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幾つかの物語の比較考察,2025年1月23日


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注意

これらの重要な情報を明かします。

アニメ映画

『クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』
『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』
『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』
『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』

小説

『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(Web原作,書籍)

『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』


漫画

『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』
『クレヨンしんちゃん』
『新クレヨンしんちゃん』
『鋼の錬金術師』
『キミのお金はどこに消えるのか』
『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』

テレビアニメ

『クレヨンしんちゃん』

テレビドラマ

『日本沈没-希望のひと-』

『ギフト無限ガチャ』と『鋼の錬金術師』の「経済観」こそ苦しみのもとである可能性

 『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』(以下『ギフト無限ガチャ』)で、主人公のライトが、危険なダンジョンの魔力を吸収して強力な人のカードや武器や物資を出すのですが、「いくらでも貴金属を出せるけれども、地上経済を崩壊させるつもりはないから最低限しか使わない」と話しています。
 これは、『鋼の錬金術師』原作で、貴金属の金を石炭ガラから錬成出来る錬金術師がいるものの、国家錬金術師は経済を混乱させないように禁じられているのを連想します。
 しかし、現代日本は金本位制ではないので異なるのですが、昔の金本位制では、貴金属が足りないのでデフレになりやすかったという趣旨の記述をネットで見かけます。江戸時代の日本は通常のインフレを起こすために、金貨の純度を下げざるを得なかったようです。
 現代日本で通貨の量を一気に増やすとハイパーインフレが起きて通貨の信用がなくなるという警告をする人間もおり、それが「経済の混乱」ということなのでしょうが、少なくとも現代日本で「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」という財務省のサイトがあります。

https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140530s.htm

2025年1月23日閲覧

 現代日本で、日本円自体が政府の負債であり、政府の借金であり利子のある国債を増やさないと日本円も増えず、デフレから脱却出来ないのに、ハイパーインフレを恐れてしないという批判も、2023年までは成り立ったでしょう。
 言わば『鋼の錬金術師』と『ギフト無限ガチャ』開始時点の日本は「ハイパーインフレ」というあつものに懲りて、「デフレ」というなますを吹いていた可能性があります。
 そもそも『鋼の錬金術師』原作の「等価交換」、「痛みを伴わない教訓には意義がない」という主張も、そののちの『ギフト無限ガチャ』の「無双」、「チート」の要素も、言わば日本全体のデフレ不況から、社会に余裕のない不安を感じている人間が多いためではないかと考えていますが、皮肉にも、それは「お金を増やすのは危険だ」という経済観が現実の日本で裏目に出ているのかもしれません。

『とべとべ手巻き寿司』のひろしの「生きて行くしかないから誰かのためにがんばれ」の問題

 『クレヨンしんちゃん』劇場版『とべとべ手巻き寿司』で、30歳で独身の派遣社員の男性の非理谷充が、社会や個人的に知っていたアイドルへの不満などから超能力による犯罪をしたあと、その記憶の中に介入して苦しみを「解決」したようにして、充の社会的立場が何も改善されないまま、35歳で妻子がいて一戸建ての家や車やペット持ちのサラリーマンの野原ひろしが、「日本の未来は明るくないかもしれないが、それでも生きて行くしかないからがんばれ」と言い、「何をがんばれば良いのか」と返されて、「誰かの幸せのためにがんばれ。それで自分も幸せになれる」とまとめました。
 様々な批判の余地はありますが、まず「ひろしは今回車の損壊ぐらいしか物理的にも社会的にも被害がない」、「充は全くがんばっていなかったわけではない」、「『クレヨンしんちゃん』はがんばりが裏目に出たり、むしろ怠惰やふざけが貢献したりすることもあるのに、何故充には後者が起きないのか」とも言えます。

ひろしが充に近い立場になった場合

 ひろしは「日本の未来は明るくないかもしれない」と言いながら、今回車の損壊以外に、家族の重傷などの被害もなく、社会的立場も失っていません。
 仮にひろしが他の劇場版などによくあったように「ローンが残っている」家を壊され、さらに原作の引っ越しのときのような保険も下りなかった場合に、「それでも生きて行くしかない」と言われて耐えられるのか、という批判の余地があります。
 さらに、『クレヨンしんちゃん』のひろしの家の損壊はしんのすけに責任があることもあり、仮に「家族の不始末が原因だから」、「自業自得」、「自己責任」だと言われて保険が下りない可能性も原理的には考えられます。それこそひろしが充に「今まで何も出来なかったのは、やろうとしなかったからだろ」、つまり「自己責任」、「努力が足りない」と言ったことが、家族の管理も出来ていないひろし自身に降りかかるかもしれません。そうならないのは、結局はひろしが長寿ギャグアニメの主人公の家族なので社会的に破滅しない「主人公補正」で支えられているためでしょう。
 さらに、その家の被害が超能力などによる場合、あるいはガスや水道などの被害の場合、近隣の家にすら及ぶ危険があり、ひろしは隣人の北本はおろか、普段「自分達に迷惑をかける」側のミッチーやヨシりんにすら頭を下げる必要が生じます。「自分の困りごとばかり考えていないで、周りの人の迷惑を考えろ」という充への発言は、仮にしんのすけなどの不始末で家などの財産が周りの人間のものごと損壊した場合、ひろしにも降りかかる危険はあるのです。
 『日本沈没 希望のひと』では、世界の人間社会全体に責任のある温暖化と、日本政府がその対策に進めた地下物質くみあげにより日本だけが沈みそうになり、ぎりぎりで外国は巻き込まれずに済んだので、「どうして日本ばかりこんな目に」と言う声もありましたが、仮に外国が巻き込まれれば、日本は国土を失うどころか、周りの国に賠償すら求められる危険もありました。『クレヨンしんちゃん』はギャグアニメとはいえ、ひろしがそうならずに済むのは「主人公補正」でしかないでしょう。
 社会的に追い詰められた充に「社会が厳しくても生きて行くしかないから、誰かの幸せのためにがんばれ」と言ったひろしこそ、仮に自分やしんのすけの、ギャグ漫画によくある間違った行動が原因で家などの重要な財産を失い、なおかつそれが「自己責任」とみなされて誰も助けないどころか、周りにも被害が出て賠償などをしなければならない状況になってもそれが言えるのか、という疑問を考えました。

「我欲の消費活動」は充だけでなくひろしなどもしている

 また、ネットでの指摘もありますが、少なくとも充はアイドルの推し活のために食費すら削っており、それを「自分の欲望のため」と言うならば、まつざか梅なども利己的な消費活動で散財などをしていることになります。そもそもひろしやみさえも、ゴルフクラブやキャバクラやダイエット商品や衣服などの「自分のための消費活動」はしており、何故それすら充の場合は「ストーカーじみた欲望」で片付けられるのか、と言えます。充はあたかもアイドルと自分だけが強い繋がりを持っているように思い込んでいましたが、ひろしも少し女性に優しくされただけでそう思い込むような傾向はしばしばありました。

充は実質的に「マイナスをプラスに変える」奇跡を起こせなかった

 また、小説版で、充はティッシュ配りで掟破りの2枚重ねをしていたと地の文にありました。しかしそれだけで、「自分のことしか考えない怠け者」だから全ての困りごとが「自己責任」と言うのは酷でしょう。
 そもそも『クレヨンしんちゃん』では、確かに健気に「がんばっている」社会的弱者がしんのすけなどの影響で報われることもありましたが、むしろ「がんばりが裏目に出る」、「怠惰やふざけがかえって役に立つ」場合もありました。
 ひろしの取引先の接待で、しばしばひろしの「教科書通り」の努力が「脂っぽい肉が最近食べられなくなった」などの取引先の主観で空回りして、しんのすけの「掟破り」のタレを混ぜる、盆栽をでたらめに切るなどの「ふざけた」行動がかえって喜ばれることがありました。その上ひろしはその場で喜んでも、結局しんのすけを見習うような言動は少なく、同じような失敗を繰り返しており、その意味でも、「しんのすけの頭の悪さやふざけた行動がかえって上手く行く」ことを認識していない「ひろしの頭の悪さ」、「考える努力の不足」がみられます。
 他の劇場版でも、『もののけニンジャ珍風伝』や『花の天カス学園』では、しんのすけが周りの大人やAIからの指示に逆らい、走らずに機械に乗る、入ってはいけないと言われた場所に入るなどの「怠惰やふざけ」をして、それがマイナスを引き起こしつつ、やがてプラスに変わりました。充もしんのすけの「ふざけた絵」をかえってプラスに解釈したときがあり、充自身がそれを実体社会で起こさなかったのは不公平です。
 充のティッシュ配りの「掟破り」が、どうしてもティッシュの多数欲しい人間にかえって喜ばれるような「奇跡」を起こすことも不可能ではなかったはずです。あるいは、充が怠けるために2枚渡して「掟破り」だと知らない相手にかえって喜ばれ、罪悪感や「誰かの幸せのためにがんばる」意思に目覚めるならば、少しは充の「改心」もしやすかったでしょう。
 それはルール違反を奨励するような展開で悪い、という反論の余地もありますが、ならばしんのすけが普段劇場版でも原作でもしていることは何なのか、という話になります。ひろしも似たような「マイナスをプラスに変える」ことはあるはずです。
 しんのすけの、一見マイナスの「頭の悪い」、「怠惰やふざけ」がかえってプラスになり、周りの社会や強者の偏りや矛盾すら露呈させる「おバカパワー」と言うべきものが、充を実質的に救っていないのが悲しいところです。
 また、『クレヨンしんちゃん』では、社会的強者の一見プラスに思える行動がマイナスになり、それで爽快感や痛快さを生む要素もあります。裕福な酢乙女あいの家の高級なサービスが、みさえに窮屈に思われるなどです。
 『とべとべ手巻き寿司』でも、警察という社会的強者がギャグ漫画のような低確率の偶然で充を強盗犯と間違えたり持っていた串を武器とみなしたりしており、その勘違いについてひろしは何も言っていません。
 「社会的強者がプラスをマイナスにしてしまう」ことで恥をかかせるはずが、警察は本作で何も失敗を認めず、ただ充を苦しめるばかりになっています。
 警察の本作での間違いが、たとえば「警察官が容疑者や民間人に予想外に救われた」などの形に結び付けば、やはり爽快感や痛快さになったでしょう。

参考にした物語

アニメ映画

京極尚彦(監督),高田亮(脚本),2020,『クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』,東宝
髙橋渉(監督),うえのきみこ(脚本),2021,『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』,東宝
橋本昌和(監督),うえのきみこ(脚本),2022,『クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』,東宝
大根仁(監督・脚本),2023,『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』,東宝

小説

明鏡シスイ,『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,小説家になろう(掲載サイト)
https://ncode.syosetu.com/n9584gd/

2025年1月23日閲覧

明鏡シスイ,tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,ホビージャパン

臼井儀人(原作),大根仁(監督・脚本),2023,『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦〜とべとべ手巻き寿司〜』,双葉社


漫画

作画/大前貴史,原作/明鏡シスイ,キャラクター原案/tef,2021-(未完),『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』,講談社
臼井儀人,1992-2010,『クレヨンしんちゃん』,双葉社
臼井儀人&UYスタジオ,2012-(未完),『新クレヨンしんちゃん』,双葉社
荒川弘(作),2002-2010,『鋼の錬金術師』,スクウェア・エニックス
井上純一/著,飯田泰之/監修,2018,『キミのお金はどこに消えるのか』,KADOKAWA
井上純一/著,アル・シャード/企画協力,2019,『キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編』,KADOKAWA

テレビアニメ

臼井儀人(原作),ムトウユージ(監督),川辺美奈子ほか(脚本),1992-(未完),『クレヨンしんちゃん』,テレビ朝日

テレビドラマ

小松左京(原作),橋本裕志(脚本),東仲恵吾(プロデュース),平野俊一ほか(演出),2021,『日本沈没-希望のひと-』,TBS系列


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