「この作家さんが好き!」と公言する前に把握しておきたい作品の振り幅。
最近ちっとも読書が進まなくて。
せっかく買った本もなかなか読み進まなくて。
「書くのがしんどい」という本を読んでたんだけど、なぜか「読むのもしんどい」と思うようになってしまった。
こういうふうに、読書がぱったりとまることが、3カ月周期くらいでで回ってくる。
多分今はそれ。
しかし、先日久々に書店をのぞいたら、平済みのスペースに
『夜の樹』『冷血』『叶えられた祈り』が置かれていた。
全部、トルーマン・カポーティの作品。
なーんで、こんな私の好きな作家の本ばかりならんでるの???
いつもは書店の本棚の片隅に、背表紙だけを見せて、ただひっそりと眠っているだけなのに。
どちらかというと古典よりの、流行にのらないような本なのに。
いつの間に私好みになったんだ、この書店は。
慌てて手に取ってみると、見慣れない帯が付いていた。
そこにあるのは「映画」「11月ロードショー」の文字。
ええええええ!
映画やるの!!!!!?
と、心の中で絶叫してしまった。
全然知らなかった。
だって、そんなしょっちゅうフューチャーされるような作家じゃないんだもの…。
絶対みにいこう!!!!
とはいえ、実は私。
カポーティ作品を全部読破しているわけではない。
ほぼほぼというか。
今回映画に大きくかかわってくる『叶えられた祈り』はまだ未読。
『冷血』も未読。
そもそも、作品を全部読みました!っていう作家、一人もいない気がする。
不甲斐ないことに…。
特に、カポーティ作品はさくさく読めるものと、そうではないものがあって。
もっというと、読むのにめちゃくちゃ体力がいる暗くて重い内容のものと、心にしみるようなほわっとしたお話がある。
ふり幅が大きい。
綺麗さも汚さも、どちらのバロメーターも両極端に触れる作家だ。
他の作家でも、話の色で同じ作家なのに作品の合う、合わないはあるよね。
アメリカ文学の寵児とされてはいるけれど、性格は品行方正とはいい難い。
変わり者として知られている。
『草の竪琴』『誕生日の子どもたち』『ティファニーで朝食を』は読み返すくらい好きだけど。
『遠い声、遠い部屋』は、ものすごく難しくて。何度も睡眠の谷に落とし込まれ…わからなくなって、同じところを行きつ戻りつ、時に半年くらい放置し、苦し紛れにようやく読み切ったなかなかに手ごわい作品だった。
読破したとはいえ、内容は結局よくわかっていないという…敗北的な読書だった。
というかこれを22歳でかきあげるって一体どういう頭をしてるんだ…
とひっくり返る思いがした。さすがは「恐るべき子ども」の異名をもつ人である。
多分、未読の『冷血』と『叶えられた祈り』は、どちらかというと『遠い声、遠い部屋』の仲間ということはなんとなくわかっていた。
『冷血』は、ノンフィクション・ノベルという新ジャンルを切り開いた作品で、アメリカで起こった一家殺人事件を数年にわたって調査・取材して、苦労の末に完成した作品。
犯人との交流を経て彼にはトラウマが残ってしまったという、本当に闇が深い本。
これは、結構前に執筆過程が映画化されていて、それは鑑賞済み。
だから話はなんとなく分かっている。
とてもよかった!感動もした!から、原作も読みたいと常々思ってはいるんだけど。
重い話なだけに、なかなかタイミングがつかめていない。
『叶えられた祈り』は、彼の晩年の作。
冷血のすぐ後に執筆が開始されたお話ではあるんだけど、実は未完に終わっている。
完成を見ずして、彼は心臓発作で亡くなってしまった。
出版されている物は、物語の一部にすぎない。
やっぱり、映画を観るつもりなら、読まなきゃだよね~。
と思い、嬉しさもあって即日『叶えられた祈り』を買った。
やっと読書熱が戻ってきたかもしれない!
と喜んで読みはじめたのだけども・・・。
内容が、赤裸々というか、なんというか。
読んでて赤面しそうになるくらい官能的?すぎて。うまい言葉が見つからないけど、めちゃくちゃ刺激が強い。
私が知っている話たちとは色が違いすぎて、びっくりしてしまっている…。
予想はしてたけど。
例えるなら、お気に入りのジュースだと思って飲んだら、度数が高いお酒で喉がひどく焼けちゃった感じだ。
めちゃめちゃダーク。
いや、ほんと文章はかっこいいんだけどね(笑)
これはいったいなんの話なんだ、、と思い改めて調べてみたら、上流階級の頽廃を描いた話なのだそう。
社交界の人気者だったカポーティが、当時のセレブリティたちの有様をフィクションを交えながら書いた小説らしい…。
主人公があまりにも本人に似てるし、たまに知っている実名がててくるから、そうではないかなと思っていたけど。
うわー、これ本当にあったことなのか、うわー。
とまた、ショックの雷に襲われてしまった。
叶えられた祈りは、一部だけ書いて出版したところ、親しくしていた著名人たちから、大ヒンシュクを買ってしまい、一気に人気が下落。
カポーティは孤独の海に突き落とされる。
そりゃあ、大声で悪口や、人の秘密をまき散らしているんだから、そうなるよね…。
そうして、精神の安定を欠き、薬物におぼれ、心臓発作でなくなってしまった。
なぜ、そこまでして、名声や人脈を失ってまで、その作品を書かなければならなかったのか。
伝えたかったことはなんだったのか。
ということが、今回の映画では取り上げられるらしい。
うーん。
びっくりしちゃったけど、やっぱり気になる!
ずっとすきな作家さんと言ってきたけど、私、この人の闇の部分については、あまり深堀してこなかったんだなーと、ここに来て気が付いた。
めちゃくちゃでっかい闇があることには、映画でも、いままで読んできたものでも、うすうす気が付いてはいたけれども。
避けてきた作品たちは、大好きだった作品たちとは、顔が全然違う。
もし、「あの子、この作家好きなんだ~読んでみるか」と興味を持ってくれた誰かが、いきなり『叶えられた祈り』を手に取ってしまったら。
私、マジで変わった変なヤツだと思われかねないな…
とちょっと背筋が寒くなってしまった(笑)
別にいいけど、事実そこを見て好きなわけではないからな…。
いや、違うのよ。
私は『誕生日のこどもたち』とか、
『ティファニーで朝食を』がお気にいりで。ふわふわしてて、純粋で泣ける話が好きなんだよって、弁明したくなる。
書いたものすべてを読まずして、「この作家さんが好き!」なんていうべきではないのかもしれない。
~さんの~という本がすき!くらいに狭めておくべきかもしれない。
逆に、誰かが、「この作家さんが好き!」と言っても、どの本のどういうところが好きなのか、着目してあげるべきかもしれない。
でも、なんだかんだ言ってもやっぱり、この人の書くものが好きなので。
11月はとことん闇落ちしてみるのもいいかな…と思う所存です。
先行公開で一足さきに、映画を観た人の感想は、
「この人やっぱりかっこいい」だったので…
わたしもその「やっぱりかっこいい」をつかみに行きたい。