(19)オロナイン
九月二十三日②
痒くないところも、一度搔き始めるとだんだん痒くなってくる。
「痒いところに手が届く」、とは「すみずみの細かいところまで神経が行き届く」という誉め言葉でしばしば使用されるが、痒い所に手が届いてしまう人の中に、かきむしって跡になるまでを想像している人がどれくらいいるだろう。跡になって黒ずんで、しばらく消えなくなったそれを、裸になって見られる時の恥ずかしさまで、誰が想像してくれるんだろう。痒い所に手が届いても、掻きむしらずに軟膏を塗る。これがこの慣用句の続きだと思う。手が届いたからといってむやみに搔きむしる人が、優しいをはき違えた大人がこの世にはたくさんいる。そして、そんな人ばかりではない、ということを言っておきたい。
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