オフィスは「場所」か「空間」か【477/500】
1月2週目となりました。株式会社はこの亀谷です。
年が明けてから怒涛の勢いで働いているので、早くも季節感を失いかけています。きっと今年も気づくとこのまま終わっているのでしょう。
本日は「オフィスとは」的な話で1本書いておきます。
結論からいくと、今、盛んにおこなわれているリモート論争って、結局は、経営者が場所をどう定義づけるのかという問題だと思うのです。
世の流れに流されずに、経営者自身の意思決定によって経営は行われないといけませんね。では、ご興味のある方はご覧ください。
オフィスは「場所」か「空間」か?
私は「株式会社はこ」という、何をやっているか良く分からない会社をやっています。
そこには会社の名前に意味を持たせるのではなく、中身で勝負しようね。
という思いを込めています。
じゃ、広告会社の中身って何なのか?と考えると、それは人であり、人から生まれるアイデアだったりします。
それだったら人がいればいいから、オフィスはいらないよね?
となるのは短絡的な発想で、広告会社がアイデアでジャンプするためには発想の拡大が必要で、そこには多様な考え方の存在というのが大前提で必要です。
ひとりのスーパースターが全てをコントロールできるのあれば良いですが、そこには会社として組織で勝負することを考えたときに、コミュニケーションの分断は最小限に留めた方が良いと考えています。
また、会社で働く人にはレベル差が存在していて、ひとりで出来る人が一人でやっていても下は育ちません。
会社の成長を考えると、近場で仕事を見ること、相談しやすい環境にあることによって、日々の成長にもつながります。
※chatツールの弊害も実はこの辺にもあるけど、それはまた。
上の立場にある人も、一緒に働く人とコミュニケーションを取ることで、仕事への解像度が上がり、さらに自分のやるべきことが見えてきます。
会社はその人が集まる「場所」を提供しています。仕事をするだけの「空間」を提供しているわけではありません。
誰がいるかが分からない仕事をするだけの「空間」はどこにでもありますが、目的を同じくする人が集まる「場所」はどこにでもは作れません。
人はニュータイプになれるのか?
こないだWeekly Ochiaiを見直していて、富野由悠季監督が、自分はニュータイプに挫折してガンダムを作れなくなった的な話をしていました。
ガンダムの世界の中に表れるニュータイプ。
ニュータイプとは、ガンダムの世界では、これまで人類が生きてきた領域よりもはるかに広大な宇宙での環境に合わせて、より遠くにいる相手を見つけられるように拡大した感覚、能力と定義づけられています。
これってまさに今のメタな世界観も同じだと思うわけです。
オフィスは必要か必要ではないか、人はリモートで本当に繋がることができるのか。
この問いはメタに近づけば近づくほど難しくなります。
サービスが明確な会社はそういう意味ではリモート制度は導入しやすいと思っています。なぜなら場所がなくともサービスという戻るべき場所が明確に存在しているからです。
サービスの形がない分野になればなるほどリモート制度は導入しやすいけれど、維持するのが難しいという状況が生まれてきます。それは再度集まるべき場所が不明確だからです。
人の認知能力には限界があります。自由な空間になればなるほど、個人の認知能力に頼る形になるので、耐えられない人は耐えられなくなって自分を見失います。
ガンダムではそこを強化した強化人間なんてものが出てきますが、普通の人では簡単にはニュータイプにはなれないわけです。
帰るべき居場所としてのオフィスを会社は作りだせるのか?
人の認知能力を助けるためには、居場所を作ってあげることが必要になります。
それは個人で言えば「家庭」であり、会社で言えば「オフィス」になると思うのです。
最近「オフィス」を準備して「フリーアドレス」を導入している会社もありますが、これも私的にはそれではオフィスの価値が半減すると思っています。
何故なら人の位置が固定されていないので、空間に意味が生まれない上に、場所を理解するために認知能力に負荷がかかる状態を作りだすからです。
多様性を生み出すという観点からいくと意味がありそうに見えますが、そもそものところで「空間」から「場所」を生み出すためには意味を付加する必要があります。
意味を付加するのは位置です。フリーアドレスは効率を優先して意味を捨てているので、メタ的な位置の規定がなされていない会社が導入しても上手くいくはずがありません。
人は現実を認識しながら生きています。メタ認知は結構な上位概念だと思うのです。
人の脳の認知能力にはキャパシティがあり、リアルであれば使う必要のない場所の把握、人の把握に脳のキャパシティを使ってしまっては本業へ使う部分が減ってしまいます。
同じ場所に集まり、リアルに認識することは、認知負荷を平等に下げる効果が生まれます。
さらに情報伝達スピードも上がるため、普通の人にとっては場所に集まり、作業をすることはとても効率的なことなのです。
同じ場所で仕事をし、時間を過ごし、共通の認識が出来るようになって初めて人は、その組織の中におけるニュータイプに近づけます。
ポイントはこの共通認識の積上げには「時間」と「場所」が必要です。今日明日では出来ないことを理解した時にオフィスという場所の価値はどうなるでしょうか?
この辺の本質の理解なくして、次の時代の効率化を語ることは出来ないと思うので、自分の会社の成熟度に合わせたルールの設計を常に経営者は考えるべきでしょう。
固定化させすぎて多様性を失い停滞した場所にしてしまっては、場所の効果はピークアウトしますが、それを感じたらその時に自由度を付け加える制度設計を工夫をすれば十分です。
オフィスを「空間」にするのも、「場所」にするのも経営者次第。
そう肝に銘じて、新しい働き方について考えながら、今年もいろいろテストをしてみたいと思います。
それでは、皆様、良い週末を!