![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/72957805/rectangle_large_type_2_16a33d63dcd4ea24defb4bf9933bf6e5.png?width=1200)
『相棒』、『ガメラ3』、『ドラゴンボール超』などを踏まえた、事実、推測、意見の3段階の区別
https://note.com/meta13c/n/n7575b6c0826b
この記事の注意点などを記しました。
ご指摘があれば、
@hg1543io5
のツイッターのアカウントでも、よろしくお願いします。
https://twitter.com/search?lang=ja&q=hg1543io5
注意
漫画
『ドラゴンボール』
『ドラゴンボール超』
『相棒 たった二人の特命係』
テレビアニメ
『ドラゴンボールZ』
『ドラゴンボール超』
特撮テレビドラマ
『ウルトラマンギンガ』
『ウルトラマンギンガS』
『ウルトラマンガイア』
特撮映画
『ガメラ 大怪獣空中決戦』
『ガメラ2 レギオン襲来』
『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』
テレビドラマ
『相棒』
これらの重要な展開を明かします。
はじめに
私は「はじめまして」の記事で、様々な物語からの事実、推測、意見を用いると書きました。
このように記したのは、多くの主張では、事実、推測、意見が混ざり合っていると考えたためです。
事実と意見の区別は学術でしばしば聞きますが、日常的には、事実、推測、意見の段階が必要だとみなしました。
それは論理の良し悪しを混乱させ、「正しいけれど間違っている」というような反論を生む可能性があります。
それを考察します。
分類
まず、私が分類する限り、事実というのは、それを愉快か不愉快に捉えるどちらの人間にも認められる対象です。
推測は、直接見える事実から見えない事実、過去や未来などの事実も含めて導き出す主張です。
そして意見とは、見える事実あるいは推測から、愉快か不愉快か、利益か不利益があるか、何をしたいかしたくないかなどの感情が絡み、新しい事実である行動を生み出す源にもなります。
具体例
たとえば、『ドラゴンボール』では、ブルマのタイムマシンで過去に行くことで並行世界が生じるのは、それを悪く言う人物もそうでない人物も認める事実です。
しかし、少なくとも「未来トランクス」の並行世界、本編世界、本編世界にやって来たセルのいた並行世界の3つが存在しますが、他にもあるかもしれません。これらの「並行世界の数」は推測です。
それらの並行世界が与えた影響が「良いか悪いか」の判断は意見です。推測によって変動します。
また、私は『ウルトラマンギンガS』を考察するときに、ダークルギエルによるスパークドールズの行方に関する意見があります。
スパークドールズのほとんどは自分の意思では暴れておらず、大気圏に突入して「星」になっても、小学校ごと攻撃されてもダメージを受ける様子がありません。これは事実です。また、ルギエルはスパークドールズを利用したものの、自分の意思で直接的にはほとんどの生命を殺しませんでした。それも事実です。
しかし、『ギンガS』でルギエル以上に自分の意思で大規模な破壊を行ったチブル星人エクセラーとガッツ星人ボルストは、それぞれスパークドールズから実体化していたのですが、爆発して生き残ったのかが明かされないまま物語が終わりました。それは推測です。
そして、明らかに死んだルギエルと異なり、きわめて大規模な攻撃を行ったエクセラーとボルストの顛末を曖昧にしたのは物語として良い描写だったかが、意見の領域になります。
これらの3つの分類から、論理の混乱を防ぐ方法を探ります。
『相棒』の「頭の悪さ」と「出来の悪さ」の違い
まず、『相棒』の衣笠と青木年男についてです。
青木年男は、警察嫌いを自認して警察を批判したり協力を断ったりするのを繰り返します。
しかし、本作では警察の不正や怠慢も多いため、的を射ているときもあります。
けれどもそれを、青木の父親と縁のあり、彼が特命係への恨みを晴らすために警察に入るのを手助けした衣笠副総監が、独特の表現をしています。
彼は青木を「出来の悪い息子」のように捉えており、「頭は悪くないが出来が悪い」と表現しています。
また、特命係について、「組織を崩壊させるのは、優秀であり、命令に従わない部下だ」と表現しています。
ここから考えますと、おそらく衣笠の表現したいのは「青木や特命係の論理は、事実や推測としては正しいが、意見として自分と一致しないので不愉快だ」ということなのでしょう。
「推理」を重視する『相棒』の世界で杉下右京や青木の提示した事実や推測を衣笠が無視すれば、衣笠は「頭が悪い」ことになってしまいます。しかし、そこから目指す行動や指示の方向性や利益があるかは、組織を率いる人間の感情や不快感でどうしても分かれます。「相手にとって不愉快な事実を示す」「頭の良さ」が青木や右京にはあるはずです。
「出来が悪い」とは、おそらく「自分にとって不愉快な事実に対して、不愉快だという意見を共有出来ない」という意味なのでしょう。
実際に、右京も青木の上司だったときに、「人の本気を笑うのは、悪趣味ですよ」と言っており、「あの人が本気であるという事実や推測は、君の提示した通り正しいけれども、それを楽しむのは君の快楽と周りの感情が一致しない」という意味だと考えられます。
『相棒』漫画版では、亀山が右京に関して、「この人は人を不愉快にさせる天才だ」と評価しており、「相手にとって不愉快な事実や推測を提示している」とみられます。
また、「出来の悪い子供ほど可愛い」という意見を共有する甲斐峯秋は、青木を「出来の悪いろくでなし」と表現する衣笠に「長年彼を見てきた君がそう言うのは正しいのだろう」と表現しています。
おそらく、「親が子供を悪く言うのは、自分の身内をわざわざ悪く言うのだから、正しい事実や推測を提示しているのだろうし、そう認めるのは道徳からも正しい意見なのだろう」という概念があるとみられます。
峯秋は、息子の享の犯罪以前にも、人にだまされて自分を「守る」つもりで犯罪をした若者を見て呆れたものの、現れた警察官に「子供だから手荒にするな」と指示したことがあり、「出来の悪い子供ほど可愛い」という彼なりの善悪観、つまり意見はあるようです。
「なるほど、正しい」
『ガメラ3 イリス覚醒』では、「なるほど、正しい」という嫌味があります。
本作では、人間を捕食して増殖するギャオスが登場して、古代文明がバイオテクノロジーで生み出したと推測されています。
ガメラはそれに対抗して生み出されたそうです。
しかし、巨大な1体の怪獣であるガメラは、どうしても多数のギャオスに挑むときに、手が届かないこともあれば、周りの人間を巻き込んでしまうこともあります。
さらに、地球の自然界のエネルギー「マナ」を用いるため、『2』では人間を守るために生態系を破壊してかえってギャオスの大量発生を招いた可能性があります。「ぎりぎりの判断だったのではないか」と言われています。
それらを、ガメラは独断で行わざるを得ないのです。
地球環境をコンピューターのシミュレーションで再現する技術を持ち、ギャオスによって人類が滅ぶべきだと主張する倉田が登場しますが、どことなく『ウルトラマンガイア』のウルトラマンアグル=藤宮を連想させます。
そしてガメラをあくまで信じようとする人間が「そんな傲慢な考えを打ち砕くためにガメラが作られた」と倉田に反論すると、彼は「なるほど、正しい」と笑いました。
これはおそらく、「あなたの推測が正しいならば、私の主張は少なくとも推測としては正しいことになる」、「あなたの主張は推測としては正しいが、意見として正しいとは限らない」ということです。
「そんな傲慢な考え」というのは、「人類の一部が人類を滅ぼすというのは傲慢だ」という意見でしょうが、それにより「人類の破滅を望む科学者の存在」という推測は強くなります。少なくとも倉田の推測は強化されるのです。
また、このガメラの支持者は、ガメラに巻き込まれて両親を失った少女の側でその発言をしており、ガメラの独断で失われる命もあるという事実から考えれば、支持者も「命の選別を怪獣に委ねる」意味で傲慢だと言えます。
「バイオパトカー」の「正しさ」とは
論点を整理しますと、ある意味で、ガメラは「バイオテクノロジーのパトカー」だと言えます。
パトカーなどの緊急車両には、制限速度なしに走れるときがあります。その1つは、当然ながら「速度違反をした車を追いかけて取り締まるため」です。
もちろん、そのためには相応の特別な技術や訓練や資格が必要でしょうが。
ギャオスという殺人のためのバイオテクノロジーに追いつくためには、この作品世界では同じバイオテクノロジーを使うしか出来ない科学的な性質があるのです。
似たような論理は、拳銃やハッキングなどにもあるかもしれませんが。
しかし、パトカーの論理を「怪獣を生み出すバイオテクノロジー」、それもはるか昔の制御のほとんど出来ないテクノロジーに適用して、さらに人間でないガメラを「信じる」で済ませて良いのか、というのは、「意見」としてかなり判断が分かれます。
「ガメラはバイオテクノロジーのパトカーだ」というような論理は、事実、推測、意見の段階での正しさが複雑に分岐します。
事実と意見のどちらかに寄った推測
『ドラゴンボール超』テレビアニメ版では、悪役とも言えないジレンと、主人公に協力する悪役のフリーザの会話に「事実、推測、意見」の段階があります。
『ドラゴンボール超』では、主人公である孫悟空の所属する第7宇宙が、破壊神の怠慢などにより人間のレベルの低いとして、他の宇宙と戦って勝たなければ消滅することになりました。
しかし、第11宇宙のジレンは、悪人に立ち向かい厳格に戦うものの、仲間や信頼関係を軽視する発言がありました。
かつての宿敵であるフリーザが、悟空達と手を組んで戦うことになりました。
悟空が新しい能力に目覚めてジレンを追い詰めたものの、体力の限界で動けず、フリーザが手柄を奪う意味もあってか戦いに加わりました。
悟空の強さに動揺して、表情や動きが乱れ始めたジレンにフリーザは「おや、お得意のポーカーフェイスはどうしましたか?」と語りかけ「黙れ!」と返されています。
さらにフリーザは「一度砕けた強さとは実に脆いものですね。あなたの心の悲鳴が聞こえて来るようですよ。弱い自分には戻りたくないと」と続け、奮起したジレンに殴られ、ジレンは「俺の強さが砕けたと言ったな!本当に砕けたかどうか、その身をもって、思い知れ!」と叫びました。
まず、「お得意のポーカーフェイスはどうしましたか?」は、フリーザの目線では、「あなたの表情はあまり動かない」という事実に、「あなたは表情を保つのが上手いのだろう。そしてそれを得意気に、楽しんでいるのだろう」という推測が加わり、「あなたの表情を保つ上手さとそれを求める精神が私には不愉快だ」という意見もおそらくあります。
事実と推測から分岐する意見があるのです。
さらに、「一度砕けた強さは実に脆い」は、「強さ」という外面的な事実に、「次に立ち上がって攻撃出来るか」などの推測も加わり、それが「砕けた」というのは、「動きが鈍くなっている」、「もうさっきまでの動きは出来ないだろう」という事実寄りの推測だと言えます。それはフリーザの強さによって見抜ける推測とも言えます。
そして、「心の悲鳴が聞こえるようだ」というのは、「あなたは弱くなった自分を不愉快に捉えているのだろう」、「その悲しげな心の叫びが私には愉快だ」という、意見寄りの推測です。フリーザの気性があるからこそ、そのような嫌味を言えるのです。
ジレンは表情を保つなど、いわゆる「ストイック」な姿勢があり、あまり自分の感情に言及されたくない感情があるようですから、「心が悲鳴をあげているか」という意見寄りの推測よりは、「強さが砕けたか」という事実寄りの推測の方が反論しやすかったのでしょう。
「推測」と「意見」からの不愉快な感情
また、この少し前に、体力を消耗して武舞台から落ちて失格になりかけた悟空を、フリーザがエネルギー弾の衝突で戻したのを、ジレンは「戦えない者を武舞台に上げるのが、お前達お得意の信頼だとでも言うのか」と言っています。
ジレンの仲間への不信感は、「戦えないなら、さっさと逃げろ」という気遣いも混じっている意見だとも取れます。
「戦えない」悟空を、フリーザがエネルギーを消耗してまで戻したのは、単なる戦略からの無駄とも、悟空に戦わせる重荷を負わせる残忍な行為とも言えます。ジレンにはその事実が不愉快であり、さらにそのような関係を(フリーザは否定しましたが)「信頼」であるかのように主張する悟空達の主張にも不愉快な感情があったとみられます。
さらに、その「戦えない」はずだった悟空が再び立ち上がった、つまり自分の推測を超えたことにも、ジレンは何らかの動かされる感情があったようです。
まとめ
『相棒』の青木年男や右京、『ガメラ3』における「傲慢さ」、『ドラゴンボール超』のフリーザとジレンなどから、事実、推測、意見の3段階を重視した考察をしました。
参考にした物語
漫画
鳥山明,1985-1995(発行期間),『ドラゴンボール』,集英社(出版社)
鳥山明(原作),とよたろう(作画),2016-(発行期間,未完),『ドラゴンボール超』,集英社(出版社)
こやす珠世/テレビ朝日・東映,2008-2012,『相棒 たった二人の特命係』,小学館
テレビアニメ
大野勉ほか(作画監督),冨岡淳広ほか(脚本),畑野森生ほか(シリーズディレクター),鳥山明(原作),2015-2018,『ドラゴンボール超』,フジテレビ系列(放映局)
清水賢治(フジテレビプロデューサー),松井亜弥ほか(脚本),西尾大介(シリーズディレクター),小山高生(シリーズ構成),鳥山明(原作),1989-1996,『ドラゴンボールZ』,フジテレビ系列(放映局)
特撮テレビドラマ
アベユーイチほか(監督),長谷川圭一ほか(脚本),2013年7月10日-12月18日(放映期間),『ウルトラマンギンガ』,テレビ東京系列(放映局)
坂本浩一ほか(監督),小林雄次ほか(脚本) ,2014年7月15日-12月23日(放映期間),『ウルトラマンギンガS』,テレビ東京系列(放映局)
根本実樹ほか(監督),武上純希ほか(脚本),1998年9月5日-1999年8月28日(放映期間),『ウルトラマンガイア』,TBS系列(放映局)
特撮映画
金子修介(監督),伊藤和典(脚本),1995,『ガメラ 大怪獣空中決戦』,東宝(配給)
金子修介(監督),伊藤和典ほか(脚本),1996,『ガメラ2 レギオン襲来』,東宝(配給)
金子修介(監督),伊藤和典ほか(脚本),1999,『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』,東宝(配給)
テレビドラマ
橋本一ほか(監督),真野勝成ほか(脚本),2000年6月3日-(放映期間,未完),『相棒』,テレビ朝日系列(放送)
参考文献
木下是雄,1981,『理科系の作文技術』,中公新書
交通法令研究会緊急自動車プロジェクトチーム,2014,『緊急自動車の法令と実務』,東京法令出版
切通理作,2002,『特撮黙示録』,太田出版