……。
期待してはいたが、やはりおもしろい!
謎めいた敵であるリキダイザーの、バトルシーンのかっこよさはもちろんのこと、ふとした瞬間の微笑ましさや愛らしさ、そして芯の強さなどが描かれ、敵キャラながらかなり好きになってきました。
まだまだミノルと絡む機会も多そうで、敵であるはずなのに「敵か味方か」みたいなところがあってすごく魅力的。
しかし……正ヒロインはたぶんユミコなんだろうが……かなり影が薄く……。
岬鷺宮「三角の距離は限りないゼロ3」
夏休みを一足飛びにすっ飛ばし、物語は文化祭編に突入。
今巻ではかつて矢野に「キャラの作り方」を教えた後輩の女子生徒、霧香が初登場。
ここまでの矢野の歩んできた物語を一気に根っこからひっくり返しかねない、「キャラを作る」という行為について今一度向き合う物語でもありました。
三角関係を描いた物語のターニングポイントともいえる重要なエピソードであり、ここからどう話が展開するのかかなり楽しみになった1冊でした。
春珂と秋玻の入れ替わり時間もかなり短くなってきており、明確に終わりの時に向かっている感覚がありますね。
河野裕「きみの世界に、青が鳴る」
「いなくなれ、群青」から始まった階段島の物語、ここに完結。
長いシリーズの完結編なだけあって、そして長らく七草たちが気にかけてきた大地の幸福を巡る物語であるためにかなり丁寧に描いていた感じです。
そしてこれは七草と、真辺の、成長の物語……。