メタチャット・運用マニュアル
メタバースチャット・2022年02月08日11時00分
深呼吸学部の塾生へ
●メタチャットは、複数の人間で一つの作品を作るための方法です。通常のチャットと違い、単なる時系列の流れではなく、前後に戻って発言を追加したり、自分の発言を修正したりしても大丈夫。
●相手の発言も、相手がいいそうな発言として書いても構わない。ただし当人は修正する権利があります。なので、相手との関係性が確かでないと、構成が難しい。信頼関係の上で、一つの作品を作るというものです。
●ひとつの発言が長過ぎると冗長になるので、発言は、ワンテーマごとに分けてください。相手の人が単なる相槌をいれるだけでもよい。
●まずは、深呼吸学部の講義の一貫として試してみて、マスターしたと思ってから、外部の人に声かけてください。
●メタ校正
メタチャットは、やりながら全員参加の校正も行いますので、明らかな誤字脱字は誰でも修正してください。
「怪しい、間違いかも」という場合は、本人に連絡してあげてください。
●表記統一
表記統一は、厳守してください。特に注意してほしいのは、以下。
「?」「!」のあとは一文字分、空白をあける。
「……」は二文字分を使い「・」(ナカグロ3つにはしない)
名前のあとは、全角1文字分あける。
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▼以下参考例
●目次
ご挨拶
メタバースとメタチャット
メタバースはどこから来たのか
子どもたちの時間と、大人の時間
メタバースはどこへ行く
★メタバース探偵事務所
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●ご挨拶
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橘川 では、これから、橘川幸夫の遺産相続として、橘川が開発したメタチャットというシステムを使い、平野に、これからのネット社会がどうなっていくと橘川が考えていることを具体的に伝授していこう。
平野 わかりました。普通に考えたら僕の方が長生きすると思うので、ありがたく頂戴します!
橘川 今回は、淵上周平に司会進行を頼むことにする。周平は古い弟子で、橘川といろいろ一緒に動いたことのある編集者だから、橘川の考えと動き方をよく分かっているので、うまくコントロールしてくれるだろう。
周平 コントロールできないこともよく分かってますが、最初の読者としていっしょに進行していきたいと思います。あと個人的には橘川さんのネット上のハンドルネームがずっと昔から、"metakit"なんですが、なんかしら理由があるだろうなーと思っていて、このダイアローグでそのワケがわかるような予感がしています。よろしくお願いします。
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●メタバースとメタチャット
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平野 で、一体、何やるんですか?
橘川 メタチャットと言ってな、70年代から橘川がテストしているメタバース時代の対話形式だ。
平野 70年代からメタバースやってるんですか!? さっき思いついたのかと思って念のためにググったら本当に10年前の記事でメタチャットって言ってるし、インターネットは出版空間だって言ってますね……どんだけの先見の明ですか。
橘川 70年代初期、平野が生まれた頃な(笑)。オレはロッキング・オンという雑誌を作って、金がないので日暮里の印刷屋に弟子入りして写真植字(写植)という技術を学んだんだ。まだパソコンもDTPもなかった時代な。それでロッキング・オンの原稿は全部、オレが写植で印字して版下を作った。その中で、渋谷陽一と松村雄策という男の対談記事の連載をやることになり、最初は対談してテープ起こししていたのだが、とんでもなく面倒なので、写植機の横で原稿用紙にそれぞれ自分の言いたいことを交互に書いて原稿にして、どんどん写植をうっていったんだ。ものすごい合理的だろう。
平野 すごいですね。筆談みたいな感じで原稿を生産したんですね。
橘川 そうそう。やがて、パソコンが登場して、80年代半ばからパソコン通信がはじまって、オレも1990年に「CB-Net」というBBSをはじめるんだが、そこで、今のインターネットで行われているシステムの原型みたいなものをいろいろと試していたんだ。
周平 BBSというのは、”Bulletin Board System”の略で、電子掲示板というやつですね。だれかがテキストを書き込んで、別の人がレスを書き込めるという、今でいうとグループチャットみたいなもんでしょうか。日本では1980年代の後半くらいから、ミーハーな好きモノたちがやりはじめてたらしい。宇宙的ミーハーを自称する橘川さんも当然そこでいろいろ実験していたと。メタ日記っていうTwitterの原型みたいなのもやってたらしいです……。ネット創世記なんで言い伝えですが(笑)。
平野 その頃から「メタ」を名乗っていたんですか。僕も新しいことが好きだったから、高校生のときに「草の根BBS」を夢中でやってたなあ。インターネットなんてまだない頃の話です。
橘川 パソコン通信の時代のハンドル名は「kent」だった。はじめたのは80年代半ば頃だったので、オレはサラリーマンやってて、表向きは新聞記者、実態はスーパーマンのクラーク・ケントからとったんだな。
周平 kent(笑)。それがなんでmetakitになったんですか?
橘川 まあ、待て、その辺に大事な問題があるんだ。metakitを使いだしたのは、草の根BBSをやめて、ニフティサーブでFMEDIAというフォーラムのシスオペになった時だな。名前の問題は、もうすこしあとにして、まずは「メタチャットとは何か?」からはじめよう。
平野 草の根BBS?それってまだインターネットがなかった90年代前半ですよね? 僕、その頃、群馬の高校生で「草の根BBS(KTBBS)」をやってた!
橘川 当時はオレの部屋にPC98を専用マシーンにして、3回線ぐらいの電話をつないで、BIGModelというソフトを使ってやっていた。
平野 親に隠れてモデムでピーガラガラピーってホストの人のパソコンに直接繋いで掲示板とかチャットとかしてたわぁ。電子メールもなかったから電話して「じゃあ今からホストに繋ごう」って連絡しあったりして、懐かしいな・・・。
橘川 草の根BBSを開始して、渋松対談をオンライン上でやったらどうなるか、ということで試していたのが「メタチャット」。筆談をオンラインメールを使ってやったわけだ。メタチャット使って、いろんな人と対話をして、原稿化した。90年の初期に、「すばる」(集英社)という文芸雑誌で、橘川と、大阪在住の村上知彦の二人で対談頁を1年連載したのだが、それは、パソコン通信時代のメタチャットで執筆したんだ。それはインターネット時代に突入しても、色々試していて、日経BPのオンラインマガジンで連載していた時も、いろんな人との対話記事は、メタチャット方式でやっていたな。
平野 で、結局メタチャットってなんですか?
橘川 平野はすぐに結論を求めすぎる。少しは、本質的なことを考えろ。
平野 いつもそこをダメだしされちゃうけど、ぶっちゃけ、ざっくり概要を知ってから深堀りしたほうが効率良くないですか?
橘川 メタチャットというのは誰もが出来るものではない。もちろん出来ることは出来るんだが、本質が分かっていないと、このシステムは使いこなせない。
平野 お。急に何かの防衛軍の作戦会議みたいになりましたね。緊張してきた。
橘川 まず、このシステムがロッキング・オンという市販の雑誌に掲載するために開発されたわけだ。市販のパブリックなメディアに必要な要素ってなんだと思う?
平野 資金と組織ですか?
橘川 まったく見方が表面的だなあ。雑誌に必要なのは、ライターとエディターだ。
周平 著者と編集者ですね?
橘川 著者は現実の本質を描く突破力、編集者は全体を見回す構成力が必要なわけだ。
平野 うわあ、思ったよりもちゃんとした話だ。まず突破して、構成する。それだけで一冊本が作れちゃいますよ。どうするんですか。
橘川 こうやって、対話型の文章を共同して書くには、著者の力と編集者の力の両方が必要になってくる。突破力と構成力の両方を持った人間でないと、使いこなせないんだ。自分の発言をしながら、相手の言いたいことも理解し、全体が着地するイメージを育てながら、進めていくわけだ。
平野 ・・・めちゃくちゃ良い学びになりますね。なんてことだ。メタチャットが何か相変わらず全然分からないけど、どうやら凄いシステムっぽいですね。
橘川 インターネットは、誰もが世界に向けて表現者になれるわけだが、まだまだ著者だけという人が多い。ネットで面白い文章があると、それは単なる表現能力だけではなく、編集能力のある人だということが分かると思う。
平野 ひとりで著者と編集者の両方の能力を持てということですか?それってかなり難しくないですか?
橘川 メタバースの世界は、単なる現実の焼き直しではなく、人類の理想の姿に一歩近づくものでなければならないと思うんだ。そのためには、現実社会で、さまざまな能力が分業されていた個人の能力を統一した人間たちの登場が必要なのだ。著者と編集者の両方の力を持った人間ということだ。それがmetakitの名前に込めた意志だ。
平野 まじで!?今、思いついて現代風にアレンジしたんじゃなくて!?
橘川 オレは50年前から同じことしか言ってないし、やってないんだよ。
平野 だって・・・それが本当だとするとですよ、橘川さんは何十年も前からメタバースのことをずっとメインで考えていたってことになるじゃないですか!
橘川 それはオレということではなく、時代の中心にあった問題意識はずっと同じだということ。メディアの問題な。オレは時代ミーハーだから、時代の中心にずっといただけだ。
周平 "統一した人間たち"って、やば(笑)。ニーチェか(笑)。ってことは、一人の人間が複数の人格をプレイするTwitterの複数アカとは逆で、複数の人が1人のアカウントを共同でプレイするってこともありなんですね。
平野 クラクラしてきた・・・。
橘川 まあ、この辺は「社会を内包した個人」という、橘川の根本的なテーマに関わる話だから、もうすこし時間かけて説明した方がよいな。
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