よく聞かれる「パーパス」と「ビジョン」の違いとは? 組織を動かすエンジン🔥としての言葉が大切
企業理念を開発するお仕事を長年やっているわけですが、昔は普通に「ビジョン・ミッション・バリュー」と言っていたのですよね。そして私が始めたころは「ビジョン」というワードさえ新しくて、「経営理念とは何が違うのですか?」という質問が主流だったのです。時代を感じます、笑
パーパスの台頭
ここ10年くらいでしょうか。「ビジョン」に変わって「パーパス」というワードが主流になりました。DBHRで「パーパス経営」的な号が出てきてから徐々に流行り出した感がありますが、当時は「むむ?何が違うのか?」と結構興味を持っていろいろと調べた記憶があります。
結論から言うと大した違いはないな、新しいワードを出してマーケティング業界が市場賑やかしのためにマーケティングしてるんだな、と思いました。軽く思ったわけではありません。それも結構なことだなという印象です。
ただ、個人的には今でも「ビジョン」や「ミッション」というワードの方が好きです。なぜなら、「あなたのビジョンは何ですか?ミッションは何でしょう?」と言うのに対し、「あなたのパーパスは何ですか?」って味気ないじゃないですか。生きる目的って。
言葉の整理
以前それぞれの位置付けを対外的に説明するために、こんな図を作ったことがありました。
「Value」も使われ方に幅があって、時には顧客向けの「顧客提供価値(Value proposition)」として、時には従業員向けの「価値観」として使われているので、この図では従業員向けを「Credo」として整理しています。
まず、横軸の右側は「社会的意義」を宣言、つまり社会でどんなことを成し遂げたいのかの未来像を提示したものと言えます。
横軸の左側は、その未来像を達成するためにどんなことをしていくかというプロセスの「社内的意義」を示したものと言えます。
さらに、縦軸の上はそれをより「外向き」に広く発信して企業の魅力としていくもの、そして縦軸の下はそれほど声高には言わないけど、「内向き」には従業員の日々の心の拠り所としていくものとなります。
こうして分類すると、自分的にはすっきりしました。また、「PURPOSE」は今まで「MISSION」と呼んでいたものの代替なのだと理解できたのです。
ただ、余談ですがこの「MISSION」の扱いも社会的には幅があり、「VISION」と「MISSION」を入れ替えて使われている企業もあり、それは究極的にはどちらでもいいと思っています。今回の整理で言うと「PURPOSE ≒ MISSION」で、社会での自分の使命や果たす役割、存在目的…そんな感じでしょうか。
いずれにしても、夢や志を掲げましょう、そのために何をするか決めていきましょうということに他なりません。
タイトルにはこだわらずに
ですので、私としては一旦パーパスやバリューなどの言葉をおいて開発を始めるものの、その途中でも、最終成果でもそれほどそれぞれの言葉の位置付けにはこだわりません。
なぜなら、開発の途中でその企業から、もっというと参加メンバーから出てくるオリジナリティある想いや願いが大切であり、それをまとめあげることに意義があると思っているからです。
そして、タイトルは後からつけるくらいでいいと思っており、さらにオリジナルなタイトルを付けちゃえばいいじゃない、と思っている派です。
言葉が多いと浸透しない
この思いは過去を振り返っても、律儀に「ビジョン・ミッション・バリュー」などそれぞれの文章を杓子定規に開発した時は失敗したことが多いという反省からもきています。言葉が多すぎるのと、関係性が複雑で覚えられないのです。
組織を動かすエンジンとしての言葉を
わたしは、企業理念(あえてこう書きます)を開発する時に今一番留意しているのは、「組織を動かすエンジンとしての言葉は何か」の抽出です。この組織を次のステージに持っていってくれるパワーワードは何か、社員のハートを突き動かす言葉は何か、この一言さえ見つかれば、あとはお飾りワードでも大丈夫だと思っています。
逆に言うと、あえて苦言を呈しますが、世の中にはお飾りワード「だけの」企業理念があまりにも多いと思っています。
耳触りの良い、同じ業界の他の会社が掲げても違和感ありませんよね?的な企業理念があまりにも多くてとても残念に思うのです。もっというと、業種さえも感じないことが多いかもしれません。これは合議制になりがちな日本社会の弊害とも言えるもので、気持ちは分かるのですがプロとしては容認してはダメなはずで、私が最も燃えるところかもしれません。
必要なのは綺麗なコピーではなく、組織を奮い立たせる言葉です。そんな言葉の元となる想いをどうやって大きな組織体の中から抽出するのか?は、最も腐心するところでもありますが。
日本史上最高の経営理念体系
最後に、私が日本史上最高の経営理念だと見るたびに感動するソニーの設立趣意書を載せさせていただこうと思います。ビジョンだのパーパスだのそんな言葉はどうでもいい、どんな想いかが大切なんだ!と思わせてくれます。
「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」もう、これだけで良くないですか!涙
会社創立の目的
一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
一、日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
一、戦時中、各方面に非常に進歩したる技術の国民生活内への即時応用
一、諸大学、研究所等の研究成果のうち、最も国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化
一、無線通信機類の日常生活への浸透化、並びに家庭電化の促進
一、戦災通信網の復旧作業に対する積極的参加、並びに必要なる技術の提供
一、新時代にふさわしき優秀ラヂオセットの製作・普及、並びにラヂオサービスの徹底化
一、国民科学知識の実際的啓蒙活動
最後までお読みいただき、ありがとうございました。