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海外ロックフェス参戦記2

マイヤ

ホテルには10分足らずで着いた。

「今日からお世話になるものですが、アーリーチェックインさせていただくことはできないでしょうか。実は衣類を入れた荷物が無くなってしまい、寒い思いをしています。日本とは10度以上気温差があり、このままでは風邪をひいてしまいます」
「これからチェックアウトが始まるので、お部屋のご用意には時間がかかります。チェックアウトの催促はできませんが、部屋が空けばすぐハウスキーパーに部屋を整えてもらうようにしましょう。お風呂に入って温まるのがいいですよ」


マイヤと名乗ったフロントの女性は少し東欧系のなまりがあり、胸元のネームタグの綴りは英語圏のそれではない。てきぱきと電話で指示をし始める。親切だ。とにかく部屋が空くまでカフェテリアに入って、温かい紅茶を飲むことにした。

フェス関係者だろうか、ストラップでパスを首にかけたグループがテーブルで談笑している。ミルクピッチャーと大きなティーポットが運ばれてきた。サバスやオジーなどベテランバンドのTシャツを着た周囲のメタルファンたちがすまして紅茶を飲んでいて、おかしさとともにイギリスにいる実感が湧いてきた。記念すべき英国紅茶、初めの一杯、このお茶が人生を前向きにしてくれる。

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ipadをいじりながら何杯もポットのお茶を飲んでいると、すっかり体が温まってきた。フロントに様子を窺いに行くこと数回目、マイヤが笑顔で部屋の用意が出来たと教えてくれアーリーチェックイン扱いで部屋に通された。とにかく衣類を手に入れないと、寒くて動くこともできない。一旦荷物を部屋に置き、ホテル内を探索して手を考えることにした、


日本のホテルのようなショップはないがトレーニングルームがあり、入ってみることにした。ジムには専属のトレーナーがいる。
「すみません、こちらのジムではウェアの貸し出しはされていませんか。実は荷物がロスバゲしてしまって、着るものがなく寒い思いをしています。スウェットでもお借りできるといいのですが」
「それは大変でしたね。残念ながら、こちらではウェアの貸し出しはしていないんですよ」とトレーナーが申し訳なさそうに言う。
「とにかくタクシーを呼んで近くのショッピングセンターに行くのが、一番ですよ」とアドバイスをくれたので、フロントに戻ってマイヤに相談することにした。

しばらくタクシー会社に電話をしていたマイヤが、困り顔で受話器を置いた。
「何社か電話しましたが、どこもタクシーが出払っています。フェスに来る人で周辺は何キロも大渋滞だそうです。戻ってこられないのは、そのせいでしょう。この分では夕方まで渋滞は続きますね」
仕方がない、今日は部屋で過ごし体調を整えよう。そもそも治療中の身なのだから。長いフライトの後、明日からのフェスに備え、ここはゆっくり過ごせという天の声だろう。

私は腹をくくった。

夕方までなんとか起きていてベッドに入ったせいか、翌朝は5時すぎに目を覚ました。
日本時間だと深夜2時過ぎに寝て、昼に起き出す格好だ。フライト中見下ろしたレスターシャーの火力発電所が朝焼けに染まっている。

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