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(17)先の話。

 九月二十二日

 朝方の落雷で目が覚めた。
 急いで身支度をして、電車に乗った。電車の中で読む小説は春を生きている。春の風を想像して、胸が高鳴る。
 秋の風が吹くと、クリスマスはどう過ごそうかと考える。春の風が吹くと、夏は誰と海に行こうか。どんな水着を着ようかと考える。いつも数か月先の季節を思って、私は取るに足らないことで思い悩んでいる。
 しかしながら実際にクリスマスになれば今と変わらぬ自分が去年と変わらぬ風に夜を過ごすだろう。
 今年は今と違う自分で、去年より素敵な夜を過ごそう。今日の私は、そう思った。


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