オタクが山田太郎議員を『絶対に』支持してはいけない理由
山田太郎議員と言えば、かつて児童ポルノ規制法の改定に際し、漫画やアニメが規制対象に加えられるのを阻止したオタクの英雄と認識されている方も多いのではないでしょうか。
ですがそれももう過去の話。自民党に入って、党の中で規制を食い止めるなどと支持者に訴えていた氏でしたが、たしかに直接的な、目に見える形での規制は息を潜めたかもしれません。しかし自民党はすでに別の手段によってオタク文化を弱体化させる方向に舵を切っており、いまやその先導役になっているのが他ならぬ山田議員なのです。
山田議員の「党の中で規制を食い止める」は結局方便でしかありませんでした。ハナからオタク文化を守る気などなく、国会議員の地位、名声、待遇に目がくらみ、オタクの支持を利用して自民党に入っただけでした。そもそも、規制志向の非常に強い自民党に新参者が入って党内で規制を阻止するなんて元々ありえないのです。
すっかり与党の犬に成り下がった山田氏は、いまやオタクカルチャーに牙を剥く最凶のモンスターと化しました。
氏を早急に政界から排除しなければ、オタクカルチャーは大変なことになります。
書籍の軽減税率を葬った山田太郎議員
消費税が8%から10%に引き上げられる際に、出版業界などが書籍への軽減税率適用の要望を出していました。
ところが、山田議員はそんな彼らをあざ笑うかのように、彼らの頭越しに、政権の意向に沿う形で軽減税率の話を潰してしまいました。「書籍に軽減税率を適用すれば、軽減税率が適用される一般書籍と適用外の『有害図書』との仕分けがなされることで表現の萎縮が起こり自主規制が進みかねない」「これは業界による自己検閲だ!」といった屁理屈を並びたてて。
山田氏にはこの時すでに、将来自民党に入って議席を得たいという野心が芽生えていたのではないでしょうか。MANGA議連で接点があり、また当時財務相だった麻生太郎氏など自民党有力議員の覚えをめでたくしておきたいと。
山田氏はこの件に関し、自身の著書『表現の自由の守り方』で、「日本の権力者ナンバー2(菅義偉官房長官、当時)との闘い」「政府与党と全面対決」「大変厳しい戦い」「死に物狂いでやらなければいけないという覚悟で臨んだ」などと綴っておりますが白々しいにもほどがあります。軽減税率を阻止したかったのは、他ならぬ政権与党や財務省なのですから。山田氏は彼らにすべてお膳立てしてもらって軽減税率を潰しただけです(山田氏が阻止の決め手となったとアピールする「租税法律主義」も、官僚によって仕込まれたものです)。
オタクカルチャー側は軽減税率が潰されたことにより多大な被害を被ったわけですが(漫画業界は年間40~50億円を国に吸い上げられることに)、氏の支持者の多くは氏の巧みな弁舌にコロッと騙され、山田氏が強大な規制の脅威から表現の自由を守ったとするホラ話をあっさり信じ込んでしまいました。
規制推進派・自民党のために働こうとも、オタクなどどうとでもなるという意識を山田氏に植え付けてしまった一件のように思います。「オタクちょろい」、と。
メディア芸術ナショナルセンターのやばすぎる中身
政権与党には国立国会図書館がテレビ・ラジオ番組を全て録画・録音して保存するといういわゆる「放送アーカイブ」構想が古くからありました。
それに対し、放送業界をはじめ、コンテンツ業界などは反対してきました。「報道や表現の萎縮につながる」「(ソフト資産等を売ることで成り立っている)民間のコンテンツ事業を脅かしかねない」という2つの理由からです。
山田議員も、当初はデジタルアーカイブを含めたメディア芸術ナショナルセンター(MANGAナショナルセンター)構想に否定的なスタンスだったように思います。
ところが、山田氏はいつの間にか強硬な推進派になっていました。これも自民党に擦り寄ろうという魂胆からでしょう。
表現に対する圧力もですが、より深刻なのはこの政策がコンテンツ事業を根底から破壊しかねないことです。コンテンツ企業がコンテンツデータを管理し、配信会社によってそれらが配信されるなど、すでに市場も形成されており、ここに国が関与する余地などまったくありません。むしろ国が民間の事業を潰すことになるだけです。
コンテンツ企業の持っているコンテンツ資産(知的財産)を国がデジタルアーカイブ(要は徴用)し、利活用(配信等)などを始めたら、コンテンツ企業の事業は成り立たなくなります。
例えば、トヨタが生産したクルマを国が徴用し全世界に貸し出しを始めたら、トヨタの事業は成り立つでしょうか? 山田議員がアニメ産業に対してやろうとしているのはそういうことなのです。
この目論見は、日本共産党が一人踏ん張ってくれたおかげで長らく実現することはありませんでしたが(当初全会派の合意を原則とする議員立法での成立が検討されていました)、業を煮やした自民党と山田氏は、全会派の合意を必ずしも必要としない、国会の多数決で決まってしまう閣法で強行する方向へとシフトさせています。
そんな「MANGAナショナルセンター(メディア芸術ナショナルセンター)」、デジタルアーカイブが必要だとする山田太郎議員の説明がこれなのです。
何を言ってるのかさっぱりわかりません。まあやってることがもともとおかしいのですからまともな説明ができるはずないのです。
野党はこんなガバガバな説明で丸め込まれたのでしょうか。
アニメ文化を殺す山田太郎議員のアニメ産業政策
上記記事は2020年2月のものですが、その後も主張の内容はほとんど変えていないようです。それどころか、最近(2024年6月)政府から出された「新たなクールジャパン戦略」にその内容が色濃く反映されており、氏が政府のクールジャパン戦略策定で中心的役割を担ってきたことを窺わせます。
そして「新たなクールジャパン戦略」には、やはりというか、性懲りもなく前項の「デジタルアーカイブ」「メディア芸術ナショナルセンター」がねじ込まれていました。
コンテンツ業界の『構造改革』でオタクカルチャーはリセットされる
政府の「新たなクールジャパン戦略」では、民間コンテンツ企業に対する改善要求がずらりと並んでいます。
民間の力で築き上げた文化、産業に対し、国がここまで干渉してくるとは、眩暈がします。
企業の経済活動の自由を大幅に侵害してますよね。
日本のオタク文化は、日本のクリエイターが作りたいと思ったものを作り、それがたまたま海外でウケたのであり、海外の売り上げを意識して作ったものではありません。海外で売れるものを作れとか、浅はかとしか言いようがありません。
また、日本のコンテンツ業界も自由な創作環境を維持するために海外資本を入れることには慎重でした。
ある制作会社の社長さんでしたか、ネットフリックスに関し、カネのために仕事は受けるが、虎の子のコンテンツの権利は渡さないのだと言ってました。
政府の「新たなクールジャパン戦略」は、これまでのオタク文化のあり様を全否定し、オタク文化を全く別のもの、経済的利益を上げて国に貢献し、また国威発揚の道具となりうる文化へと作り替えようとしているようにしか見えません。
山田氏は自身の動画番組でたびたび、「世の中を変えることが議員の役目」であると言ってました。昼間氏の記事でも同様のことが触れられてます。
世の中を変える(世の中をひっくり返す)ことが自身の存在価値であるというふうに思い込んでいるような人間がオタクカルチャーに関わってくるのは、非常に怖いことです。
氏は本気でオタク文化をリセットしようとしてるように見えます。
氏が「アニメコンテンツの国によるデジタルアーカイブ化と配信」に異様にこだわるのも、製作委員会システム、深夜アニメビジネスを潰すのが目的の一つのように思われます。実際これまで山田氏は製作委員会に対するネガティブキャンペーンを繰り返しおこなってきました。
コンサルタント業界出身の山田議員の頭の中では、製作委員会システムを排し、業界を再編し資本力を強化、「選択と集中」により、最初から海外市場を意識した作品作りをおこなっていけば、日本のコンテンツ産業はディズニー等海外勢にも負けない産業に生まれ変わることができるのだということなのでしょう。氏にとってオタク文化はもはや自分が党でのし上がるための道具でしかありません。
この「新たなクールジャパン戦略」は、今後国がコンテンツ企業に資本注入して経営権を握るとか、そういったところにまでエスカレートする可能性が十分ありえます。山田議員は「目的のためなら手段を選ばない」人間です(議員立法が無理なら閣法、国会図書館デジタル化予算呑ませるために障碍者を利用etc)。コンテンツ企業の抵抗で氏自身の「計画」が遅々として進まなければ、強硬手段に打って出てくるのは自然な流れです。
山田太郎議員はいま、アニメ業界の構造改革を成し遂げてレジェンドとなる、という野望に燃えているのでしょうが、その氏の野望が叶った時、多彩で豊かなオタク文化は滅び、焼野原、禿げ山と化していることでしょう。
幸いにも(楽観できるほどでもないのですが)デジタルアーカイブは難航しており、次の選挙で山田議員を落選に追い込めれば干渉派勢力の力を削ぐことができ、オタク文化は生き残る希望が持てます。しかし氏に次の6年を与えてしまえばオタク文化がボロボロにされるのは火を見るより明らかです。次の選挙でなんとしてもこの議員「だけ」は絶対に落とさなければなりません。
こども家庭庁はアニメ漫画規制庁
山田議員は子供の虐待やいじめをなくすという名目でこども家庭庁設立のための勉強会を立ち上げました。
しかし、実際出来上がったものは山田議員の当初の説明とはまるで違うものでした。
これを、終盤になって保守勢力が参入してきて乗っ取られてしまった、山田議員の崇高な理想が穢されたと憤る人、氏を擁護する人がいます。
しかしそれは正しくありません。山田議員が勉強会を立ち上げた時点でその方向性はすでに決まっていました。
下村議員といえば、反規制界隈では保守系の表現規制強硬派としてよく知られた人物です。その人物にお伺いを立てに行った時点で、自分にどういう役割が期待されてるのか、山田議員本人も理解していたはずです。というか、実質的に「家庭教育基本法」+「青少年健全育成基本法」であるこども家庭庁を作るという仕事を、党内での自身の評価を高めるために自ら買って出たといったところでしょう。子供の虐待やいじめ問題をおまけとして盛り込んで自分の実績としてアピールできればいい、くらいに考えていたのではないでしょうか。
「子ども第一でやろう」を真に受けるほど山田議員も愚かではないでしょう。
こども家庭庁には、山田太郎議員自身が規制の本丸であるとして以前より警戒を呼び掛けていた青少年健全育成基本法そのものが埋め込まれています。
こども家庭庁はNPOの公金チューチュースキームにもなっていました。こうした団体のいくつかは、単に税金を横領するのみならず、漫画やアニメの法規制も訴えています。そのような団体に養分を与える仕組みを作ったのも山田議員というわけです。
こども家庭庁は日本版DBSを進めてきましたが、性犯罪者のみならず性犯罪の「おそれ」のある人間も排除という方向に拡大しつつあり懸念されています。「青少年健全育成」をも担い有害図書の排除を謳うこども家庭庁が、コミケ参加者を国で登録し、「性犯罪の恐れのある人間」として扱うよう主張し出すのは時間の問題ではないでしょうか。
「表現の自由」というまやかし
山田議員は何かにつけ「表現の自由を守る!」とアピールしますが、そのたびに虚しさを感じます。
そもそも漫画やアニメの規制問題は「表現の自由」の問題ではなくセクシャリティの問題だからです。
仮に表現の自由という側面もあったとしても、「表現の自由」を主張することに意味はありません。なぜなら、表現の自由は基本的な人権として憲法で認められる一方で、関係者間の調整も必要とされるからです。
個々人間で、或いは集団と集団との間で、表現の自由同士がぶつかることがあります。その場合、表現の自由だから何を言ってもいいんだという理屈は成り立たちません。なぜ自分らの表現が尊重されなければならないのかを丁寧に説明する必要があります。
山田議員はこうした努力を怠り、常に「表現の自由」を声高に叫ぶことで、規制推進勢力に付け入るスキをわざわざ与えてきました。まるで規制推進派とマッチポンプしているかのようです。
なぜ山田議員は表現の自由という主張を軌道修正しないのでしょうか? それは「表現の自由」という主張は氏にとって都合がよいからです。特定のセクシャリティ、セクシャルマイノリティの擁護となると自民党と衝突しますが、好ましくない表現を制限したとしても表現の自由を侵したことにならない、ゴールをどこにでも移せるような曖昧な概念である「表現の自由」は、党と摩擦を起こすこともないし、支持者にも、なんとなくそれっぽい反表現規制活動をしているように見せることができるからです。「表現の自由」って何か主張しているようで実は何も主張してないに等しいのです。この議員は漫画アニメ文化を守る活動を妨害しているようなものです。邪魔でしかありません。
「検閲システム」を推進する山田太郎議員
山田氏は「表現の自由」を唱える一方で、メディアへの弾圧を強めています。
次のものは国会決算委員会でのやりとりです。
政治家がメディアの情報をすべてチェックする、つまり検閲がなされてしかるべきと。
ちなみにこの発言はデジタル・アーカイブの文脈で出てきたものです。メディア芸術ナショナルセンターは政治家によるアニメ・コンテンツの内容への干渉が前提となっているということをも示唆しているといえます。
統一教会系のメディアでも検閲のための施設であると明確に書かれています(MANGA議連で共有されている考えでしょう。統一教会系のビューポイントがそれを代弁した)。
ポップカルチャーと児童ポルノ https://vpoint.jp/reporterview/155364.html
思えば、全放送の録画(デジタルアーカイブ)等、これまで自民党政権がやりたくてもなかなか手を出せなかったことを先導しているのだから、山田氏が表現の自由を尊重する議員であるわけないんですよね。
以前高市早苗氏が放送法違反を理由とした電波停止の可能性に言及したとき、山田氏は火消しに走りました。だいぶ前になりますが、すでにそのころからもう山田氏は自民党の反表現自由議員と一体化していたのでしょう。
山田氏はいまや表現弾圧議員の代表格と言えます。
そういえばこの高市氏はクールジャパン担当大臣でもありました。
不倫・買春疑惑は「単なるプライベートの話」ではない
プライベートと議員の仕事は別だと擁護する人がいます。
しかし、とりわけ漫画アニメの擁護を掲げ、二次元(キャラクター表現)と三次元(現実)は別ものであるという主張をしなければならない議員が、鼻の下伸ばし若い女性に夢中になっていては、主張に説得力はなくなるでしょう。こういう議員がいること自体が規制反対運動にとってダメージでしかなく、オタク、反規制派の利益を第一に考えるのであれば、不倫が発覚した時点で潔く議員辞職すべきでした。それなのに、この議員はいまだに議員の座を明け渡そうとしない。それこそがまさにこの議員の不誠実さの表れと言っていいでしょう。オタク、支持者の利益などでなくまず自分の利益が第一。この議員、オタクを舐めきっていますよ。
この議員の、オタクを欺き続ける不誠実さと、家族を裏切る不誠実さはつながっているのだと思います。
なぜ家族をも平気で裏切れるような人間がオタクに対しては誠実であり続けると思う方がいるのでしょうか?
そもそも、不倫の現場が押さえられても当初自分は不倫してないと言い張り、不倫を認めた後も、買春してない、法的措置をとると言いながらその後一切情報を出していません(知る権利は表現の自由の一角です)。
この議員がのさばり続ければ続けるほどオタクカルチャーへのダメージは大きくなります。業界やクリエイター、それにファンが長い時間かけて築き上げてきた文化を、この議員は自らの欲望のために刈り取り自民党規制推進勢力に売り渡そうとしているのです。刈り取られた後には何も残りません。この議員にとってオタク文化とはせいぜい利用して使い潰す程度のものでしかありません。
オタクはオタク文化の置かれた現在の状況を理解すべきです。
今オタクカルチャーは崖っぷちです。
不倫騒動はこの議員を退場させる絶好のチャンスでしたがすでに機を逸してしまった感があります。ですが残りの任期は短く、次の選挙では絶対に落とさなければなりません。