(26)夜明け③
九月二十九日③
靴屋を巡った。ちょっといい靴を買いたい。素敵な靴が素敵なところへ連れて行ってくれるのだから、靴選びは妥協するな的なことを読み人知らずの噂話で耳にしたことがある。
買いたい靴は、ローファーだ。私の中で制服といえばローファーなのだ。色んな靴屋さんを回って、いいなあ、と思うものはいくつかあった。
最後に私が選んだのは、ハルタ(HARUTA)のこげ茶色のローファーだ。艶感があってキラキラして見えた。若干色に濃淡があり、味わい深いところに魅力を感じた。店員さんに試着をお願いして、靴のサイズを検討する。履いた感想は、かたい、だ。足にフィットしない。きつい。それが、逆に良いと思った。皮で出来ているから、自分の足に馴染むまではかたいと感じるが、履いていくうちに馴染んでいくらしい。この靴が私の足に馴染むまでに、私は変わるんだ。この靴に味が出るように、自分も味を出すんだ。そう心に決めた。
新しいネックレス。新しい靴。私の制服(武装)が出来た。